21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

ぽいづん

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第2章 騎士学校

第36話 晩餐会

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 ――時計塔の修理から数日が経って。

 朝、登校前にマーフが少女の様な純粋な表情をして話しかけてくる。
「ふふふ、実はねー」

 大抵マーフがこんなことを言ってくるときは大したことではない。俺は特に気にもせず話しを聞く。
「はい、はい、でなに?」

 マーフは悪戯っぽく微笑みながら話しを続ける。
「んーどうしようかなーそんな態度の人に言ってもなー」
「わかった。聞かない」
 俺はそっぽを向きそのまま歩き始める。するとマーフは焦ったような口ぶりで
「分かった、分かったわ…あの時計塔を修理した魔法使いをうちに招待することになったのよ」

 今まで会話に入ってこなかったシャウラが目を輝かせ
「本当に?」
「ええ、今日の夜うちにくるわ。あなた達もどうかしら?」
「行く!絶対行く!!ラグウェルも行こうよ」
 マーフは目を輝かせて俺の事を見ている。
「んーあんまり気は進まないんだが…」
「なんで?魔法使いなんて見える機会ないよ?」

 そもそも俺が居られなかった国の人だ…俺にとっていいことはないと思うが…6年も前の事だし…大丈夫か
「分かったじゃあ行くよ」
 俺がそう答えるとマーフは今年一番の笑顔をみせ
「じゃあ、放課後馬車に乗ってね」
 そう言ってスキップをしながら先に学校に行ってしまった。
「女の子だねぇマーフさんも」
 シャウラがその姿をみてしみじみと呟く。
「そうか?俺にはとても女の子には見えないが…」
 マーフも学校では俺に次ぐ強さを誇る女剣士として徐々に知られつつある存在になってきている。

 校門に着くと早速、ガタイのいい上級生が俺に手紙を渡し、そそくさとどこかにいってしまった。
 シャウラがそれを見て呆れたように呟く。
「またですか」

 俺も半ば諦めたかのように答える。
「はい、またです」
「お勤めご苦労様です」
 手紙の中には時間と場所が記され『放課後、道場にて待つ』と荒々しい字体で書かれていた。
「放課後かぁ間に合いそう?」
「大丈夫、3秒で片が着くから」

 ――放課後

 俺は指定された道場に向かう。マーフとシャウラは先に校門で待ってるということで俺一人で行くことになった。

 道場につくとガタイのいい上級生が数人木剣を持って待ち構えている。
「今日こそはお前に勝つ!」
 そういって手紙を渡してきた上級生が道場の真ん中に立つ。

「あー今日は時間がないから、そこにいる人全員でかかってきてもいいよ」
「なんだと!騎士たるものそんなふざけた真似ができるか!」
「負けても、全員で掛かって来たとかいわないからさ」
「ふざけるな!」
 そういって中央に立った男が木剣を俺に振り下ろす。

 俺は当然木剣などもっていない。

 木剣を振り下ろす手を抑え、そのまま後ろ手にする。すると痛みで上級生は木剣を離した。
 上級生は苦痛に顔を歪めながら慌てたような感じで声を出す。
「参った。降参だ降参」

「じゃあ全員でかかってきて」
 周りで見ていた連中は顔を見合わせ、その中の一人が口を開く。
「今日のところはお前も急いでるみたいだから、勘弁してやる」
「そうですか…それはありがとうございます」

 俺は道場を後にする…この1年で増えたことそれがこれだ…有名税ってやつのなのか腕試し的な感じで上級生やら下級生はたまた騎士団の連中にまで勝負を挑まれるのだ。多い時には1日に5回挑まれたこともあった。全部俺の勝ちで終わっているため、この間1000勝を突破しシャウラとマーフとでお祝いをした。

 さっき戦った先輩はたしか15回は戦っているはず。まあ凝りもせず何度も何度も挑んでくること…そんなこんなでマーフとシャウラが待つ校門についた。
「遅かったわねぇ3秒で片をつけるんじゃなかったの?」
「勝負は2秒半ぐらいでついたかなー」
「ふん、私だったら1秒半で勝負をつけるわよ」
「はい、はい」

 シャウラはそのやり取りをみて苦笑いをしている。
「さあ行きましょう」
 3人でマーフの馬車に乗り込む。最初からマーフのメイドアリシアさんが座っており、都合4人で馬車に乗っているのだが、馬車の中は案外と広く4人座っても広々としている。

 馬車に揺られながらシャウラが口を開く。
「そうだ、その魔法使いのこと剣聖様に聞いたんだけど」
 シャウラはあの事件のあと剣聖と参謀の様な感じになっており、色々と助言を求められたりすることもあるらしい。剣聖も騎士団の副団長というナンバー2の肩書となり、騎士団の改革や国に改革に尽力しているとシャウラから聞いた。

 まあどうなろうが俺はあの野郎が嫌いだ。将来必ず倒す。
「何やらペンタグラムで密命を受けていろんな国を旅しているらしいよ」
「なんだそれ?」
「詳しくはみんなしらないけどね。あった人がそういってたらしいよ」
 マーフが口を挟む。
「先方さんに失礼がないように、根掘り葉掘り聞かないでね」
「やだなぁそれぐらい心得てますよマーフさん」

 マーフは俺の顔を見て口を開く。
「あと、あんた。言葉遣いが悪いから気をつけなさいよ!」
「はい、はい」
「はいは1回!」
「はーい」
「もう!」
 マーフはそう言ってプイっとよそを向いた。

 馬車が止まり俺たちは馬車から降りる。そして目に飛び込んできたのは、大きな広い庭に小川のように水が流れ、手入れが行き届き刈り込まれた生垣に、ちゃんと剪定された花や木。それをみるだけでアリステル家が有力な貴族ということが分かる。そして染み一つない白い壁に赤い屋根の大きな豪邸。

 俺達はその中庭を通り、豪邸の中に入っていく。床には赤い絨毯が引かれ、廊下の隅や壁に絵画や彫刻などが置かれている。

 シャウラは目をぱちくりさせて周囲をキョロキョロと見まわしている。
「マーフさんの家凄い…有名貴族ってのは知ってたけど、ここまでとは」

 マーフは当たり前でしょという感じであるが、生まれ育ったところということか嫌味がない。
「領地没収される前のアタリア家の方がすごかったけどね」
「そうなんですね」
 廊下を曲がり突き当りの部屋に案内される。

「それじゃここで待ってて、私着替えてくるから」
 そういって通された部屋はいろんな模様が彫られ、宝石などが散りばめられた木のテーブルに、そのテーブルと対になっているような豪華な椅子。

 俺とシャウラはその椅子に掛ける。
「凄いねマーフさんの家」
「ああ、広いな」
「そういや君もペンタグラムの貴族だったんだっけ?」
「うん…10歳までしかいなかったからなぁ」
「そっか…」
 シャウラは聞いてはいけないことを聞いてしまったと思ったのか。黙って周囲を観察している。

 30分程待っているとコンコンとノックする音が聞こえる。どうぞと返事をするとガチャとドアが開くとメイド姿のアリシアさんがおり、俺達に声をかける。
「晩餐会のご用意ができましたのでどうぞ」

 アリシアさんに案内され晩餐会の会場でもある、食堂に通される。アリシアさんが観音開きの扉を開く。

 長いこげ茶色の木製テーブルの端にマーフの叔父さんが座っており、正面から左隣には知らないおばさんが右隣には、花をあしらった髪飾りをつけ、ほんのりと化粧をした紺碧のドレスを身に纏ったマーフの姿がある。

 それは学校で見るような活発な少年のような少女という面影はなく、お淑やかな有力貴族の娘にしか見えない。
 俺達はアリシアに案内されマーフの近くに着席する。
 そしてまた扉が開き、時計塔を修理する為に現れた少女が修理した時と同じ黒ずくめの格好で現れマーフの叔父に礼を述べる。

「十王国、アリステル家の晩餐会にお招き預かり、至極光栄であります。ペンタグラムを代表して行政執行官、エリン・ハーベルが王に代わり礼を申し挙げます」

 エリンと名乗るペンタグラムの少女はスカートを開きちょこんと頭を下げた。

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