21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

ぽいづん

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第2章 騎士学校

第18話 アルファルドとムルジム

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 ベッドにシャウラは寝かされ顔などを包帯でグルグル巻きにされている。鎮痛剤を使用しているためスヤスヤと気持ちよさそうに眠っている。ケガは見た目ほど重くないらしく2週間すれば綺麗に治るとのことであった。
 校長が俺に話しかけてくる。
「いったい何があったんだ?」
「エルグストンが俺に嫌がらせをしてきたんだ」
「なるほどそれでそれが上手くいかなかったと」
「そうだ、俺があいつの嫌がらせをなんなくこなしたもんだから、最後に奴は実践訓練といって」

 校長は腕を組み渋い顔をしている。
「しかしなんでシャウラ君がこれほど大けがを?」
「あいつは弱っちぃくせに俺を守ろうとしてくれたんだ」
「まだ知り合って1日だろ?」
「ああ、でも俺とシャウラは友達なんだ。友はお互いを守るために戦う。」
「なるほどな、お互いのために戦う。懐かしいな師匠の受け売りか?」
「俺の周りには俺と同い年の人間が居なかったから」
 校長は遠い目をし
「そうか、懐かしいな…」
 と呟いた。

 ◇◆◇

 まだあどけなさの残る騎士学校の青い制服を着た少年2人が騎士学校の緑の芝生が鮮やかな中庭にいる。一人は剣の素振りをし、もう一人は寝そべって素振りをしている少年を見ている。
 寝そべっている少年は黒髪で短く切りそろえ細身の体をしている。一方の剣の素振りをしている少年は体付きはガッシリとし筋肉質で坊主頭にうっすらと茶色の毛がみえる。

 寝っ転がっている少年が素振りをしている少年に話しかける。
「よくやるねぇ」
「俺は強くなって皆を守る騎士になるんだ」
 寝そべっている少年は欠伸をしながら答える。
「そうか、がんばって王都の平和をまもってくれい」
 少年は素振りを続け、寝そべっている少年は目を閉じる。
「アルファルド、お前には夢はないのか?」
「ん?夢かぁそんなもんねぇなぁ」
「ちゃんと練習したら剣聖だって目指せるのに勿体ない」
「だめだめ、俺みたいなのが剣聖になっちゃだめよ、真面目な優等生なムルジムお前がみたいなのが目指すべきだな」
 そう言ってアルファルドは欠伸をしそのままスース―と寝息を立て始める。ムルジムはそのまま素振りを続けていた。
 この時のアルファルドとムルジムこの二人は幼馴染にして親友であった。ムルジムは真面目な優等生、一方のアルファルドは不真面目な劣等生。この対称的な二人は何故かお互い惹かれあっていた。

 ――3か月後

 廊下でムルジムが教師を捕まえて懇願している。
「どうしてですか!!先生!!私の話を聞いてください」
 ムルジムは騎士学校の教師に必死に食い下がるが教師は聞く耳を持たない。
「ダメなものはダメだ。アルファルドは退学だ」
「なんでですか!向こうから喧嘩を売ってきたということじゃないです」
 教師は無視をしそのまま去っていく。
「くそっ!!」
 アルファルドは、有力貴族の一つであるウェルシア家の人間を学校でボコボコにした。ウェルシア家の当主がカンカンに怒りアルファルドの退学を求めてきた。

 要するに子供喧嘩に親がでてくるようなクソな連中ということだ。

 中庭でいつものように寝そべっているアルファルドを見かけたムルジムは傍に行き一緒に寝そべる。
「こうやって見たら空って高いんだな」
「そうだろ、こうやってみないとわからない風景もあるんだ」
「どうして手を出したんだ…相手をみればこんなことになるって分かるだろ?」
「どうしても腹が立ってな」
「お前が腹を立てるとは珍しいな」
「そうか?」
「いったい何をしたんだあいつらは」
「お前を陥れようとしていた」
「え?」
「あいつらお前の出生の秘密とかいって周囲に言いふらしてた」

 ムルジムの家は下級貴族であり、どうしても男の子供が生まれなかった、そして仕方なく養子をもらったのがムルジムであった。この時の騎士団は貴族としての体面を重視する傾向にあり貴族の血脈ではないということになると騎士になるのは難しくなる可能性があった。ムルジムはこのことを隠していたのだが、学校でも優秀な成績の下級貴族ムルジムをよく思っていない連中は多かった。その連中が探りを入れ出生の秘密にたどり着いたということだ。このことが知れるとムルジムの夢は潰えると思っての行動であったのだ。

 ムルジムは立ち上がりアルファルドの胸倉を掴み寝ているアルファルド掴みあげる。
「たかがそれだけのために、自分の人生を犠牲にするのかお前は馬鹿か!!」
「親友の夢を守るために戦ったんだ」
「俺の夢なんてどうでもいいだろ!自分を犠牲にしてまで守るものじゃない」
「お前は騎士になりたいんだろその夢を守るのが親友の役目さ」
 ムルジムはアルファルドの胸倉を掴んだまま泣き崩れた。

 ムルジムは涙を拭き、アルファルドに話しかける。
「いつまで…いつまで学校にいるんだ?」
「5日後までかな」
「わかった」
 ムルジムは親友を救うために自らできることを考えた。それは彼の才能を知ってもらうこと。アルファルドの才能を学校が知れば彼を退学には出来ないと。

 ――3日後

 アルファルドはムルジムに呼び出され、中庭に来ていた。ムルジムは最後にアルファルドと戦いたいと言いアルファルドも快く了解していた。

 約束の時間から少し遅れてムルジムが到着する。
「ごめん、ごめんちょっと手間取って」
「いいよ俺は時間なんていっぱいあるから」
「さあ、始めよう」

 2人は中庭で対峙する。
 ムルジムが最初に打ち込む、それをスレスレのところで避けるアルファルド。何度も打ち込むがすべて当たりそうで当たらないとこでかわす。
「はぁはぁやっぱりお前は化け物だな」
「避けるのに集中しているからだ」

 ムルジムは中庭から廊下の方を確認し一人の白髪頭の老人がこちらを見ているのにきがついた。そして口を開く。
「ならこれはどうだ」
 ムルジムは木剣を腰に構え居合のような形になる。

 そして一気に斬り抜けた。

 カーンという木剣と木剣がぶつかり合う音が青い空の下に響く。
「痛てて」
 アルファルドは剣を持つ手を振っている。
「あの一撃は凄かった。かわす間もなかった。毎日剣を振ってるだけのことはある」
「そうだろ俺も強くなっているんだ」
 そうして二人は気の済むまで戦った。

 中庭の青々とした芝生の真ん中で2人横に倒れムルジムが声を掛ける。
「俺の全敗とはな」
「何度も負けそうになったお前も強くなったな」
「さてと」
 そういってアルファルドは立ち上がる。
「お前と本気で戦えてよかった。必ず立派な騎士になってくれよ」
「ああ、任せとけ」
 そういってアルファルドが中庭を去ろうとすると一人の教師が血相を変えて飛んできて
「アルファルド!!おまえに剣聖様が話があるってお前何をしたんだ!!」
「え?おれはここでムルジムとずっと戦っていただけですけど」

 ムルジムはそれを見て大体のことは分かった。

 あの廊下で俺達を見ていたのは18代剣聖。彼は後進の指導に熱心で1週間に1度は学校に来る。今日はその日だったアルファルドは練習嫌いだからいつもサボっているだから剣聖はアルファルドの事を知らない。剣聖ともあろうお方がアルファルドが戦っている姿をみてその才能に気付かないはずがない。

 ムルジムがアルファルドを呼び出したのはこのため剣聖にアルファルド才能を知ってもらうため。

 アルファルドはそのまま教師と一緒に行き、アルファルドは浮かない顔で30分ほどで帰ってきた。
 ムルジムは一瞬焦った。上手くいかなかったかと
「どうしたアルファルド剣聖様にでも叱られたか?」
「いや…弟子になれって言われた」
「え!!!凄いじゃないか!!!」
「でも俺、練習嫌いだしな…」
「馬鹿かお前!!俺は王専任騎士を目指す。お前は剣聖を目指すんだ。十王国最強の剣士になるんだよ」

 アルファルドはどうも乗り気ではなく腕を組み考え込んでいる。
「うーん…」
「そうか、お前がこのままあいつらの言いなりになって学校を辞めるなら俺も学校を辞める」

 ムルジムの言葉に驚きと怒り表情を露にする。
「そんな!俺がやったことを無駄にするのか!」
「お前を犠牲に騎士になったところで俺はそれを一生後悔したまま生きることになる。友はお互いために最善を尽くす。俺も最善を尽くした。お前も俺のために最善を尽くした。ただそういうことだ」

 アルファルドはハッとした顔をして
「さっき戦ったのはもしかして」
「そうだ、お前の才能を剣聖様に知ってもらうために戦った」

アルファルドは目を閉じ何かを考え、少しの沈黙が流れる。そして意を決したように目を開き口を開く。
「そうか…分かったよ俺は十王国最強の剣士を目指す。お前も王専任騎士を目指せ」

ムルジムは黙って右手を差し出す。

 真っ赤に染まった空の下、少年2人は硬い握手を結んだ。


 ◇◆◇

「君とシャウラ君をみてたら思い出した。長話すまなかった」
「ふーん」
「興味ないんかい!!」
「いや、あるよ。アルファルドって昔から練習嫌いだったんだなぁって」
「剣聖様に弟子入りしてからはそれは真面目に練習してたけどな」
「へぇぇ」

 シャウラはスース―と寝息を立てている。

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