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第3章 鴉
第53話 鴉の城
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盗賊の襲撃から5日程馬車に揺られ、馬車の外を覗くと周囲の山は紅く色づいており、吐く息は白くなっている。
アルクが話しかけてくる。
「ここまで来ると帰ってきたって感じがするよ」
気温が下がり始めると黒の毛皮が付いた外套をアルクやバルジ、副長のリリカも真っ黒な肩から毛皮の付いた外套を纏い防寒をしている。
「まあウィンタールにつけば、ここが夏に思えるぐらいだぞ」
「そんなに寒いんですか?」
「ああ、立ちションしてみろ。すぐに氷出すぞ」
「げ…」
「ま、それだけ寒いってことだ心しておけよ」
「アルクさんは長いんですか?」
「まあ5年ぐらいかな」
「長いんですね」
「俺が鴉になった本当の理由は、あの人だよ」
アルクはそう言って顔をリリカの方に向ける。
「あの人に救われた…それが俺が鴉になった理由さ」
「どういう意味です?」
「王都でこそ泥をしていた俺をあの人が拾って鴉にしてくれた」
「アルクさん騎士団所属じゃないんですか?」
「ああ、俺は直接鴉になった」
「あの人が本部に掛け合ってくれてな」
ちらりとリリカの方を見た俺は関心したような声を出す。
「へぇぇああみえて優しいんですね。副長」
「優しい?いやあの人は自分の目標にしか関心はないさ」
「でも救われたって」
「俺にとっては救われたっていうだけで、副長にしてみたら目標を達成するための駒ってところじゃないかな」
「副長の目標って」
リリカが冷ややかな視線を送る。アルクもそれを感じたのか
「ま、新人に話す話じゃないな」
そういって言葉を濁した。
するとリリカがこちらにやってきて
「私の目標が知りたいか、期待の新人」
俺はリリカの顔を見て頷く。
「私の目標いや命題は祖人をこの世から一匹残らず駆逐することだ」
その時のリリカの表情はひどく冷淡で、俺は背中に一筋の冷や汗が流れるのを感じた。
リリカはアルクの方を向いて
「お前はペラペラと喋りすぎる。私がお前を拾ったのはただの気の迷いだ」
アルクはうへぇというような表情をして、リリカは元の席に戻った。
外を見るとチラチラと白い物が舞い始めていた。
馬車に揺られながら俺はその寒さで目を覚ます。外を覗くと白銀の世界が広がり、周囲の山々も真っ白で空はどんよりと曇っている。
馬車が止まり、荷馬車からアルクとバルジが荷物を下ろす。その中身を俺たちに配る。その中身は鴉の制服…真っ黒な革の鎧に毛皮の着いた外套。俺たち新人は支給された鴉の服に身を包む。
其の姿を見たアルクが俺に話しかける。
「おっ鴉っぽくなったな」
「身が引き締まりますね。この服を着ると」
「そうだろ。そうだろう。もうすぐ着くからな。新人は歓迎されるぞ」
2時間ほど真っ白な中を馬車が走りそして止まった。
俺が馬車から降りる。その目の前に広がる景色に俺たちは言葉を失う。
大きな壁が目の前にそびえ立ち、その頂上は雲がかかっているようにも見える。その壁の麓に岩を積み上げたられて作られた小さな城のような建物がある。そしてその城のような建物から壁の頂上に向けて掛けられた長いはしごや木を組んで作られた昇降機のようなものがある。
俺たちがその景色をみて絶句しているとアルクが自慢げに話しかけてくる
「すごいだろ?偉大なる壁。そして祖人を封印している唯一の防壁」
「これを作ったのですか?」
「こんなもの人間の手で作れるはずがなかろう」
リリカが冷ややかに話しかけてくる。
「これは過去に祖人が作ったものらしい。それを私たちが利用している」
「祖人がなぜ…」
「今度あいつらに聞いみるがいいさ。言葉は通じんがな」
城門が開き、俺たちは城に入っていく。ジロジロと同じ服を着た連中に見られる。リリカはそのまま奥へ入っていく。お俺たち新人はその場で待機を命じられ、城の中庭のようなところで待機している。
城にいた連中は忙しそうにバタバタと駆け回っている。すると石垣の上にリリカと真っ白な髭の体格のいい男が一緒にでてくる。
そして髭の男が口を開く。
「手を止めよ!」
その男の合図でバタバタと走り回っていた男たちはピタリと動きを止め、その男のほうに胸に手を当てて体を向ける。
髭の男が再び口を開く。
「19名の新人が鴉に入ることになった!新人は役に立たんが、みなで鍛えていくぞ!」
髭の男がそういうと城の男たちが手を上げ叫ぶ。
「おう!!!」
その声はすぐ後ろにある壁を震わせるような勢いのあるものであった。
誰かが叫んだ
「やるぞ!!」
その声を合図に城の男たちが急に俺たち新人に素手で襲い掛かってくる。一人の気弱そうな男が捕まり、身ぐるみを剥がされ、素っ裸の状態で雪が降り積もる城の外へ担ぎだされていく。そしてまた一人、また一人と捕まり担ぎ出される。
髭の男は笑いながらそれを見ており、リリカはその様子と呆れるような顔をしながら見て城の中に戻っていく。
アルクとバルジは身ぐるみを剥がす方に回っており、新人は次々とその歯牙にかかっている。
まずい…冷静に見ている場合じゃない…俺はどうすればいい…逃げよう…必死になって逃げる。しかし地の利は向こうにある。あっという間にアルクとバルジコンビにお詰められた。
「新人恒例の行事でね。お前もやらないと認められないからな」
「…」
ええいもうどうにでもなれ!!郷に入れば郷に従えだ!!
俺はなすがままにされ、服を脱がされ素っ裸になり担ぎ出され雪の中に突っ込まされた。
アルクが話しかけてくる。
「ここまで来ると帰ってきたって感じがするよ」
気温が下がり始めると黒の毛皮が付いた外套をアルクやバルジ、副長のリリカも真っ黒な肩から毛皮の付いた外套を纏い防寒をしている。
「まあウィンタールにつけば、ここが夏に思えるぐらいだぞ」
「そんなに寒いんですか?」
「ああ、立ちションしてみろ。すぐに氷出すぞ」
「げ…」
「ま、それだけ寒いってことだ心しておけよ」
「アルクさんは長いんですか?」
「まあ5年ぐらいかな」
「長いんですね」
「俺が鴉になった本当の理由は、あの人だよ」
アルクはそう言って顔をリリカの方に向ける。
「あの人に救われた…それが俺が鴉になった理由さ」
「どういう意味です?」
「王都でこそ泥をしていた俺をあの人が拾って鴉にしてくれた」
「アルクさん騎士団所属じゃないんですか?」
「ああ、俺は直接鴉になった」
「あの人が本部に掛け合ってくれてな」
ちらりとリリカの方を見た俺は関心したような声を出す。
「へぇぇああみえて優しいんですね。副長」
「優しい?いやあの人は自分の目標にしか関心はないさ」
「でも救われたって」
「俺にとっては救われたっていうだけで、副長にしてみたら目標を達成するための駒ってところじゃないかな」
「副長の目標って」
リリカが冷ややかな視線を送る。アルクもそれを感じたのか
「ま、新人に話す話じゃないな」
そういって言葉を濁した。
するとリリカがこちらにやってきて
「私の目標が知りたいか、期待の新人」
俺はリリカの顔を見て頷く。
「私の目標いや命題は祖人をこの世から一匹残らず駆逐することだ」
その時のリリカの表情はひどく冷淡で、俺は背中に一筋の冷や汗が流れるのを感じた。
リリカはアルクの方を向いて
「お前はペラペラと喋りすぎる。私がお前を拾ったのはただの気の迷いだ」
アルクはうへぇというような表情をして、リリカは元の席に戻った。
外を見るとチラチラと白い物が舞い始めていた。
馬車に揺られながら俺はその寒さで目を覚ます。外を覗くと白銀の世界が広がり、周囲の山々も真っ白で空はどんよりと曇っている。
馬車が止まり、荷馬車からアルクとバルジが荷物を下ろす。その中身を俺たちに配る。その中身は鴉の制服…真っ黒な革の鎧に毛皮の着いた外套。俺たち新人は支給された鴉の服に身を包む。
其の姿を見たアルクが俺に話しかける。
「おっ鴉っぽくなったな」
「身が引き締まりますね。この服を着ると」
「そうだろ。そうだろう。もうすぐ着くからな。新人は歓迎されるぞ」
2時間ほど真っ白な中を馬車が走りそして止まった。
俺が馬車から降りる。その目の前に広がる景色に俺たちは言葉を失う。
大きな壁が目の前にそびえ立ち、その頂上は雲がかかっているようにも見える。その壁の麓に岩を積み上げたられて作られた小さな城のような建物がある。そしてその城のような建物から壁の頂上に向けて掛けられた長いはしごや木を組んで作られた昇降機のようなものがある。
俺たちがその景色をみて絶句しているとアルクが自慢げに話しかけてくる
「すごいだろ?偉大なる壁。そして祖人を封印している唯一の防壁」
「これを作ったのですか?」
「こんなもの人間の手で作れるはずがなかろう」
リリカが冷ややかに話しかけてくる。
「これは過去に祖人が作ったものらしい。それを私たちが利用している」
「祖人がなぜ…」
「今度あいつらに聞いみるがいいさ。言葉は通じんがな」
城門が開き、俺たちは城に入っていく。ジロジロと同じ服を着た連中に見られる。リリカはそのまま奥へ入っていく。お俺たち新人はその場で待機を命じられ、城の中庭のようなところで待機している。
城にいた連中は忙しそうにバタバタと駆け回っている。すると石垣の上にリリカと真っ白な髭の体格のいい男が一緒にでてくる。
そして髭の男が口を開く。
「手を止めよ!」
その男の合図でバタバタと走り回っていた男たちはピタリと動きを止め、その男のほうに胸に手を当てて体を向ける。
髭の男が再び口を開く。
「19名の新人が鴉に入ることになった!新人は役に立たんが、みなで鍛えていくぞ!」
髭の男がそういうと城の男たちが手を上げ叫ぶ。
「おう!!!」
その声はすぐ後ろにある壁を震わせるような勢いのあるものであった。
誰かが叫んだ
「やるぞ!!」
その声を合図に城の男たちが急に俺たち新人に素手で襲い掛かってくる。一人の気弱そうな男が捕まり、身ぐるみを剥がされ、素っ裸の状態で雪が降り積もる城の外へ担ぎだされていく。そしてまた一人、また一人と捕まり担ぎ出される。
髭の男は笑いながらそれを見ており、リリカはその様子と呆れるような顔をしながら見て城の中に戻っていく。
アルクとバルジは身ぐるみを剥がす方に回っており、新人は次々とその歯牙にかかっている。
まずい…冷静に見ている場合じゃない…俺はどうすればいい…逃げよう…必死になって逃げる。しかし地の利は向こうにある。あっという間にアルクとバルジコンビにお詰められた。
「新人恒例の行事でね。お前もやらないと認められないからな」
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