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第3章 鴉
第52話 鴉の女王
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王都からウインタールまで1週間程掛かる。俺達は道中お客さんで行くわけではない。資材を積んだ馬車を護衛しながらの旅になる。そのため、資材を積んだ馬車を挟む形で移動をする。
軽妙な語り口でアルクが俺に話しかけてくる。
「お前さんがラグウェルか、名前は聞いたことはあるわ」
学生時代から剣術が異常に強いと評判になっており、王都内でもある程度名前は知られているようであった
周囲にも聞こえるような声でアルクは話を続ける。
「最近、盗賊団の活動が頻繁になってるらしい…この馬車もひょっとしたら襲われるかもな」
「盗賊団…」
「そう、暁の縄張りを通るからな用心しとかないとな」
「そうですね」
王都を出てから1日程が経ち、山道を馬車はゆっくりと進んでいる。俺が乗っている馬車は先頭を走り、その後ろに資材を積んだ馬車が続いている。
馬車がその進行を止めた。
運転手が後ろにやってきて、
「岩で道が塞がれてます。どけるのを手伝ってください」
馬車から降りると、確かに大岩が馬車一台がやっと通れる幅の道を塞いでいる。切り立った崖と壁のようになった山肌の間を縫うように小道があり迂回路は無さそうな感じである。
俺たちは馬車からおりて岩を崖に落とすべく、押し始める。屈強な騎士団の男たちが20人はいる。道はすぐにでも通れるだろうと高をくくっていた。
ヒュン
風を切る音が聞こえた。俺の隣で岩を押していた奴の背中に矢が刺さり、血が滲んでいる。
まさか!!
後方を見ると矢を構えた複数の人間が見え、さらに矢が飛んでくる。
誰かが叫ぶ。
「敵襲!!敵襲!!」
剣を抜き、俺は飛んできた矢を叩き切る。
「おおおおおお」
雄叫びが聞こえ、十数人の毛皮を纏った男たちが剣や斧、槍などを構えて走ってきているのが見えた。
誰かが叫けぶ。
「盗賊団だ!暁だ!」
すると麻の外套で全身を覆った人間が俺よりも先に後方に駆け、その後をアルクとぶっきらぼうな何人も人を殺したと噂される男が続いた。
他の騎士団の連中は矢で怪我を負ったもの、盗賊団の姿をみて混乱しているものなどがおり、役に立ちそうにない。
俺も後方に駆け出だし、3人の横にならぶ。すると外套のを着た人物が外套を脱ぎ、剣を構える。
え?女?
その人物は平均的な女の人といったような背の高さで、真っ黒な長い髪を後ろでまとめポニーテールにし、端正な顔は恐ろしく冷酷に見えた。真っ黒な革の鎧を着ており、アルクたちはその人物を知っているようで話しかけている。
「来ましたね副長」
「やはりな…騎士団内に内通者がいると睨んでいたがその通りだったな」
すると副長と呼ばれた女が俺の方をチラリとみて
「お前の実力が噂通りか見させてもらおう」
先頭を走ってきたものが槍を女に向け突き刺そうとする。
女はその槍の柄を剣で叩ききり、槍を向けた奴の胸に剣を突き刺し抜く。
刺された盗賊は胸から血を吹き出しその場で倒れる。
アルクはナイフを両手に持ち。剣をもつ盗賊の一撃を左手のナイフで受け止めたあと、右にもつナイフで盗賊の首を切る。
ぶっきらぼうな男は岩のような大きな剣をもち、襲いかかってきた盗賊を頭から潰す。
俺もその3人に加わり、襲ってくる盗賊たちを斬り伏せる。
あっというまに死体の山が出来上がる。
十数人はいた盗賊たちは数人になり
「バケモンだ…バケモンがいる…」
そういって走って逃げ出した。
アルクが女に話しかける。
「どうします副長」
「追わなくてよい。あとは本部の仕事だ」
女が俺のところにやってくきて、特に表情も変えずに話始める。
「ふん、噂通りというわけか。私は鴉の副長リリカだ。お前は私の元で働いてもらうことになるだろう」
「はい」
ウィンタール防衛部隊、副長リリカ・グラム。鴉の女王とも呼ばれている人物だと聞いたことある。彼女は志願して鴉になった者で、男でさえ根を上げる過酷な環境で10年も鴉を続けていると言われている。
そのままリリカは団員達がいる岩の方にいき、一人の男の前に立ち一人の首を撥ね、剣を鞘に納めた。
他の団員はそれを見て蒼い顔をしている。
そしてそのままリリカは外套を着て馬車に戻る。
アルクが騎士団の連中がいるところに戻り手を叩く。
「負傷者の手当をするものと岩をどかすものに別れましょうか」
一人のおどおどとした青年が声を掛ける。
「す、すいません。何故あの人は殺されたんですか?」
アルクは頭を掻きながら
「あーあいつは俺たち鴉が目をつけてた内通者だよ」
どよどよと皆どよめている。
「あーごめんごめん。俺はウインタール防衛部隊所属のアルク。でこっちのぶっきらぼうな男は俺と同じ所属のバルジ。それでさっきの怖い人が副長な」
馬車から咳払いが聞こえてきてアルクは苦笑いをする。
「はっきりいって祖人はあの盗賊の連中よりも手強いからなみんな覚悟しておいてね」
アルクはそういって俺たちは作業に戻り、岩をどかし馬車は動き出した。
軽妙な語り口でアルクが俺に話しかけてくる。
「お前さんがラグウェルか、名前は聞いたことはあるわ」
学生時代から剣術が異常に強いと評判になっており、王都内でもある程度名前は知られているようであった
周囲にも聞こえるような声でアルクは話を続ける。
「最近、盗賊団の活動が頻繁になってるらしい…この馬車もひょっとしたら襲われるかもな」
「盗賊団…」
「そう、暁の縄張りを通るからな用心しとかないとな」
「そうですね」
王都を出てから1日程が経ち、山道を馬車はゆっくりと進んでいる。俺が乗っている馬車は先頭を走り、その後ろに資材を積んだ馬車が続いている。
馬車がその進行を止めた。
運転手が後ろにやってきて、
「岩で道が塞がれてます。どけるのを手伝ってください」
馬車から降りると、確かに大岩が馬車一台がやっと通れる幅の道を塞いでいる。切り立った崖と壁のようになった山肌の間を縫うように小道があり迂回路は無さそうな感じである。
俺たちは馬車からおりて岩を崖に落とすべく、押し始める。屈強な騎士団の男たちが20人はいる。道はすぐにでも通れるだろうと高をくくっていた。
ヒュン
風を切る音が聞こえた。俺の隣で岩を押していた奴の背中に矢が刺さり、血が滲んでいる。
まさか!!
後方を見ると矢を構えた複数の人間が見え、さらに矢が飛んでくる。
誰かが叫ぶ。
「敵襲!!敵襲!!」
剣を抜き、俺は飛んできた矢を叩き切る。
「おおおおおお」
雄叫びが聞こえ、十数人の毛皮を纏った男たちが剣や斧、槍などを構えて走ってきているのが見えた。
誰かが叫けぶ。
「盗賊団だ!暁だ!」
すると麻の外套で全身を覆った人間が俺よりも先に後方に駆け、その後をアルクとぶっきらぼうな何人も人を殺したと噂される男が続いた。
他の騎士団の連中は矢で怪我を負ったもの、盗賊団の姿をみて混乱しているものなどがおり、役に立ちそうにない。
俺も後方に駆け出だし、3人の横にならぶ。すると外套のを着た人物が外套を脱ぎ、剣を構える。
え?女?
その人物は平均的な女の人といったような背の高さで、真っ黒な長い髪を後ろでまとめポニーテールにし、端正な顔は恐ろしく冷酷に見えた。真っ黒な革の鎧を着ており、アルクたちはその人物を知っているようで話しかけている。
「来ましたね副長」
「やはりな…騎士団内に内通者がいると睨んでいたがその通りだったな」
すると副長と呼ばれた女が俺の方をチラリとみて
「お前の実力が噂通りか見させてもらおう」
先頭を走ってきたものが槍を女に向け突き刺そうとする。
女はその槍の柄を剣で叩ききり、槍を向けた奴の胸に剣を突き刺し抜く。
刺された盗賊は胸から血を吹き出しその場で倒れる。
アルクはナイフを両手に持ち。剣をもつ盗賊の一撃を左手のナイフで受け止めたあと、右にもつナイフで盗賊の首を切る。
ぶっきらぼうな男は岩のような大きな剣をもち、襲いかかってきた盗賊を頭から潰す。
俺もその3人に加わり、襲ってくる盗賊たちを斬り伏せる。
あっというまに死体の山が出来上がる。
十数人はいた盗賊たちは数人になり
「バケモンだ…バケモンがいる…」
そういって走って逃げ出した。
アルクが女に話しかける。
「どうします副長」
「追わなくてよい。あとは本部の仕事だ」
女が俺のところにやってくきて、特に表情も変えずに話始める。
「ふん、噂通りというわけか。私は鴉の副長リリカだ。お前は私の元で働いてもらうことになるだろう」
「はい」
ウィンタール防衛部隊、副長リリカ・グラム。鴉の女王とも呼ばれている人物だと聞いたことある。彼女は志願して鴉になった者で、男でさえ根を上げる過酷な環境で10年も鴉を続けていると言われている。
そのままリリカは団員達がいる岩の方にいき、一人の男の前に立ち一人の首を撥ね、剣を鞘に納めた。
他の団員はそれを見て蒼い顔をしている。
そしてそのままリリカは外套を着て馬車に戻る。
アルクが騎士団の連中がいるところに戻り手を叩く。
「負傷者の手当をするものと岩をどかすものに別れましょうか」
一人のおどおどとした青年が声を掛ける。
「す、すいません。何故あの人は殺されたんですか?」
アルクは頭を掻きながら
「あーあいつは俺たち鴉が目をつけてた内通者だよ」
どよどよと皆どよめている。
「あーごめんごめん。俺はウインタール防衛部隊所属のアルク。でこっちのぶっきらぼうな男は俺と同じ所属のバルジ。それでさっきの怖い人が副長な」
馬車から咳払いが聞こえてきてアルクは苦笑いをする。
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