21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

ぽいづん

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第2章 騎士学校

第22話 ライバルとは?

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 ――勝負から翌日

 俺はいつものように寮の前で待つシャウラ……ってあれ?二人いる。
 寮の門のところにいつもであればシャウラ一人立っているのだが、今日は2人になっている。その二人目をよくみてみると短く赤い髪が特徴的な奴…そうマーフ・アリステルだ…

 なんであいつがここにいるんだ…頭の中を疑問符が駆け巡りながら門に向かう。
 マーフはイライラとしたような表情で開口一番
「あんた、私を待たせるとはいい度胸ね」
 シャウラは苦笑いを浮かべている。

「なんでここにいるんだよ!」
「これから私もあなた達と一緒に登校するから」
「え?」
「え?じゃないわよ。これはあんたに勝つための第一歩よ」
「勝つために一緒に登校するって、意味がわからないんですけど?」
「敵に勝つためには敵を知らなければならない。そうでしょ?」
 マーフはそう言ってシャウラの方を見る。シャウラは困ったような表情浮かべ
「た、確かに戦術においてはそうだけど…」

 シャウラがそういうと、そうでしょというような表情で俺を見る。
「ついてくんなって言っても勝手についてるくんだろ?」
「そうね。まあでも私の誘いを断るわけないわよね?」

 遠くでメイド姿の人がこっちを見てお辞儀をしている。
 俺は、はぁと溜息をつきながら頭を掻く。
「わかったよ。一緒に登校すればいいんだろ」
 マーフはドヤ顔をし
「これで次は私の勝ちが決まったわ」
 確信をするかのような表情で言った。

 こうして俺達は3人で登校することになった。
 意気揚々と歩くマーフの後ろを俺達2人が足取り重く歩いていく。
「なあシャウラ、ライバルって一緒に登校するものなのか?」
「うーんそんなの聞いたことないよ」
「しかしなんであいつ俺がここにいるって知ってたんだろ?」
「すいません」
「もしかして…」
「はい、言っちゃいました」
 俺とシャウラがコソコソしているのに気がつき、マーフは薄目でこっちを向き
「なにをコソコソやってるのかしら」
 と疑いの目を向ける。

 シャウラが
「い、いやお昼ご飯何にしようかと話してたんだよ」
 と言い逃れる。
「お昼かぁあなた達どこでお昼食べてるのよ」

 俺はぶっきらぼうに答える。
「中庭だけど」
「そう中庭ね、じゃあ私も今日から中庭で食べるわ」
「え?一緒に食べるの?」
「勿論よ、何を食べているのか知ることも必要よ」
「あ、ああ」

 俺とシャウラは言葉を失った。

 そんなこんなんで朝の一悶着を終え午前中の悪魔の時間が始まる。
 俺はもはや条件反射的にロンドが教壇に着くと魔物が襲ってくる。マーフの方をちらっと見ると奴は薄目をし、こちらを見ており、俺があくびをしているのをみて勝ち誇ったような顔をしている。

 あいつ!俺に勝負を挑む気か…ならばその勝負買ってやる。

 俺はカッと目を見開き姿勢を正し、黒板の方を見る。しかし…ロンドの奴めあいつは一体何を言ってるんだ俺には奴が何を言っているのかさっぱり理解ができない。こんな授業を真剣にうけることができるシャウラを尊敬の念を込めて見た瞬間。

 その隣のマーフは例の完璧な姿勢のまま目だけを閉じている。

 ふふふはははは勝った!奴はあの態勢で魔物との勝負に負けているのだ。あいつは魔物に負け俺にもまけたのだ!

 ロンドの抑揚ない声が魔物の力を増幅させる。
 まずい…このままではお…れ

 ……ハッと目を開けるするとマーフがこちらを向きニヤニヤとしている。

 しまった俺もまた魔物に負けたというのか?どのぐらいだどのぐらい意識を失っていたというのだ?
 まだ授業中だ。まだ巻き返せる。
 俺はマーフを睨む。

 彼女は勝ち誇ったような顔をし授業を聞いている。
 まさかあれは俺を魔物との戦いに油断をさせるための囮だったのか…

 このまま負けっぱなしはありえない…奴も必ず魔物に負けるときが…

 彼女はいつものピンっとした姿勢のまま目をつぶり首を大きく後ろにそらした。
 ハッと首が後ろに反ったことに気が付き目を見開き周囲をキョロキョロとする。俺はそれをみて勝ち誇ったような表情を彼女に向ける。

 それをみて真っ赤な顔をし怒っているようにも見える。
 とにかく勝負は今の所引き分け状態。

 午前中の授業の間中ずっとこの駆け引きを続け、昼の鐘がなった。
 シャウラがこっちを見て
「今日は寝なかったね、とても授業を聞いてるようにも思えなかったけど」
 と言い俺の顔をみて
「ひぃぃ」
 驚きの表情を見せる。

 俺は寝ないように必死に指で目を見開き、マーフの方を見ている。一方のマーフも俺と同様に指で強引に目を見開き、その目は血走り必死の形相に見える。
 シャウラは振り返りそのマーフの姿をみて
「ひぃぃぃ」
 と悲鳴をあげた。

 結局お昼になり3人いやマーフのメイド、アリシアさんと4人で中庭で昼食を摂る。マーフはアリシアさんが持っていたお弁当、俺達はいつもの食堂のパン。
 さすが貴族、マーフの弁当は薄く切られた赤身の残った肉や青々とした野菜を柔そうなパンで挟んだものだった。
 俺達の食べているパンを見て
「アリシア、私も明日から食堂のパンにするわ」
「わかりました。お嬢様」
「こんなパンより美味そうなのに」
「あんたと同じ物を食べて強さの秘密を知るのよ」
「ふーん」
 俺は興味無さげに相槌を打った。

 昼食を食べ終えた俺は芝生で寝そべり座っているマーフに話しかける。
「そういえば、なんで図書館なんかにいたんだよ?」
「あれはアリシアの付き添いよ」
「あーね」
 俺は納得した表情をする。

 マーフの付き添いメイドのアリシアさん。長い銀髪を後ろでまとめ、なかなかの美人でメガネを掛けており頭が良さそうにみえる。

「なんで納得してるのよ。私が本を読まないとでも思ってんの?」
「え?でも読まないよね?」
「わ、私だって本ぐらい読むわよ。そういうあんたはなんで図書館にいたのよ」
「シャウラの付き添い」
「ほらあんただって本読まないじゃない」

 シャウラとアリシアさんはそのやり取りをみて、二人で目を合わせニコニコしシャウラが俺とマーフに話しかける。
「二人仲いいような気がしてきたよ」

 俺とマーフは二人同時に口を開く。
「いいわけないだろ!」「いいわけないでしょ!」
 そういったあと二人で顔を見合わせプイッと反対の方を向く。

 ちょっとした沈黙の後
 俺達は立ち上がり午後の授業のためマーフを先頭に講堂に向かおうとする。その時アリシアさんの長い髪が目に入り、俺は口を開く。
「マーフも髪を長くすれば可愛らしくなるのにな、もったない」
 なによ!私にはこの髪が一番似合ってるのよと噛み付いて来るかと思ったら

 耳を真っ赤にさせ急に下を向きしもぞもぞしている。

 急になんだろうか?そうか飯食ったあとだから腹でも痛くなったのか、そう思い声を掛ける。
「あれ?お腹でも痛いの?トイレ言ってこいよ。午後の授業まで時間がないぞ」
 俺がそういうと
「そんなわけあるか!」
 急にクルリと振り返り怒ったような表情目に涙を浮かべ、右手を振り上げる。俺はそれを後方に身を引いてかわす。

 パチーーン

 見事な平手打ちが俺の横にいたシャウラの頬に当たった。

「女の子の平手打ちを避けるバカがいるか!」
 マーフはそういって更に激怒し肩をいからせ、ズンズンと先に歩いていった。

 シャウラは頬を手で押さえ
「痛いの僕なんですけど…」
 と呟いた。
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