21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

ぽいづん

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第2章 騎士学校

第28話 罪と罰

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 真っ暗で積み上げられた石の壁にトイレと鉄格子しかない部屋。俺は騎士団本部の地下牢に入れられている。もう何日たったか分からないが、クソまずい食事が何回かでてきたということだけ覚えている。

 カチャカチャと甲冑が擦れあう音がする。

 俺はいつまでここにいるのか…校長が言っていたことはこれか…アタリア家に逆らえるものはいない。不敬罪とか言っていたな…俺はこのまま死刑にでもなるのかなぁ

 あの場にいた若い騎士の一人が松明を持って階段から降りてきているのが見えた。
 確かさっき食事はとったばかりだったはずだが?
「もう食事の時間?」
 俺がその騎士に話しかけると騎士は首を横に振り
「お前の罪は赦された釈放だ」
「どうして?あのクソ野郎が許すとは思えないけど」
 その騎士は少しだけ晴れやかな顔になり
「確かにあのクソが許すなんてよっぽどのことがあったんだろう」
 俺にそう言って笑いかけてくれた。

 その騎士が出口まで案内してくれるといことで一緒に騎士団本部の中を通る。今まで真っ暗な場所にいたせいか階段を上った瞬間眩しくて目を閉じる。暫くして目を開くと騎士達が右往左往と忙しそうに駆け回っている姿が目に飛び込んでくる。
「なにがあったんです?」
「ちょっとした事件があってね」
「そうですか…大変なんですね」

 その騎士は騎士団本部の出入り口でまで見送ってくれる。
 太陽は頂点から少し傾いており、今の時間がお昼すぎであることがわかる。

 視線を下に落とすと少し先にシャウラとマーフの姿があることに気が付く。向こうも俺が出てきたことに気が付いて駆け寄ってくる。
 マーフが今にも泣きそうな顔で
「この馬鹿!もう無茶しないでよ」
「ごめん、ごめんあんまりのことだからつい」
「下手したら死刑になってたかもしれないんだからね」
「それがなんで釈放になったんだ?」

 シャウラが腕を組み難しい顔をしながら
「それなんだけど…噂によるとスタンツが誘拐されたらしい」
「え?誘拐?」
「君が捕まった日以来学校に来ていないんだ」
「まじか…それじゃ俺が釈放されたのは」
「僕も詳しくは知らないけど、君の釈放がスタンツの解放の条件の一つらしい」
「なるほどな…」
「騎士団も大変な騒ぎになっていたろ?」
「うん」

 マーフも何かを知っていそうな素振りで身を屈めヒソヒソと話を始める。
「いい?ここだけの話よ。レグルスに聞いたんだけど」
「うん」
「スタンツが誘拐された翌日に切り取られた舌と真実を語らぬ口は必要なし。あんたを釈放しろって言う内容の手紙が断罪の騎士って言う差出人からアタリア家に届いたのよ」
「まさか…」
「舌はどうやら人間のものではなかったみたいだけどね。それで慌てたベイル・アタリアはあんたを釈放するように働きかけたというわけよ」
「そうかぁ。なら俺はその断罪の騎士が命の恩人ってことなんだな」
「あんたにとってはね」

 シャウラはずっと難しい顔をしたまま呟く。
「断罪の騎士か…そんなものが許されていいのかな…」
 マーフと俺はあっけらかんと答える。
「いいだろ」「いいでしょ」
「2人とも単純でいいよね。国というものは法で運用されるから国なんだよ。法がなくなればそれは国の体をなしてない」

 俺は興味なさげに答える。
「つまりどういうこと?」
「個人の感情によって私刑がまかり通る。つまりやられたらやり返すことがまかり通る」
「やられたらやり返す当然のことだろ?」

 すっと大きな人影が身を屈めて話をしている俺たちを覆いその影の主が声を発する。

「罪を罰するの法であり個人の報復が罰であってはならない」
 シャウラはその答えを聞き頷いている。マーフがその声の主に声を掛ける。
「レグルス!なに難しいことを言ってんのよ」
「マーフこの件は秘密だと言ったろ?しかしシャウラ君が言っているのは法治国家の基本的なことだよ」
 マーフは苦笑いをしている。
「まあ君たちは知る権利はあると思うがね…」

 シャウラは俺たちに説明をするのを諦めたのかレグルスの方を向き話しかける。
「断罪の騎士ですか…剣聖様はどうお考えですか?」
「当然、私刑などあってはならない。そこにどんな理由があろうともな。私が必ず断罪の騎士を断罪に処す」
 シャウラはその答えを聞いてホッとしているようにも見える。

 俺はその言葉に腹を立てレグルスに毒づく。
「お前にできなかったスタンツ、いやアタリア家に罰を与えることができたんだ。断罪の騎士様は剣聖様より役に立つ」
「これはこれは手厳しいね。君には謝らなければならないと思ってね。君が釈放されたと聞いてここ駆けつけたんだ」
「何もできねーんなら最初からカッコつけてんじゃねーよ」
 レグルスはその表情に少し悔しさを滲ませ
「すまなかった。この国の自浄能力というものを信じていたのだがな…」
「もういいよ。俺も釈放されたしスタンツが誘拐されてあのクソ親父も肝を冷やしただろうからな」
「すまないな…」
 レグルスはいつものような余裕のある表情をみせるわけでもなく拳を握り何かに腹を立てているかのように見えた。

 その場でレグルスと別れ俺たちは帰路についた。

 そしてその夜にスタンツが見つかったという話を聞いた。ただ精神的なダメージを受けているらしく学校への復帰は難しいということであった。
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