デバフの王〜スキルガチャでハズレスキル【感染】を手に入れたのでこれから無双したいと思います。〜

ぽいづん

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初心者編

第11話 ユニークモンスターは麻痺で屠れ

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 ――1週間後
 ユーリさんやタケシに手伝ってもらいアバターレベル15、ジョブレベル10を達成した。


 アバターレベル15になると、ソフィアの街の近辺から出ることができるようになり、転移魔法を使えるようになる。

 この世界はソフィアの街を中心に、北のウィンタール地方、東のイース地方、西のウェスラー地方、南のサウストン地方と5つの地域に分かれている。

 ダンジョンは北の万年雪に閉ざされた世界ウィンタールにある、『死者の迷宮』と言われる地である。

 レベル15になるということは世界が広がるということ、そしてそれは初心者からの卒業を意味している。

 俺はこのダンジョン攻略をタケシとユーリさんの手を借りて行こうと思っていたが、二人共ハイレベルのダンジョン攻略をしており、時間が合わない事が多い。

 2人とも既に攻略を終えているダンジョンでその二人に頼ってるうちは初心者なんじゃないか? という思いもあり、パーティ募集掲示板を利用して同じ進捗の仲間と一緒に攻略をしようと決めた。

 ジョブレベル10になると剣士はタンクスタンスというスキルを覚える。これは攻撃時のヘイトが1.5倍になり被ダメージが1/2となるものである。その代わり与ダメージが1/2になってしまうのだが。

 タケシの話では、感染のスキルを活かすにはタンクの方が良いんじゃないか? と言われた。

 モンスターによっては痛いダメージ与えつつをデバフを付与するものもいるらしい。その攻撃をくらうとDPSでは耐えられないし、DPSなのにモンスターのデバフ攻撃をわざわざ食らいにいくのはマズイとも言われた。

 このスキル『感染』自体マイナーなスキルだし、その効果も分かりづらい。説明しても懐疑的な人もいるだろうと、そしてタンクならミスってデバフ攻撃を食らっても、優しく『ドンマイ』と声を掛けてくれるが、DPSがデバフ攻撃を食らうと『何やってんだよ!! 動き理解しろ』とヒーラーから怒れるよと言われた。

 まあタンクとかDPSにこだわりはないからタンクでやっていこうと思う。

 いつものようにログインをし、パーティ募集文を書こうとしているとき、ピロピロと電子音が頭の中で鳴る。

 ハリーボルダーからTELと表示される。
「タケシ、どうした?」
「でたよ! Sラン。一緒に行ってみる?」

 今日、学校でタケシからそろそろSランクのユニークモンスターのポップ時間が近づいてるという話があった。
 当然俺がどうのこうのできるレベルではないのだが、見てるだけでも面白いぞ。と言われじゃあ出たら呼んでくれよと話はしていた。

 ユニークモンスターとはアルターのフィールドに湧くモンスターなのだが、特に強いモンスターのことを指す。BからSまでランク付けされているのだが、Sランクのユニークモンスターは湧くタイミングが1週間前後と長い、そして破格の強さを誇っており、数百人のカンストプレイヤーが束になってもなかなか倒せない相手らしい、もし討伐が成功できれば、特レアな素材をゲットできる。

 Sランユニークは一種のお祭りだとタケシが言っていた。

 銀髪のハイエルフのタケシが目の前に現れ『ハリーボルダーからパーティに誘われました。参加しますか?』と表示されており、YESを選択する。

「場所はウィンタールだから雑魚もお前のレベルでなんとかなる。さあ行くぞ」

 俺は頷くと体が宙に浮く、視界が暗転し開けると目に飛び込んでくるのは雪が降り積もった石や岩を積み上げて作られた砦のような建物。

 そこは強そうな鎧を着た人や見たこともないごっつい剣を持った人などでごった返している。

「えっとクランのメンバーはどこかなー」
 タケシはキョロキョロと周囲を見渡し、6人ほどで固まっている人達の元へ向かい、俺を手招きし話しかける。
「俺が入ってるクランのメンバーだ」
「エイジですよろしくお願いします」

「俺のリアフレだ。スルト見たいっていうから連れてきた」

 様々な種族だがみな一様に如何にも主人公というような強そうな格好をしている。この装備がダンジョン産の装備なんだろう、かっこいい。

「よろしくー」
「よろしくねぇ」
 みんなが口々に口を開き挨拶をする。全員が言い終えるとタケシが口を開く。

「それじゃ早速いきますか」
 そしてみんな何やら馬に羽の生えた生き物に飛び乗る。

「あーそっかエイジは乗り物まだだったよな。俺のに乗るか」
 そう言われタケシが跨る金色に輝く鳥馬に乗る。

 タケシがメンバーの一人に話しかける
「で? どこに湧いたんだっけ?」
「壁の向こう」
「おっけい」

 砦を出ると続々と他のプレイヤーも鳥馬に乗り一斉に同じ方向に向かっている。

 5分ほど乗っていると10階建てのマンションほどありそうな壁が現れる。
「あれが北壁。あの向こうにスルトがいる」
 タケシから説明を受け、コクリと頷く。

 北壁の門を通過して行くと、向こうに真っ赤に燃える炎のに包まれた巨人の姿がみえる。
「あれがスルト?」
「ああ、まだ一回も倒せてないSランモンスター」
「へぇぇ」
「いいとこまでは行くんだけどなぁ。最後のやつがなけりゃなぁ……」

 さっきの北壁もデカかったがスルトの大きさはその北壁の倍はありそう。怪獣ってのがリアルにいるならあれぐらいのサイズなんだろうと眺める。

「じゃあ、エイジはこっから見とけ」
 タケシに指示され俺は鳥馬から降りタケシを見送る。タケシ達はスルトの方に向かっていった。

タケシの姿は他のプレイヤーに紛れて見えなくなる。

 スルトは右手を振り上げ地面に振り下ろす。こっからスルトまでは200メートルは離れているのだがその衝撃波はここまで伝わってくるほど。

 スルトに殴られたプレイヤー数十名が俺が見ているここまで吹き飛ばされてきている。桁違いの力にその強さ。

 しかしプレイヤー達も負けていない。続々と集まり千人以上がスルトに立ち向かう光景は圧巻だった。本当にお祭りというに相応しい。

 そして俺は一人のプレイヤーに目が行く。真っ白な雪の中、真っ白な鎧に真っ白な盾。スルトを相手に立ち向かうパラディン。

 恐らくスルトのタゲは彼が取っているのだろう。200メートル離れていても、彼の動きは見事でスルトの攻撃を見事にかわしたり受けたりととにかく上手い。

 まさにタンクのお手本。そんな彼の後ろにいる真っ赤な髪をポニーテールにした剣士……ユーリさんだ。

 彼女のグラディエーターの動きは初めてみたが、速くて上手い。そして真っ白なタンクの人と上手に連携を取りながら戦っている。

 そんな戦いに目を奪われていると、体が急に動かなくなり、視界に麻痺!と表示される。足元に目をやると雪に紛れたサソリのような小さな生き物が俺の足を刺している。

 そして電気のようなアイコンに120と表示されている。

 マヒサソリ……ソフィア周囲にもいる雑魚モンスターなのだが、麻痺をさせてくるので非常に厄介。

 視界に突然こんな文字が表示される『ラグナレクまで60秒』

 タケシの声が脳に響く。パーティチャットと呼ばれるやつでパーティに参加すると1対1で話をすることができるというものだ。

「やばい! エイジ逃げろ」
「なんで?」
「あと60秒で周囲500メートルへの即死攻撃」
「まじか……」
「一人で逃げられるだろ?」
「すまん。麻痺ってる」
「……え?」
「マヒサソリが足元にいた」

 麻痺ってても口が動くのはありがたいな

「……どうせ死ぬなら試してもみてもいいかもな……」
 タケシがそう呟く。

「お前の感染の発動距離は10メートルだっけ?」
「ああ。でもタップできないよ。麻痺ってるから」
「俺に考えがある」

 そう言うと20秒ほどでタケシが目の前に現れた。タケシは俺をお姫様抱っこをして走り出す。

 ちょっと恥ずかしい……

 走りながらタケシが話しかけてくる。
「手は俺が動かす。お前は視線を合わせろ」
「なるほど……それならイケるかも」

「みんな! 諦めずに戦え!! 勝てる絶対に勝てるぞ!!!」
 ユーリさんの声で檄が飛んでいる。

 しかしその檄も虚しくこのカウントダウンが始まって大半の人達が逃げ出し始めている。やはりみんなデスペナが嫌なのだ。

 スルトの足元まで辿り着くと、タケシが俺を地面に座らせ俺の右手を持ち上げる。

 ラグナレク発動のカウントダウンは残り20秒ほど。

 目を動かしSPスキル発動に指を合わせる。

『スルトに感染を使いますか? YES/NO』と表示される。

 カウントダウンは残り10秒……9……8……7……

 なんとか目を動かしYESに持っていく。

 スルトの体は赤く輝き出す。

 3……2……1……

 突然スルトの体は硬直したように固まり、カウントダウンは残り1秒で止まる。

「あれ? ラグナレクが発動しない?」
「何が起こったの?」
「バグ?」
 逃げ出さずに戦っていたプレイヤー達はその異変を口々に話だす。

 そして逃げ出していたプレイヤー達もその異変を知り再び集結する。

「うおおおおおお」
 タケシも俺を放り出して、攻撃を再開。棒立ち状態のスルトを1000人以上のプレイヤーでタコ殴りにする。

 1分ほどでスルトはその体を崩壊させ、その瞬間、地面が揺れるほどのプレイヤー達の歓声があがる。

 やっと体が動き出した俺の視界の真ん中に『消えない炎を手に入れた』と表示された。


 ――初心者編 完――
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