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第2章 騎士学校
第23話 彼女が剣聖を目指す理由
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風薫る新緑の頃、赤い屋根が印象的で大きなお屋敷にちゃんと手入れが行き届いた大きな中庭。
その豪邸に住む少女の部屋の窓の外には大きな中庭が広がっている。少女はその中庭を眺めている。少女には兄がいる。その兄は後に剣聖と言われる男から剣の指導を受けている。
少女の兄が少女が窓から眺めていることを知り、手を振っている。
少女は体が弱くいつも部屋の窓から兄が剣の指導を受けているのを眺めていた。
少女は母親譲りの長く赤い髪に透き通るような白い肌、華奢な手足。そして大きな瞳に端正な顔立ち。彼女の名前はマーフ・アリステル。
アリステル家は十王国でも名門と言われる貴族で、過去に剣聖を五人も輩出している
彼女の両親は早くに亡くなっており、アリステル家の家督は一旦父の弟である叔父に移り、兄が18になる頃に家督を譲り受ける事になっていた。
そんなある日、体の調子が良かったマーフは中庭にでている。兄が一人木剣の素振りをしていたが、マーフに気が付き素振りをやめ近づいてくる。
「今日は調子がいいのか?」
「はい、お兄様」
マーフの声は明るい
「お兄様毎日毎日精が出ますね」
「一日でも練習をサボるとそれを取り戻すには3日掛かると言われてるんだ」
「それは大変ですね」
「そうだ、マーフも剣を振ってみる?」
マーフは恥ずかしがりながら
「女の子が剣だなんてはしたないです」
「そんなことはないよ」
「え?」
「12代剣聖は女の人だよ」
「剣聖?」
「うん、この国で一番強い人に与えられる称号。今は剣聖の称号を持つ人はいないけど、僕の師匠レグルスが20代目の剣聖候補さ」
「一番強い…」
マーフは兄から木剣を渡される。
「剣の握り方はこう」
兄の剣の握り肩を真似し木剣を持ってみる。
その重さでフラフラとする。
「お、お兄様はこんな重いものを平然と振り回しているのですね…私にはとてもとても」
「初めてだからだよ」
兄がフラフラとする剣先を抑えて上に持ち上げて手を離す。
剣の重みがまた加わりフラフラとしそうになる。
「ちょっと我慢」
「はい」
マーフは精一杯の力を込めて我慢をする。
「じゃあ振り下ろしてみて」
ブーンと空気を切り裂く音がした。
兄はそれをみて目を見開き
「マーフ、凄いよ!」
マーフは一体なにが起こったのかわからず大きな瞳をパチクリさせている。
「初めてであんなに鋭い振りができるなんて才能があるよ」
マーフは顔を赤くさせた。
それから兄はマーフ用に軽く細い木剣を与え、マーフも体調のいい日は兄と一緒に剣を振るようになった。
剣を振るようになってからマーフは体調のいい日が増えた。
落ち葉が舞い風が肌寒く感じるようになった頃、マーフは兄と剣を振っていた。
カランと木剣が落ちる音がする。兄の方を見ると腹部を押さえ倒れ込んでいる兄の姿があった。その日を境に兄は中庭に出ることはなかった。
叔父からはなにも聞かされず、ただただ病で休んでいると言われ部屋に入ることも禁止された。
季節は冬を越え、草木が芽吹き始めた頃。
マーフは一人剣を振っているときに思いついた。窓から兄の部屋に忍び込めばいいとそしてマーフは今、兄の部屋にいる。
ベッドで横になっている兄は今までの面影はなく張りのあった肌にバランスのいい筋肉がついていた体はやせ細り、骨と皮だけのようになっている。
兄はベッドから体を起こし話しかけてくれた。
「マーフ、来てくれたんだね」
マーフはそのかわり果てた兄の姿に驚きを隠せずただただ頷くだけあった。
「マーフおいで」
マーフは兄にそう言われ、ベッドに座る兄に抱きつく。
兄はマーフの頭をなでながら
「マーフの髪は母さんみたいだなぁ母さんもこんな長い髪だったんだよ」
マーフは母と父の思い出はない彼女が記憶に残る前に亡くなってしまったからだ。
「お兄様…」
「もう僕は長くない…アリステル家…いやお前を守れなくて済まない」
「そんな弱気にならないで、また元気になって中庭で一緒に…」
「そうだね又一緒に練習できたらいいなぁ」
兄はそう言ってマーフの頭をなでながら窓から中庭を見た。
――数日後
兄は死んだ…
そして一族がこの豪邸に集められ、叔父が宣言をした。
「…は死んだ。彼は正統な家督の継承者であった。彼が亡くなった今残されたのは女児のマーフのみ、よって直系の血は絶えた。しかし我がアリステル家の血を絶やすわけにはいかない、そしてここに宣言をする私がアリステル家の家督を継承すると」
「意義なし!」
「意義なし!」
一族全員が満場一致で賛成をした。
マーフはただ呆然とそれを眺めていた。
数年後、兄から誘われて剣を初めて振るった季節の頃、マーフは中庭で日課になっている素振りをしていた。
そこに剣聖となった少年の師匠が彼女の前に現れた。
「いい素振りだ。毎日欠かさずに練習しているのだろう?」
「はい、でももう止めるんです」
「もったいないな。君には才能を感じるというのに」
「叔父様が剣を振るなら花嫁修業をしなさいって」
マーフは器量もよいことから、アリステル家の繁栄のために有名貴族との婚姻を叔父は考えていた。マーフ自身も叔父には世話になっていると負い目もあり叔父の言うとおりにしようと思っていた。
剣聖となった男は胸元から一枚の手紙をマーフに差し出す。
「これは我が弟子のものだ。私の胸に秘めていようとおもったのだが君は真実を知る必要がある…」
「真実?」
マーフは首をかしげながらその手紙を開く。
そこには兄が剣聖に宛てに書かれた真実が記されていた。
自分の命がもう幾ばくも無いこと、そしてその原因は叔父によって画策されたこと。最後にマーフを残してこの世を去る未練。
マーフは力なく座り込み
「ああああああああああああああ」
声を上げて泣いた。兄が死んだときには涙一つでなかったというのに。
「兄さんごめんなさい…ごめんなさい…私に力ないばっかりに…」
剣聖はマーフをそっと抱きしめる。
「自分を責めちゃだめだ。あなたは私が守るそれが私の弟子の遺言だ」
「私は分かっていました…心のどこかで兄が叔父に殺されたのではないかと…でも私は私の事しか考えることができなかった…」
「人はみんなそうだよ」
「兄は兄は…最後まで私の身を案じてくれたというのに…私決めました。家督を叔父の手から取り戻しますそのためにはどうすればいいですか?」
「女性のあなたが家督を継ぐこれは容易ではないでしょう」
「覚悟の上です」
剣聖は少し困ったような表情をしポツリと呟く。
「剣聖、21代剣聖になれば家督を継ぐ事もできるでしょう」
それを聞くとマーフは剣聖の手をほどき一歩下がり、顔を上げ、剣聖の顔を見る。その眼には赤く腫れているが、決意のこもった力強さがあり、そして手には剣聖の腰にさげらていたナイフが握られている。
マーフはナイフを長く美しい赤色の髪に当て、バサバサと切り始める。
剣聖は驚きの表情をみせ
「まさか…」
髪を短くしたマーフは剣聖にこう告げた。
「私は強くなる!そして剣聖になって叔父の手から家督を取り戻す。レグルス私に剣を教えなさい!」
剣聖レグルスは真剣な表情で
「わかりました私があなたを剣聖に導きます」
「ありがとう」
彼女の目には強さという光が宿り、12代剣聖が使いこなしたといわれる舞踏剣術の使い手になった。
その豪邸に住む少女の部屋の窓の外には大きな中庭が広がっている。少女はその中庭を眺めている。少女には兄がいる。その兄は後に剣聖と言われる男から剣の指導を受けている。
少女の兄が少女が窓から眺めていることを知り、手を振っている。
少女は体が弱くいつも部屋の窓から兄が剣の指導を受けているのを眺めていた。
少女は母親譲りの長く赤い髪に透き通るような白い肌、華奢な手足。そして大きな瞳に端正な顔立ち。彼女の名前はマーフ・アリステル。
アリステル家は十王国でも名門と言われる貴族で、過去に剣聖を五人も輩出している
彼女の両親は早くに亡くなっており、アリステル家の家督は一旦父の弟である叔父に移り、兄が18になる頃に家督を譲り受ける事になっていた。
そんなある日、体の調子が良かったマーフは中庭にでている。兄が一人木剣の素振りをしていたが、マーフに気が付き素振りをやめ近づいてくる。
「今日は調子がいいのか?」
「はい、お兄様」
マーフの声は明るい
「お兄様毎日毎日精が出ますね」
「一日でも練習をサボるとそれを取り戻すには3日掛かると言われてるんだ」
「それは大変ですね」
「そうだ、マーフも剣を振ってみる?」
マーフは恥ずかしがりながら
「女の子が剣だなんてはしたないです」
「そんなことはないよ」
「え?」
「12代剣聖は女の人だよ」
「剣聖?」
「うん、この国で一番強い人に与えられる称号。今は剣聖の称号を持つ人はいないけど、僕の師匠レグルスが20代目の剣聖候補さ」
「一番強い…」
マーフは兄から木剣を渡される。
「剣の握り方はこう」
兄の剣の握り肩を真似し木剣を持ってみる。
その重さでフラフラとする。
「お、お兄様はこんな重いものを平然と振り回しているのですね…私にはとてもとても」
「初めてだからだよ」
兄がフラフラとする剣先を抑えて上に持ち上げて手を離す。
剣の重みがまた加わりフラフラとしそうになる。
「ちょっと我慢」
「はい」
マーフは精一杯の力を込めて我慢をする。
「じゃあ振り下ろしてみて」
ブーンと空気を切り裂く音がした。
兄はそれをみて目を見開き
「マーフ、凄いよ!」
マーフは一体なにが起こったのかわからず大きな瞳をパチクリさせている。
「初めてであんなに鋭い振りができるなんて才能があるよ」
マーフは顔を赤くさせた。
それから兄はマーフ用に軽く細い木剣を与え、マーフも体調のいい日は兄と一緒に剣を振るようになった。
剣を振るようになってからマーフは体調のいい日が増えた。
落ち葉が舞い風が肌寒く感じるようになった頃、マーフは兄と剣を振っていた。
カランと木剣が落ちる音がする。兄の方を見ると腹部を押さえ倒れ込んでいる兄の姿があった。その日を境に兄は中庭に出ることはなかった。
叔父からはなにも聞かされず、ただただ病で休んでいると言われ部屋に入ることも禁止された。
季節は冬を越え、草木が芽吹き始めた頃。
マーフは一人剣を振っているときに思いついた。窓から兄の部屋に忍び込めばいいとそしてマーフは今、兄の部屋にいる。
ベッドで横になっている兄は今までの面影はなく張りのあった肌にバランスのいい筋肉がついていた体はやせ細り、骨と皮だけのようになっている。
兄はベッドから体を起こし話しかけてくれた。
「マーフ、来てくれたんだね」
マーフはそのかわり果てた兄の姿に驚きを隠せずただただ頷くだけあった。
「マーフおいで」
マーフは兄にそう言われ、ベッドに座る兄に抱きつく。
兄はマーフの頭をなでながら
「マーフの髪は母さんみたいだなぁ母さんもこんな長い髪だったんだよ」
マーフは母と父の思い出はない彼女が記憶に残る前に亡くなってしまったからだ。
「お兄様…」
「もう僕は長くない…アリステル家…いやお前を守れなくて済まない」
「そんな弱気にならないで、また元気になって中庭で一緒に…」
「そうだね又一緒に練習できたらいいなぁ」
兄はそう言ってマーフの頭をなでながら窓から中庭を見た。
――数日後
兄は死んだ…
そして一族がこの豪邸に集められ、叔父が宣言をした。
「…は死んだ。彼は正統な家督の継承者であった。彼が亡くなった今残されたのは女児のマーフのみ、よって直系の血は絶えた。しかし我がアリステル家の血を絶やすわけにはいかない、そしてここに宣言をする私がアリステル家の家督を継承すると」
「意義なし!」
「意義なし!」
一族全員が満場一致で賛成をした。
マーフはただ呆然とそれを眺めていた。
数年後、兄から誘われて剣を初めて振るった季節の頃、マーフは中庭で日課になっている素振りをしていた。
そこに剣聖となった少年の師匠が彼女の前に現れた。
「いい素振りだ。毎日欠かさずに練習しているのだろう?」
「はい、でももう止めるんです」
「もったいないな。君には才能を感じるというのに」
「叔父様が剣を振るなら花嫁修業をしなさいって」
マーフは器量もよいことから、アリステル家の繁栄のために有名貴族との婚姻を叔父は考えていた。マーフ自身も叔父には世話になっていると負い目もあり叔父の言うとおりにしようと思っていた。
剣聖となった男は胸元から一枚の手紙をマーフに差し出す。
「これは我が弟子のものだ。私の胸に秘めていようとおもったのだが君は真実を知る必要がある…」
「真実?」
マーフは首をかしげながらその手紙を開く。
そこには兄が剣聖に宛てに書かれた真実が記されていた。
自分の命がもう幾ばくも無いこと、そしてその原因は叔父によって画策されたこと。最後にマーフを残してこの世を去る未練。
マーフは力なく座り込み
「ああああああああああああああ」
声を上げて泣いた。兄が死んだときには涙一つでなかったというのに。
「兄さんごめんなさい…ごめんなさい…私に力ないばっかりに…」
剣聖はマーフをそっと抱きしめる。
「自分を責めちゃだめだ。あなたは私が守るそれが私の弟子の遺言だ」
「私は分かっていました…心のどこかで兄が叔父に殺されたのではないかと…でも私は私の事しか考えることができなかった…」
「人はみんなそうだよ」
「兄は兄は…最後まで私の身を案じてくれたというのに…私決めました。家督を叔父の手から取り戻しますそのためにはどうすればいいですか?」
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それを聞くとマーフは剣聖の手をほどき一歩下がり、顔を上げ、剣聖の顔を見る。その眼には赤く腫れているが、決意のこもった力強さがあり、そして手には剣聖の腰にさげらていたナイフが握られている。
マーフはナイフを長く美しい赤色の髪に当て、バサバサと切り始める。
剣聖は驚きの表情をみせ
「まさか…」
髪を短くしたマーフは剣聖にこう告げた。
「私は強くなる!そして剣聖になって叔父の手から家督を取り戻す。レグルス私に剣を教えなさい!」
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