21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

ぽいづん

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第4章 21代目の剣聖

第81話 空気の読めない先輩

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「はぁはぁ……だめだ無理無理」
 騎士団の道場で俺と対峙していた、先輩騎士のルーファウスが前屈みになり息を切らしながら、俺に話しかける。
「もう練習止めね? 俺じゃ相手になんねーわ」
 ルーファウスはもう本当に勘弁をしてくれというような表情をみせる。

「……分かりました」
 確かにこの人の言う通り、実力差があり過ぎて俺の練習にはならないし、殺すか殺されるかの中に身を置いていたせいか、物足りないさすら感じてしまう。

 祖人との戦いのあと騎士団本部に配属になり、3ヶ月が経つ。

 すると道場に聞いたことのある声が響く。
「おーーやってるなー」
 剣聖レグルスが道場にやって来たのだ。たまに練習をしているとやってきて、騎士に稽古をつけたりしている。

 ルーファウスはしめた! というような顔をしてやってきたレグルスにすかさず話しかける。
「剣聖様! こいつ俺じゃ訓練にならねーんで剣聖様がお相手してもらえませんかね?」


 え? 俺がレグルスと? 一瞬胸がドキッとする感触を感じる。
 なんだこの感じ……

「うーん……ラグウェルが良いならお相手願おうかな」
「ラグウェルは大丈夫だよな?」

 ルーファウスはそう俺に話しかけると、俺が返事もしていないのにレグルスに木剣を渡し、俺に耳打ちをする。
「俺とやっても退屈だろ? お膳立てはしてやったぜ感謝しな」
 そう言って俺の肩ポンポンと叩いて道場の隅に立つ。

 レグルスは屈伸したり、剣を素振りしたりしている。

 この男やる気だ……

 今までレグルスと練習とはいえ立ち合ったことはない。……あいつが断罪の騎士をやってた時に一度だけ。

 何故か俺もレグルスも意識をしているのか、道場であった時はお互いに立ち合わないように振る舞い、周りの騎士達もその空気を読んでか、俺とレグルスが立ち会うことがないようにしていたと思う。

今日のこの時間までは……ただ一人の空気の読めない先輩騎士が現れるまでは……

 お互いが意識をし立ち合ってこなかった二人が立ち会うのだ……道場で練習をしていた他の騎士達も手を止めてこちらを見始める。

「剣聖とラグウェルがついに立ち合うのか……こいつぁ目に焼き付けとかないとな……騎士団最強といっても過言ではないラグウェル、そして最強の称号をもつ剣聖……」
 騎士が小声で話しているのが聞こえてくる。

 俺はフーっと一息つき、剣聖と対峙する。
「準備はいいですか?」
 体を動かしている剣聖に話しかける。

「ああ、これぐらいで大丈夫だろ」
 レグルスはそう言うと、水平に木剣を構え、剣先が俺の方を向く。

 俺も水平になった剣先をレグルスの方に向ける。

 向けた瞬間、俺は何かに圧倒される。そしてレグルスの体が倍のように大きくなったようにすら感じる。
 これは殺気! レグルスは殺気を俺にぶつけて来ている。死線をくぐり抜けるような経験が無ければ、この殺気に圧倒されていたかもしれない。しかし俺は1年前の俺じゃない。

 俺も負けじとレグルスを睨みつけ、殺気をぶつける。

 レグルスが話しかけてくる。
「ふふ……なるほどないい顔をしている。鴉になった経験が役に立ったな」
「ああ、お前に言われて行ってよかったよ」

 俺が話し終えた瞬間に、レグルスの奴は間合いを詰めてくる。
 その速さは、俺が今まで戦ってきた相手の中でも断トツの速さだ。

 その剣先は確実に俺の喉を捕らえた突きを繰り出してくる。
 剣で弾く余裕はない。体を捻り、身を捩る。木剣の剣先の笹暮が見えるほどの距離で俺の顔をかすめていく。

 その一撃の瞬間が終わり、間合いを取る。
 するとレグルスが呟く。

「俺の攻撃をかわししつつ狙ってくるとはな。さすがだ」
「あんたもさすが剣聖……」

 レグルスが突きを放ったその瞬間、俺は体を捻り身を捩りながら俺はレグルスの胴を水平に薙いだ。レグルスは俺のカウンターに対し両手で持っていた剣を左手のみ放し、身を捩りながらかわしなおかつ、寸分の狂いもない突きを放った。しかもその一撃の剣先にブレはなし。

 今までこんなことができる奴は見たことがない。

 そうか……俺の前に立っている男は本当に剣聖と呼ばれている男なんだ。

 改めてその強さその技術に脱帽する。

「剣聖様お客様です!」
 道場に声が響く。

 ピンと張り詰めていた空気が一気に弛緩する。

 レグルスは肩をすくめ俺の顔を見る。
「すまんな。用事が入った。また今度手合わせ願おうか」
 俺はコクリと頷く。

 そして道場の出入り口の方を見ると案内役の若い騎士のとなりに特徴的な顔に傷のある年老いた男の姿がある。その年老いた男は俺の姿をみて
「久しぶりだな小僧」
 そう俺に話しかけた。





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