良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました

ぽいづん

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第16話 沈黙

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 ――翌朝。

 瞬間移動でギルドに向かう。

 背後から聞き慣れた声が聞こえた。
「よう。ウェブじゃないか?」
「ガルフ……」
 振り返ると俺をいらないと言って追放したガルフの姿がある。

「お前、ソロでやってんのか? 」
「……ああ」

 ガルフはニヤニヤとしながら話しを続ける。

「お前がソロねぇ……まあ精々がんばれや。あ、そうそう俺達は王都のギルドに所属することになったからお前とはお別れって訳だ」

 王都のギルドに所属する……確かに冒険者にとっては名誉なこと……

 どうせ、ワットの力、貴族のコネを使ったんだろうけど……それが狙いでワットを入れたんだしな、俺と入れ替えにして……

「……ふーん」

「興味ないふりして強がりやがって……まあいい。俺達とお前はもう住むところが違うんだからなそれじゃあな」

 ガルフは笑いながらそう言うとパーティのところに戻る。こっちを見て指差しながら坊ちゃん刈りのワットとガルフ、パーティメンバー達がニヤニヤと笑っていた。

 俺は小声で呟く。
「ありがとう。お前らが俺を追放してくれたおかげでめっちゃ強くなっちまったからな……」

 そのすぐ後、支配人が俺に話しかけてくる。
「ディアゴから聞きました。無事任務をこなしたと……」

「はい。楽勝でした」

「ディアゴが再び話をしたいとのことですが」
 というと支配人の後ろからディアゴさんが出てきた。

 ――2日後

 俺は着慣れない燕尾服を着て緊張している。

 この燕尾服も、ディアゴさんが貸してくれてたもので、なんたってアリステル家と当主に会うんだからな。正装でと言って貸してくれた。

 ディアゴさんの話しでは、どうしてもアリステル家の当主様が俺に会って愛娘を救っていただいたお礼を言いたいとのことで……

 断るわけにもいかず……そしてもう一つ俺に考えもあった……ということでアリステル家の当主さまと合うことを決めた。

 カツカツと馬が歩く音がし、家の前で止まる。

 コンコンとノックをする音が聞こえディアゴさんの声がする。

「ウェブ様。お出迎えにあがりました」
「はい」
 返事をして扉を開けると黒塗りの客車の馬車が止まっている。

 ディアゴさんが扉を開くと人の気配があり、中から声が聞こえる。
「ウェブ様……どうしても早く逢いたくて……私もお迎えにあがりました」

 アリシアさんの声だった。馬車の客車の中にいるアリシアさんは薄い青い色のドレスを纏っており、それがよく似合っていた。

「アリシアさん、ドレスよく似合ってますよ」
「……ありがとうございます……」

 こうして馬車に乗り込む。

「今日はいい天気てすね」
「……はい…….」

「明日は晴れるでしょうかね?」
「……はい……」

 ……間がもたない!! 女の子と2人きりで話すなんて初めてだし、それに名門貴族のお嬢様とかいったい何話していいかわかんねぇぇよ!!

 そして沈黙が流れ気まずい展開に……

 ど、どうする?昨日何食った?とか聞いちゃう?

 だ、ダメだ……俺は何食ったって聞かれて近所の雑草食ったとか答えるのか?……ありえないだろう……

 ゴブリンとゴブリン亜種の見分け方とか? いやいや相手は名門貴族のお嬢様だぞそんなのどうでもいいだろ……

 高速機転(中)なのに何も……何も……事態を打開する何かが浮かばない……

 その沈黙を破り、アリシアさんが口開いた。
「あ、あの……」

「はい!」
 話し掛けられたのが余りにも嬉しく声が上ずってしまった。

「あの……ですね……ウェブ様は私のことをどう思ってらっしゃるのでしょうか?」

「ブーっ!?」
 余りにもストレートに聞かれたものだから吹き出してしまった……

「えっと……その……あれです……名門貴族のお嬢様でとてもお美しい方と」

「そ、そんなお美しいだなんて……」
 そう言うとアリシアは固まって何にも言わなくなる。

 ひたすら沈黙が流れたまま馬車は止まって扉が開く。

「どうぞ」
 ディアゴさんが扉を開くと俺は飛び出て深呼吸をする。

「はぁはぁはぁ……」
「どうなさいました?」

「い、いえ……ちょっと……」

 アリシアも馬車から降りてくるとディアゴさんに案内されて屋敷の中に入っていく。屋敷の雰囲気がアリシアを助ける前と後ではガラッと変わっているように感じる。屋敷全体が明るく華やかな感じがするし、調度品なんかも輝いているように見える。

 そのまま大きな扉の前に通される。ディアゴさんが扉を開くと30人ぐらいは座れる長いテーブルがどーんと置かれ、その一番、奥の端に白髪の紳士が座っている。

 どうやらあれがアリシアのお父様でアリステル家の当主、グエン・アリステル。数ある貴族といえどアリステル家は王家に近い血統で、貴族の中の貴族ともいわれている。そんな人物がただの平民であるこの俺と会食をするなんてあり得ないようなことだ。

 そしてその彼が俺の姿を見つけると立ち上がって頭を下げた。俺もそれを見てひょこっと頭を下げる。

 ディアゴさんの案内で席に着く。グエン様の右隣で一番近くの席にはアリシアに似た綺麗な女性が座っている。多分アリシアの母親だろう。その隣にアリシア。俺はアリシアを正面にみるような形で、グエン様の左隣の席を一つ空けたところに座る。

「此度は我がアリステル家の至宝であるアリシアを救っていただき誠に感謝いたす……並びに我がアリステル家の過去の不祥事の後始末をさせるようようなことになってしまい誠にに申し訳ない……」

 グエン様はそう言って深々と俺に頭を下げた。
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