21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

第2章 騎士学校

第41話 10年後の秘密

　薄暗い路地裏で体を縛られた少女が剣を持った少年に脅されている。傍からみればそう見えるかもしれない。それを証拠にこの路地裏を通った人たちは俺とエリンの姿をみると足早に通り過ぎていく。

　騎士団に通報される前にどこかに行くか…
　俺はエリンに話しかける。
「どうせ、なんも喋らないんだろ？」
「どうかしら…あなたが何故その剣を持っているのか、それを教えてくれたら少しは話してもいいかもね」
　エリンはさっきのやり取りから少しだけ感情を表に出すようになった。

　俺は剣を抜き剣身をエリンに見せる。
「シリウス鋼ですね…私も実物を見るのは始めてだわ」
「失われた技術だっけ…それで作られた聞いた」
「よく知ってますね…」
「これは父さんに貰ったんだ…俺を世界の果てに飛ばしたときに」
「リゲル様から…」

　俺はエリンの肩を掴み
「俺の家族のことを知っているのか！」
　エリンは当然という顔で
「当然です…ペンタグラムで始祖の五家を知らない人間なんていません」
「なんだ…そういうことか」

　俺は肩を落とす…
「そうですね…家族のことは気になりますよね」
　俺は黙って頷く。

　エリン少し含みをもたせたような言い方で
「…皆さんご無事です…」
「そうか…ありがとう…」

　俺は持っている剣で縄を斬る。

　エリンは驚きの表情を見せる。
「どうして…」
「君にも家族がいるんだろうなって思ってさ」
「…私には…」
「そうか！俺を殺さないと帰れないっていってたな」

　俺はエリンに笑顔を見せる。

「あなた、本当にバカですね。命を狙ってる者の縄を斬るなんて」
俺はエリンの目を見つめ
「あんたはもう俺を殺さないよ。目を見たら分かる」
俺がそう言うとエリンは目を逸らすように俯き沈黙が流れる。そしてエリンはポツリと呟く。
「仇なす者…」
「仇なす者？」

　俺がそう言うと呆れたというような表情をし
「あなた本当に何も知らないんですね」
「ああ、俺は10歳のときにペンタグラムから出たし、父さんは何も言わなかったからな」
「ペンタグラムに古くから伝わる伝承…魔法の国生まれの魔法を使えぬ者は国を仇なす者となる」
「そうか…それで父さんは俺を…」
「ええ…あなたを救うためには国外に逃がすしかなかった。国は幼いあなたが生きていけるとも思わなかったら放置しました…でも魔法であなたが生きていることが判ったから」

俺が生きていることが判ったら殺すのか…なぜそこまで恐れる必要があるんだ…魔法も使えないのに…

「俺がそんなふうに見える？」
「あなたみたいなバカに滅ぼされるような国だったらとっくに滅んでるいると思います」
エリンはそう言って俺に再び笑顔を見せる。
「だろ？」
俺もそう言って笑う。

「でも良かった。君が良く喋る普通の女の子で」
そういうとエリンは顔を紅くする。
「に、任務に感情はひ必要ないから…」
「そうやって動揺してるのいいな」

エリンは真剣な表情になり
「10年後…まで必ず生きてください」
「なにがあるんだ？」
「それは時がくれば分かります…」
「あんたは俺を殺すんじゃなかったのか？」
「私にはもう一つの密命がありました…それは…」
「それは？」
「す…すいません時が来るまで言えません…」
「判ったよ。兎に角俺の命はもう狙わないってことだろ？」
「はい…もう狙いません」

エリンは立ち上がり、お尻をポンポンと叩き埃を払う。
「それじゃラグウェルさん。お元気で」
「どこに行くんだ？」
「私の本来の任務はペンタグラム人の帰還なので」
「そうか…」
「他の国へ行きます」
「ありがとう」
「こちらこそありがとうございます」
エリンはそう言って笑顔を見せ走り去っていった。

俺は寮に戻り制服に着替え、学校に行く。

シャウラとマーフが驚きの表情を見せる。二人に事情を説明するとマーフは安堵の表情を見せた。シャウラはボソッと呟く。
「10年後か…何があるんだろう…ペンタグラム鎖国政策となにか関連があるのか…」
「まーたシャウラ君は難しい顔をしてー10年経ったらわかるっしょ」
シャウラはニコッと笑い
「そうだね。あれこれ考えても仕方ないよね」
マーフはそのやり取りをみて
「あんたのその楽天的な性格羨ましいわ。私だったら気になってしょうがないわ」
「そうか？俺も結構悩んだりするけどなぁ」
「そんなふうには見えませーん」

時計塔の鐘が勢いよく鳴り時間を知らせた。