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第4章 21代目の剣聖
第82話 再会
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「え?なんで?」
呆気に取られた俺が口から出た言葉はこれだった。
「おい、おい久々の再開だってのに」
アルファルドは頭を掻きながら照れくさそうに話す。
「だってあんたはこの国を……」
俺がそう言おうとした瞬間、すかさずレグルスが口を挟む。
「私が彼を招いたんです。久しぶりの再開で積もる話もあるでしょうが、まずは私の部屋へ」
レグルスがアルファルドのいる出口の方へ向かう。
「ああ、そうだな。小僧また後でな」
アルファルドは俺に声を掛け、レグルスと一緒に道場を後にした。
俺はその姿を見送りながら頭の中に?が浮かぶ。
なぜレグルスがアルファルドを招く必要があったんだ? 確か、アルファルドの弟子が国王の娘と駆け落ちして殺され、アルファルドはこの国を捨てたはず。そして剣聖の座は空位となってレグルスがその座についた。
アルファルドはレグルスに招かれたぐらいで、自分が捨てた国にやってくるような奴じゃない。
「おい、何ぼーっとしてんの?」
空気の読めない先輩に声を掛けられハッとする。
「さっきの人お前の知り合い? なんか子供の頃に見た気がするんだけど。誰だっけ?」
「古い知り合いですよ。まあよくいる顔ですから他人の空似ですよ」
「ふーん。練習はお開きにしようぜ。お前もなんか練習どころじゃなそうだしな」
先輩は少しだけ弾むような声でそう言った。
――その夜
「こ、光栄です!! 十九代剣聖にお目にかかれるなんて!」
街の飲み屋に招かれた俺はシャウラを連れて行くことにした。一応シャウラにはアルファルドのことは伝えておいたので、彼はガチガチに緊張し、姿をみかけるなりそう言ったのだ。
「もう剣聖でもなんでもないただの爺さんだからそんなに謙遜しなさんな」
「い、いえ」
アルファルドの隣には騎士学校校長のでアルファルド親友でもあるムルジムも座っており空いている席を指し声をかける。
「まあ座ってくれ」
「はい!」
俺とシャウラはその席に座る。
酒やら料理やらが運ばれてきてそれぞれが料理や酒を口にしながら、話に花を咲かす。
俺の学生時代の話や鴉になったときのことなど、シャウラが身振り手振りを交えながら興奮気味に話をしていた。
俺が席を立ちトイレに向かうとアルファルドも同じタイミングで立ち上がりトイレに向かう。
「お前も色々あったんだな」
「この国に来て、無いほうが珍しいだろ?」
「そりゃそうだな」
用を足し、席に戻る。
「すいません、明日早いので僕はこの辺で」
シャウラはそう言って席を立つと
「そうだそうだ私も明日があるからな。歳のせいか深酒すると残ってな」
ムルジムもそう行って席を立った。
お見合いをしている二人かよ……二人で気を利かせたのか、俺とアルファルド二人になってしまった。昔は二人で世界の果てを旅してたのにこう改まって二人にされると妙に照れくさい。
恐らく、向こうも同じような気持ちなんだろう。お互いが声を掛けるタイミングを図っているような感じだ。
「…………」
沈黙に耐えきれなくなり、俺から話しかける。
「おい、どこに泊まるんだ?」
「レグルスが手配してくれた家がある」
「ふーん……いつまでいるんだ?」
「なんだ? 長く居ちゃまずいのか? ん?」
顔を崩しアルファルドは俺をからかうような顔でそう言った。
「そう云うわけじゃないけど」
少し返答に困りながら答えると彼は真剣な表情でこう告げた。
「用事が終われば帰るから安心しろ」
「用事ってレグルスに呼ばれたやつか?」
「ああ、それだ」
「それはいつ頃終わるんだ?」
アルファルドは少し考える素振りを見せる。
「お前次第」
アルファルドがレグルスの頼みを聞いて、もう二度とこないと言っていたこの国にやってきたということ俺が関係しているのではと薄々感じていた。
少しの沈黙が流れ、今度はアルファルドから話しかけてくる。
「ちょっと外に出よう」
「ああ」
飲み屋から外にでると大きな満月の光が夜道を照らしている。
「いい月だな。少し歩くか」
アルファルドはそう云うと歩き始める。夜風に当たりながら街を二人でウロウロする。
「この辺も大分変わったなぁ」
「あんたが出ていって二十年ぐらいだろ?」
「まあ、そんなもんだ。この角を曲がると俺が住んでた家が……」
角を曲がるとこじんまりした家が現れる。窓の奥から灯りが漏れ誰かが住んでいる様子。
「おお、あったあった。って誰か住んでんな」
「そりゃそうだ、迷惑になるから行こう」
少し歩くと広場のような場所にでて座り込み少し休憩を取る。するとアルファルドが話しかけてくる。
「お前、この国は好きか?」
「騎士の誓いを立てた俺に聞くか?」
「成り行きで騎士になったんだろ?」
俺は苦笑いをしながら答える。
「まあそうだけど」
「俺がこの国に来た理由……気になるだろ?」
「気にならないと言ったら嘘になる」
アルファルドはどこか寂しそうで陰のある表情を見せ、意を決したように話し出す。
「……俺はレグルスに頼まれた。お前との剣聖を賭けた勝負の立ち会いを」
「剣聖を賭けた……」
「そうだ。お前が勝てば剣聖になるということだ」
「……」
「お前も知ってると思うが、剣聖はこの国を代表する剣士ということ。それはつまりこの国を背負っていると言っても過言ではない。お前にとってこの国は背負うに値する国か?」
「……」
「この国の腐った所を沢山見てきただろ? そして俺がこの国を捨てた理由も知っている。それでもお前は剣聖を目指すか?」
「……」
「俺と一緒に帰るか? 世界の果てへ」
「……だったら……だったらなんで俺をこの国に導いたんだ!」
「それは……」
「あんたは俺に剣士としての夢を託したんじゃないのか? 心の底にくすぶっていた剣士の夢を!」
ムクッとアルファルドは立ち上がり、俺に背を向けてこう言った。
「確かにお前の言う通り、俺は弟子のお前がどこまで強くなれるのか楽しみだったんだろうな。しかし今はそれを……」
そして途中で言葉を濁した後、右手を挙げ
「まあボチボチ帰るわ。年寄りに夜風は堪えるわ」
そういって月明かりに照らされた道を一人歩いて帰って行った。
呆気に取られた俺が口から出た言葉はこれだった。
「おい、おい久々の再開だってのに」
アルファルドは頭を掻きながら照れくさそうに話す。
「だってあんたはこの国を……」
俺がそう言おうとした瞬間、すかさずレグルスが口を挟む。
「私が彼を招いたんです。久しぶりの再開で積もる話もあるでしょうが、まずは私の部屋へ」
レグルスがアルファルドのいる出口の方へ向かう。
「ああ、そうだな。小僧また後でな」
アルファルドは俺に声を掛け、レグルスと一緒に道場を後にした。
俺はその姿を見送りながら頭の中に?が浮かぶ。
なぜレグルスがアルファルドを招く必要があったんだ? 確か、アルファルドの弟子が国王の娘と駆け落ちして殺され、アルファルドはこの国を捨てたはず。そして剣聖の座は空位となってレグルスがその座についた。
アルファルドはレグルスに招かれたぐらいで、自分が捨てた国にやってくるような奴じゃない。
「おい、何ぼーっとしてんの?」
空気の読めない先輩に声を掛けられハッとする。
「さっきの人お前の知り合い? なんか子供の頃に見た気がするんだけど。誰だっけ?」
「古い知り合いですよ。まあよくいる顔ですから他人の空似ですよ」
「ふーん。練習はお開きにしようぜ。お前もなんか練習どころじゃなそうだしな」
先輩は少しだけ弾むような声でそう言った。
――その夜
「こ、光栄です!! 十九代剣聖にお目にかかれるなんて!」
街の飲み屋に招かれた俺はシャウラを連れて行くことにした。一応シャウラにはアルファルドのことは伝えておいたので、彼はガチガチに緊張し、姿をみかけるなりそう言ったのだ。
「もう剣聖でもなんでもないただの爺さんだからそんなに謙遜しなさんな」
「い、いえ」
アルファルドの隣には騎士学校校長のでアルファルド親友でもあるムルジムも座っており空いている席を指し声をかける。
「まあ座ってくれ」
「はい!」
俺とシャウラはその席に座る。
酒やら料理やらが運ばれてきてそれぞれが料理や酒を口にしながら、話に花を咲かす。
俺の学生時代の話や鴉になったときのことなど、シャウラが身振り手振りを交えながら興奮気味に話をしていた。
俺が席を立ちトイレに向かうとアルファルドも同じタイミングで立ち上がりトイレに向かう。
「お前も色々あったんだな」
「この国に来て、無いほうが珍しいだろ?」
「そりゃそうだな」
用を足し、席に戻る。
「すいません、明日早いので僕はこの辺で」
シャウラはそう言って席を立つと
「そうだそうだ私も明日があるからな。歳のせいか深酒すると残ってな」
ムルジムもそう行って席を立った。
お見合いをしている二人かよ……二人で気を利かせたのか、俺とアルファルド二人になってしまった。昔は二人で世界の果てを旅してたのにこう改まって二人にされると妙に照れくさい。
恐らく、向こうも同じような気持ちなんだろう。お互いが声を掛けるタイミングを図っているような感じだ。
「…………」
沈黙に耐えきれなくなり、俺から話しかける。
「おい、どこに泊まるんだ?」
「レグルスが手配してくれた家がある」
「ふーん……いつまでいるんだ?」
「なんだ? 長く居ちゃまずいのか? ん?」
顔を崩しアルファルドは俺をからかうような顔でそう言った。
「そう云うわけじゃないけど」
少し返答に困りながら答えると彼は真剣な表情でこう告げた。
「用事が終われば帰るから安心しろ」
「用事ってレグルスに呼ばれたやつか?」
「ああ、それだ」
「それはいつ頃終わるんだ?」
アルファルドは少し考える素振りを見せる。
「お前次第」
アルファルドがレグルスの頼みを聞いて、もう二度とこないと言っていたこの国にやってきたということ俺が関係しているのではと薄々感じていた。
少しの沈黙が流れ、今度はアルファルドから話しかけてくる。
「ちょっと外に出よう」
「ああ」
飲み屋から外にでると大きな満月の光が夜道を照らしている。
「いい月だな。少し歩くか」
アルファルドはそう云うと歩き始める。夜風に当たりながら街を二人でウロウロする。
「この辺も大分変わったなぁ」
「あんたが出ていって二十年ぐらいだろ?」
「まあ、そんなもんだ。この角を曲がると俺が住んでた家が……」
角を曲がるとこじんまりした家が現れる。窓の奥から灯りが漏れ誰かが住んでいる様子。
「おお、あったあった。って誰か住んでんな」
「そりゃそうだ、迷惑になるから行こう」
少し歩くと広場のような場所にでて座り込み少し休憩を取る。するとアルファルドが話しかけてくる。
「お前、この国は好きか?」
「騎士の誓いを立てた俺に聞くか?」
「成り行きで騎士になったんだろ?」
俺は苦笑いをしながら答える。
「まあそうだけど」
「俺がこの国に来た理由……気になるだろ?」
「気にならないと言ったら嘘になる」
アルファルドはどこか寂しそうで陰のある表情を見せ、意を決したように話し出す。
「……俺はレグルスに頼まれた。お前との剣聖を賭けた勝負の立ち会いを」
「剣聖を賭けた……」
「そうだ。お前が勝てば剣聖になるということだ」
「……」
「お前も知ってると思うが、剣聖はこの国を代表する剣士ということ。それはつまりこの国を背負っていると言っても過言ではない。お前にとってこの国は背負うに値する国か?」
「……」
「この国の腐った所を沢山見てきただろ? そして俺がこの国を捨てた理由も知っている。それでもお前は剣聖を目指すか?」
「……」
「俺と一緒に帰るか? 世界の果てへ」
「……だったら……だったらなんで俺をこの国に導いたんだ!」
「それは……」
「あんたは俺に剣士としての夢を託したんじゃないのか? 心の底にくすぶっていた剣士の夢を!」
ムクッとアルファルドは立ち上がり、俺に背を向けてこう言った。
「確かにお前の言う通り、俺は弟子のお前がどこまで強くなれるのか楽しみだったんだろうな。しかし今はそれを……」
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そういって月明かりに照らされた道を一人歩いて帰って行った。
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