21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

ぽいづん

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第3章 鴉

第51話 最北の地の鴉

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 ガキーン!

 刃の部分が石になった斧の攻撃を顔の前で受け止める。目の前にはボサボサの長い髪を振り乱し、突き出た口からのぞかせる特徴的な長く太い犬歯。

 俺たちが今戦っている相手は祖人そじんと呼ばれる原住民だ。受け止めた斧を弾き飛ばし、粗人の胸に剣を突き立てる。胸から血を吹き出し祖人は倒れ真っ白な大地を赤く染める。

 一息つく間も無く、ヒュンヒュンという音が聞こえてくる。灰色の雲が覆う空をみると矢の雨が降り始める。さっき胸に剣を突き立てた粗人の死体を盾のように空に向ける。

 ブスブスブスと矢が死体に刺さる音が聞こえる。

 矢の雨が終わると、今度は刃の部分が石でできた槍を持った祖人が走ってきている。俺が祖人のところに走ろうとしたとき、肩をぐっと掴まれる。俺が振り返ると俺と同じ肩から黒い毛皮の付いた真っ黒な外套を纏った男が叫ぶ
「撤退だ!撤退するぞ」
 俺も指を差し叫ぶ
「まだ、向こう仲間がいます!!」
「だめだ!もうこれ以上無理だは取り囲まれるぞ!」
 その叫んだ人物に祖人の一人が槍を突き立てようとしている。その人物は槍を弾きあげ、祖人の首を撥ねる。
「引くぞ!ラグウェル」
「…はい」

 ――俺は今、十王国最北の地…万年冬のウィンタールに居る。

 2年前に騎士団に入団し毎日忙しく過ごしていた。騎士団の仕事といえば、王都の見廻りや有事の際の訓練などがもっぱらの仕事である。
 日々忙しく平凡に暮らして居た頃、剣聖が俺に話しかけてきた。
「最近、なまってんじゃないか?」
「んなことねーよ。そんなにやわじゃねーし」

 剣聖は改まった表情をし俺に話す。
「お前にいい話があるんだが受けてみる気はないか?」
「いい話?」
からすになってみないか?」

 王国最北の地、万年冬の地方『ウインタール』を防衛する騎士団の人間を『からす』と呼ぶ。正式名称は十王国騎士団ウィンタール防衛部隊なのだが、この部隊の格好は真っ黒な服であるそのため鴉とよばれるようになった。何故真っ黒な服をきているのか?それは真っ白な雪原で倒れていてもすぐに分かるということらしい。

 そしてその過酷な土地を防衛するのが任務のため、騎士団の中でも罪を犯したり、大きな失敗をしたものが懲罰的な意味で出向されることが多く、騎士団内でも忌み嫌われておりそのことからも鴉と呼ばれているらしい。以前にみた鴉の男は疲れ切った表情をしていた。

「おい!それはいい話じゃねーだろ」
「敵に塩を送るみたいで嫌な話がだな…今のお前に俺は負ける気がしない。お前も分かってるだろ」
「…たしかに…」
「今一度自分を厳しい環境においてみるのはどうだ?」

 俺が十王国にきて5年…世界の果てにいたのが5年…か
「今すぐに返事ってわけにもいかないだろうからな。向こうも使える人材を欲しがっていてな良い返事を期待しているよ」
「分かった…考えとく」

 剣聖と別れた俺は騎士団本部を後にする。そして国軍の司令部にやってきて受付に話をすると数分で奥からシャウラがやってくる。
「君から相談なんて珍しいじゃないか」
「ああちょっとな」

 司令部の建物を二人で後にし、近くの飯屋に入る。
「俺、鴉にならないかって誘われた」

 シャウラは驚きの表情を浮かべ
「鴉って…騎士団内でも問題児とかが行かされるとこでしょ?」
「ああ」
「何か問題でも起こしたの?」
「いや…誘ったのは剣聖だ」
「え…」
「俺のために厳しい環境に身を置けって」
「そうか…で君はどうするつもりなの?」
「俺は行こうと思う」
「君ならそういうと思ったよ。今実戦で戦ってるのってこの国では鴉ぐらいだからね。君にとってはいいことかもしれないね」
 俺はコクリと頷く。

 シャウラが俺が頷くのをみて
「さあ食べよう。今日は僕が奢るよ君への餞別だ」
「おう!全部食ってやる!」
「僕の給料しってるでしょ…」
 そういって二人で笑い運ばれてきた料理を2人で平らげ、俺はシャウラと別れた。

 ――翌日

 剣聖に俺は鴉になることを伝える。
 1週間後にウィンタールに立つ便があるとのことでそれでウィンタールに発つこととなった。

 ――1週間後

 騎士団本部に3台の馬車が用意されている。食料品や武器防具が積まれたものが1台。あとの2台に分かれて20人ほどの人間がそれぞれ馬車に乗り込む。俺もその中の一人である。

 馬車に乗り込むと隣の愛想の良さそうなペラペラとよく喋る男が俺に話しかけてくる。
「君はどんなヘマをやらかしたんだい?」
「俺は志願した」
「えーーー!鴉に志願するなんてそんな物好きな奴もいるんだなー俺はアルクよろしく!」
「あんたなんで鴉になったんだ?」
「借金で首が回らなくなってなー護衛の貴族の金を盗んだ」
 俺は呆れた顔をしてアルクを見る。

 アルクが顎で人を指す。顎で指した先にいる人物。

 筋肉質な体つきでいかにも強そうといった感じの男で
「あいつは連続殺人の容疑がかかってる。結局証拠がなかったから捕まりはしなかったけど、王都にはおいておけないってことで鴉行きさ」
 話が聞こえたのか男がこちらを睨んだ。
「おー怖、怖。じゃあこれからよろしくな」

 そういって俺達は最北の地ウィンタールに旅立つことになった。




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