21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

ぽいづん

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第2章 騎士学校

第40話 笑顔

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 ある程度、部屋が片付き穴の開いた屋根から空を見る。大分陽が高くなってきている。

 あいつは俺の名前と顔を知っている…迂闊に出歩くわけには行かないよな…

 屋根の上に真っ黒なカラスが止まり、カラスと目があったような気がした。まさかな…あのカラスが…まああるわけないか…

 することもないので、剣を抜き素振りしてみたり、腕立て伏せをしてみたり一通り体を動かす。カラスはその場から離れず俺のことを見ている。

 やはりあのカラス…相手は魔法使いだ…念のために…
 俺がナイフを手に取りカラスめがけて投げようとした瞬間、カラスが飛び上がる。俺はそれに違和感を感じ、小屋の外へ飛び出す。

 ドーーーン

 俺が飛び出した瞬間、小屋が爆発を起こし、家の外に昨日とおなじ格好をしたエリンの姿がある。そして肩にカラスが止まり、カラスの頭をエリンが撫でるとキョロキョロとしだしそのまま飛んでいく。

「なんでもありかよ」
「あなた達がなにもできないだけ」
 エリンはその表情変えずにブツブツと詠唱を自身の体の周囲に火の玉を大量に出す。

「このフレイムボールはあなたを捉えたわ。もう逃げられない」
 その無数の火の玉が俺にめがけて飛んでくる。

 俺は剣を抜きその剣で火の玉を斬る。

 シュンシュンと空気を斬る音が響く。10個20個…途中から俺は火の玉を斬った回数を数えるのを止める。それほどの数の火の玉が俺にめがけて飛んできているのだ。

 そして最後の1個を斬った。

 エリンはその表情を全く変えずに話しかけてくる。
「驚いた…100個以上のフレイムボール全て切り落とすとは」

 俺は肩で息をしながら答える。
「ハァハァ…俺を倒すには1000個必要だ!」
「ふふふ、面白いことを言うわね…あなた達は私に指一本触れることはできない。つまり私は負けない」
「えらく饒舌じゃないか…勝ったと思ってんじゃねーよ」
 確かに…あいつの言っていることは本当だ…このままあいつの攻撃を避け続けることはできない…

 今度は石畳から木の根が出てくる。

「これは昨日見た!」
 さっとその木の根かわし、そのまま叩き斬る。

 これまで戦ってきて大体のことは分かってきた。あいつの攻撃は単調で戦い慣れしていない。その攻撃に詠唱が必要だから攻撃のタイミングが分かる。そしてその攻撃自体も火の球や木の根、氷柱であり、それらは容易に斬ることができる。

 恐らく昨日の衝撃波は、接近しないと効果がないのだろう。

 俺はエリンの攻撃避け続け、逃亡のタイミングを図る。しかしあいつから目を離すことができない。そうか…昨日の衝撃波を喰らってここの荒屋と一緒になれば…昨日のように逃げることができるかも…

「うおおおおおお」
 俺は敢えて雄叫びをあげ、エリンの懐に突っ込む。

「無駄なことを…」
 エリンの周囲を飛んでいた氷柱が俺にめげけて飛んでくる。それらを斬り落としながら、接近をする。そしいて剣を振り下ろす。

 剣が魔法障壁に当たる。

 その時だ…剣身が眩い光を放ちだしたのだ。

 エリンが初めて驚きの表情を見せる。
「そ、それはまさか…」
 俺も初めての経験に驚きながら剣を振り抜く。

 ガラスが割れるような音とともに、魔法障壁が砕け散る。

 そのまま剣先はエリンの身体をかすめ足元に刺さる。エリンは唖然とし驚きの表情をのまま
「ま、まさか、なぜそれがここに…絶対防御魔法の魔法障壁が…」

 俺は目の前にいるエリンにニヤッと笑いかけ
「これで互角だな」
 エリンは魔法障壁が破れたのが信じられないのか俺の言葉も耳に届かない様子。
「なぜ?なんで?なぜ?野蛮人に負けるの私が?このペンタグラムのエリートであるこの私が?この野蛮人を殺して国に帰るの…私はそう帰るの…」
 半ば錯乱状態のようになりブツブツと爪を噛みながら呟く。

 俺は彼女の後頭部に当身をし彼女は昏倒した。そしてその体を縄で縛り付ける。

 小屋は粉々になったしな…とりあえず、どうしよう…

 もう一度剣を見るがさっきの輝きは失われ、いつものように虹色に光を反射させるシリウス鋼がそこにあるだけであった。

 この剣に何かの秘密が?そういえば父さんはなぜこの剣を俺に託したのか…

 貧民街の人通りが少ない路地裏にエリンを連れて行き下ろす。
 頬をペチペチと叩くと
「う、うーん」

 エリンは目を覚まし、俺の顔を見てハッとする。
「なぜ殺さない…」

 俺はエリンの目の前に座り込み話しかける。
「殺しちゃダメでしょいろいろと聞きたいことあるし」

 エリンはその目を逸しボソッと話す。
「私は話さない」
「そう、なら国に帰ってよ。俺も女の人なんて殺したくないし」
「…私は国には帰れない」
「あんたは俺には勝てないよ。何が有ったから知らないけど、知ってること話して俺の目の前から消えるあんたに選択の余地はない」
「私は任務を終え…国に帰る…私の選択肢はこれだけだ」
「そう…でももうあんたの魔法じゃもう俺は殺せないよ」
「…そうね…私の勝ち目はなさそうね」
 ポツリと寂しそうにそう呟く。

 俺はエリンの目を見つめ話しかける。
「なんで国に帰れないんだ?俺ができることがあれば、国に帰れるように協力する」
 エリンは自嘲気味に笑う。
「あははは…命を狙ったものを助けるというのか?お前はバカなのか?」
 俺はニコッと笑いエリンの顔をみて
「うん、バカだってよく言われる」
 そういうとエリンは俺に始めて笑顔を見せた。






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