デバフの王〜スキルガチャでハズレスキル【感染】を手に入れたのでこれから無双したいと思います。〜

ぽいづん

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トップを狙え! PVP始めました

第3話 だまし討ち

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 キングの消え方は強制ログアウトの様に唐突だった。
「あー1時間経っちゃったかぁー」
 シゲゾーは残念そうにそう言った。

「まっキングはいないけど」
 そう言ってシゲゾーは洞窟の奥に入っていく。洞窟の奥は円形の広い空間があり、その中で背中にムカデの紋様が書かれた服を着た連中が戦っている。

「俺達を情け無用のPK集団みたいなことを言ってるやつもいるが、基本はこうやってお互い戦って自己研鑽をしている。まぁもともとPK好きが集まってる訳だから、PKもするけどな」

「ふーん」

 円形の空間で戦っている二人を眺める。ロロリタ族の幼児忍者とハイエルフの長身の槍を持っているものとの戦いだ。
「あの二人は新入りだな……確かランサーがスーさんで忍者がヤマちゃんだな」
「そういやムカデ団、忍者多くね? 」

「そりゃなPKするなら圧倒的に忍者なんだよなぁ。付与できるデバフが多いし、だまし討ちのWSは、麻痺か沈黙か、移動速度70%低下を選択することができるからな。エイジお前に使ったWSもだまし討ちだよ」

 沈黙か……確かスキル使用不可のデバフだったよな……いっちゃんやなデバフだよな……もし沈黙だったらシゲゾーに殺されてたかもしれん……

「へ、へぇぇ」
「あーエイジに使ってたのが沈黙だったら勝てたのになぁ」

 話をしているうちに二人の戦いが終わる。立っているのはハイエルフで長身ランサーのスーさん。

 シゲゾーが俺にコソコソと話しかける。
「音声認識のワード変えたか?」
「うん。一応。」
「あとお前の武器も変えとけよ、防御力低下のデバフが付くんだろ? 」

 あっそうか……ホムホムさんに攻撃力低下を付けてもらえないからな……俺は言われた通りに武器を変更しておく。

 シゲゾーは洞窟の中心にいるスーさんに話しかける。

「スーさん。こいつと1戦やってもらってもいい?」
「いいっすよ。シゲゾーさんの知り合いっすか?」
「まーそんなとこ」

 シゲゾーが俺の方を向いて話しかけてくる。
「相手はランサーだ。お前ならどうやって立ち回る?」
「うーん……とりあえず先手必勝かなぁ」

 シゲゾーは呆れたというような感じで
「ま、素人だからしょうがないか……お前はパラディンだろ? だったらランサーの攻撃を盾で受けながら進んで間合いを潰して自分の間合いに入れ」

「……なるほど……」
「これがタンクのPvPのセオリーってもんだ。ただ相手も熟練のPKプレイヤーだからそれは分かってるからな」
「……分かった」

 シゲゾーは俺にコソコソっと話しかける

「後ろを向け」

 俺は言われた通りに素直に後ろを向くと……

「だまし討ち、鈍足の型……」
 ボソッそう言ったのが聞こえる。

 バキッ

 俺の体から10という数字が飛び出て、鈍足! と視界に表示され、長靴のアイコンが表示され数字が120と表示される。

「は? 何してんだよ!!! 」
「これでお前にデバフが付与されただろ? あとは適当に誤魔化して100秒ぐらい時間を稼いでから戦え」

 その言葉を聞いて俺はハッとする。

「ランサーはスピードと手数が命だボコボコにしてやれ」

 円形になった洞窟の中心で一人ぴょんぴょんと跳んだりしているスーさん。
「すいません。ちょっとTELが……」
 これで1分ほど稼ぐ。

 そして移動速度低下が掛かっているのがばれないように洞窟の中心に30秒ほど掛けて向かう。

「それじゃ始めようか」

 俺は盾と剣を構えスーさんと対峙する、そして小声で『ターゲット……インフェクション』と呟く。

 スーさんの顔色が変わる。

 俺の移動速度低下はここで終了する。。

 そうシゲゾーはこれを狙ったのだ。流石というか汚いというか……

 この感染で付与されるデバフは俺の残り時間に関係なく新規で付与されるデバフと同じ時間になる。つまり、俺に付与されたデバフを残り1秒で感染の使用をすると……相手は60秒なり90秒といった俺がデバフ受けた初期時間から掛るということになる。

 だから、シゲゾーは俺にデバフを付与させた後、100秒間の時間を作らせ、俺がデバフに罹っている時間を短くしたのだ。

 そして今、俺のデバフは切れている。

 俺は盾を構え、一気にスーさんとの間合いを詰める。スーさんは移動速度低下が掛かっているため足が止まっており、必死で槍で攻撃し牽制をしている。

俺はそれを盾で弾きながら重戦車のように接近をする。そして俺は

「エンドオブハート!」

 と叫ぶ。これはスラッシュ、ダブルスラッシュ、エンドオブハートというWSをコンボで出す音声認識マクロだ。

 ランサーは防御力が低い、タンクの俺でもクリーンヒットすれば致命的なダメージが入る。
「俺の勝ちでいいですか? 」

 トドメを刺さないのは、PK扱いになって罪が付くから瀕死の状態になったらそう聞けと言われた。

 罪が付くのははっきりいって気持ちいいもんじゃないから……

 瀕死のスーさんは
「うん。君の勝ちでいいよ。しかしタンクなのにいきなりデバフを使ってくるとはね……」
 そういうと握手をして戦いを終わらせた。

 俺が勝ってもどってくるとシゲゾーは得意げな顔をして
「俺スゲーだろ?」
 と言った。

「うん……あんな使い方をするなんて、全く思いつかなかった流石汚いというか……」
「これがPK経験の差だよ。汚かろがなんだろうが勝ちゃあいいんだよ。勝ちゃあな!」

「確かに勉強になった。それじゃぼちぼち闘技場へ……」
「は? まだ全然だめだよ。それに今はみんな同じレートだろ? クソつええやつとも当たってレート下げるのか? 」

「……確かに」
「俺の見立てだと1週間でレートが落ち着くから、そこからやればいい。今は実力をつける時期ってもんだ」
「……分かった」

 ◇◆◇

 翌朝学校でタケシといつものように駄弁る。

「は? ムカデ軍団と知り合いになった? 」
「ああ。PK軍団とかいうから変な連中の集まりかと思ったけど、いい人達だったよ」
「……そりゃねぇよ。俺だってPKされたもん。後ろからいきなり不意打ちで」
「……そっか……そりゃ運がなかったな……」

 俺はシゲゾーにレクチャーされたことをタケシに話してみる。

「あーなるほどな……確かにそうだわ。それPvEにも全然使えるじゃん」
「うん。目からウロコというかなんというか」
「流石PK専門でやってる奴は発想がちがうわ」

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