雰囲気サッカー

道端之小石

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 まえがき

 本作品に登場するあらゆる人物、土地、企業その他諸々は架空のものです。
 作者のサッカー知識不足に関しては目を瞑ってください。
 私は、雰囲気でこの話を書いている。


────────────────────────────

『日韓交流戦、現在2-2の同点。90分を超えアディショナルタイム。日本、ボールをうまく回していきます。っとサイドバック森永から山田にスルーパス。
マークが付いていますが山田躱わす!
 行くのか?!1人!2人!後ろからのスライディングも躱わす!追いつけない!右へ切り込んで!日向だ!日向がシュー!!ゴォール!キーパー反応できません!
 山田のパスをエースストライカー日向が叩き込みました!
 貴重な貴重な勝ち越し点です。アシストは小さなファンタジスタ山田翔太。U15より続く幼馴染ホットラインがまたしても繋がりました。ここで試合終了!』



第1話 内なる声に導かれ


 目が覚めたとき俺は赤ん坊だった。好きなものはハンバーグ。名前は知らない。職業も分からん。なんか知らんが俺は赤ん坊らしい。腹の中がタプタプで気持ち悪い。あとチーズケーキとぶどうジュース好きだ。

 しばらく何かを思い出そうとしたが好きな食い物ばかりが思い浮かぶ。
 そしてさっきから頭の中によく分からん文字列や数列が叩き込まれている。

『筋力F』だとか『体幹F』だとか『判断力F』だとか……なんだこれ。見える項目の全てにFが付いている。俺のスカスカの記憶の中に朧げに浮かんできた『Fラン大学』と言う単語。どうやら出来が悪いという意味らしい。

 つまり俺はFラン赤ちゃんなわけだ。なるほど理解した。

 俺が理解したついでに漏らしたタイミングでガチャと音がした。そして同時に『トレーニングアラカルト』なる文字列が前頭葉に叩き込まれる。

『ミッション:大声で泣こう!
報酬:尊厳、複数のステータスのトレーニング効果獲得』

『ミッション:ハイハイをしよう!
報酬:複数のステータスのトレーニング効果獲得』

 驚いた拍子に大きい方まで出た。……ねっちょりとした嫌な感覚がお尻を伝う。誰か!助けてくれぇええ!誰かぁああ!

「うぇええええええん!」
「あら、しょうちゃんどうちたの~?」

 ママ!おむつチェンジお願いします!
 なお、こいつは察しが悪いぞと本能が訴えかけている。そうなのか本能さん?!俺はミスったのか?

「はい、ミルクでちゅよ」

 俺は猛抗議をした。多分俺はミルクを飲んだ直後である。これ以上飲んだら口からミルクを吹き出すことになるがよろしいか?

「嫌がらないで飲んでねー」

や、やめろぉー。あばばばば

「ゲロゲロゲロぉ」
「しょうちゃーん!」
「ただいまーってしょうたぁ!?」


 とそんなこんなで小学1年生になった。

 察しが悪いが優しいママと俺に甘いパパ。そして俺のトレーニングコーチ兼遊び相手のトレ夫さん(俺命名)に囲まれ、俺こと山田翔太は順風満帆な幼稚園生活を満喫した!

 満喫しつつも俺は来るべき小学生デビューの為にトレ夫さんと日夜修行をしていた。その成果を見せつけるのが楽しみで仕方ない。おじいちゃんに買ってもらった茶色のランドセルは俺のお気に入りだ。

 時計を見るとそろそろ9時を過ぎそうだ。トレ夫さんが9時から10時に寝ると筋肉が喜ぶと教えてくれたのでそのようにしている。

 横になると聞こえてくるよ。俺の大腿四頭筋の喜ぶ声が……


 俺の朝は早い、が今日に限ってはどうにも目が覚めても布団から出る気にならない。土日なら朝6時に起きてもジムに遊びに行くから良いけど今日は小学校デビューなので!

 しかし、1階から漂ってくるデミグラスの香り……階段をランドセルと一緒に慌てて下る。ハンバーグに違いない!

「おはよ!」
「今日は小学校デビューだからね!ママ張り切っちゃった」

 肉肉しいハンバーグ。さわやかではないが全く問題ない。

「いただきます!」

 そして白米とハンバーグ、加えて野菜ジュースを飲み干した俺は着替えやら歯磨きやらをしてから家を出発した。

 そして徒歩10歩程度の距離にある家のチャイムを鳴らす。

「ガッくん!いますか?」

 俺のベストフレンド、唯一の親友にしてライバルなガッくんの家。お隣さんです。ガッくんママが『ちょっと待ってねー』と言ったので俺はちょっと待ってることに。

 ガッくんの家の中から『岳!翔くん来てるよ!起きなさい!』って声が聞こえる。ちょっと俺が早すぎたかもしれない。

 その後何事もなくガッくんと学校へ行く。

「昨日の仮面ライダーニンジャ見た?」
「見たよー!俺、ニンジャキックの修行とか気配察知の修行をパパとやったからあれの真似できるよ!」
「翔くんもやっぱやった?」
「ガッくんもやっぱやるよね!」

 小学校楽しみだぜ!

「でもさ」
「パパ蹴るとママ怒るよね」
「うん」
「やめよっか」
「俺もそうしようと思ってた」

 桜並木をトコトコと歩いて行く。
 いやぁ、本当にガッくんと同じ教室で良かった。

「おはよー!」
「おはよ!」


 教室に入るなり大きな声で挨拶してくる彼ら。ガッくんも元気に挨拶を返しています。きっと良い奴らなんだろう。

「……お、おはようございます」

 それに比べて俺は……いや、やっぱ無理。怖いよー!知らない人と話すの怖いって!1ヶ月くらいかけてゆっくり馴染ませてほしいなぁ。

 黒板に貼ってあった座席表をみると、ガッくんと俺の席はちょっと離れている。席替えしてくれないかなぁ。

 先生が入ってきてチャイムが鳴る。

「皆さん、おはようございます!」
「「おはようございます!!」」
「元気がいいねぇ。私は1年2組を担当する半田 洋子です。洋子先生って呼んでねー」

 それから教科書が配られて、クラスメイトのことを知るためのレクリエーションが始まった。まずは自己紹介をして下さいって、そんな難しいこと言わないでほしいな。

「じゃあ自分の名前と誕生日、好きな食べ物と将来の夢を教えて下さい。じゃあ出席番号1番、相川 圭くん」
「えっと、僕は相川 圭です。誕生日は8月の10日で、好きな食べ物はお寿司!将来の夢は……その、パティシエです」
「はい、拍手ー!じゃあ次は・・・」

 圭くん、めっちゃしっかりしてるじゃん。聞き耳を立てているとどうやら実家がお菓子屋さんなんだとか……お父さんに憧れてって凄いなぁ。

 俺の夢ってなんだろ。うーん、別に今決めなくてもいいかなぁ。

 なんて思っていた矢先のこと。

「俺は日向岳!誕生日は9月9日。将来はプロサッカー選手になります!ヨーロッパに行って世界一のフォーワードになります!来週からFC千葉ジュニアで練習を始めます!」

 え、ガッくんサッカーやるの? じゃあ俺もやる。

「じゃあ次、山田翔太くん」
「はーい。えー、俺は山田翔太です。誕生日は9月10日で将来の夢は……ガッくんと一緒にサッカーしたいです。とりあえず今日帰ったらお父さんにFCジュニアに入りたいってお願いします。以上です」

 そう宣言した途端にトレ夫さんが反応し始めた。

『サッカー選手になる意思を確認』
『スキルトレーニングアラカルトを解放します』

 その文字の後にブワっと情報が溢れてきた。オンザボールとオフザボールと書かれたメニューから上に向かって樹形図が伸びている。なんか凄そうだけど、オンザボールとかオフザボールってなに? 樹形図をズームできそうだったのでしてみると説明が書いてあった。

『オンザボール:ボールを持ってる時のこと。試合のうち割合少』
『オフザボール:ボールを持ってない時のこと。試合のうち割合大』

『複合ミッション:周りを観察する癖をつけよう!
 タスク:フィールド上で首を振って周りを確認する(0/10000)
 タスク:空間認識トレーニングを完了する(済)
 チャレンジタスク:気配察知トレーニングを完了する(済)
 チャレンジタスク:空間認識トレーニング2を完了する(済)
 チャレンジタスク:サッカー行動予測トレーニングを完了する(未)

報酬:空の視点(フィールド限定)』

 何書いてあるけどよくわかんねーけどトレ夫先生に従っておこう。これあれでしょ、筋トレのタスクと同じでしょ。

 俺、ガッくんと一緒にサッカーしたいしやるよ。やりたいこととか夢とかよくわかんなかったけど……今はガッくんと筋トレするより、ガッくんとサッカーで遊んでみたい。ガッくんが好きなサッカーを知ってみたい。


第1話 内なる声に導かれ 完
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