デバフの王〜スキルガチャでハズレスキル【感染】を手に入れたのでこれから無双したいと思います。〜

ぽいづん

文字の大きさ
32 / 85
トップを狙え! PVP始めました

第6話 キング対ショーグン

しおりを挟む
 エウロペア防衛軍の連中と出会った翌日。その日は何故か闘技場デビューする気になれず、少し悶々としていた。

 ピロピロとTELが鳴り、ヘパイスよりTELと表示されている。

 なんだろう? なんか用事でもあるのかな?

 通話をタップする。

「よーエイジ! 俺の作った武器の調子はどうだ? 」
「うん。問題ないよ」

「ところで、エイジ最近ムカデ団によく出入りしてるみたいだけど」
「うん。なんで知ってんの? 」
「ムカデ団のアジトの近くでよく見かけたから」
「あー」

「ところでさ、ムカデ団のトゥエルブサーティーンって知り合い?」
「うん。知り合いだよ。それがどうしたの?」

「闘技場のランカーだからさ。武器を作ってあげようと思ったんだけど、いつもいないからなんでかなーと思ってさ」

「彼はうどん県民だから1時間しかゲームできないからね。タイミングあったら教えてあげるよ」
「あーそうなの? いやいいよ。自分で連絡とるから」
 そう言ってヘパイスはTELを切った。

 営業活動ってやつか、金を稼ぐのも大変だな……

 その日はダンジョン攻略に少し手こずったということもあり、ムカデの洞窟にはいかずそのままログアウトをした。

 ――次の日

 ログインしてすぐにピロピロと電子音が鳴り、シゲゾーからTELが入る。

「すぐに闘技場に来い! キングとショーグンの直接対決だ!」
 と鼻息荒く興奮気味に話す。

「え? えええ!! ほんとに!?」
「ああ、ほんとだ! 早く来い! 」

 そのまま走って船着き場に向かい、アルカトラズ島行きの船に飛び乗る。

 島に着くと、受付でシゲゾーが待っている。
「まだ始まってない! 観客入り口で受け付けしてこい!」
 シゲゾーに言われるがまま観客入り口の前に立つと、現在試合中の一覧と表示される。

 その中からレート2072:トゥエルブサーティーンVSレート2370:ラッキー・イレブンと表示され準備中と書かれている。

 観客数も787人と表示されており群を抜いて多い。というか他の試合はほぼ0。

 それをタップすると観客席に転移をする。シゲゾーも一緒に転移したのか横にいる。ムカデ団のみんなの姿もちらほらと見える。

 円形になった戦いの場にはまだだれも立っていない。

 すると、円形の舞台の壁の両端が開き、その扉から金色の派手な鎧に大きな盾を持ったショーグンが現れる。

 ショーグンが右手を上げると地鳴りのような歓声があがる。

 反対の方の壁からは黒革の服の背中にムカデの意匠を施した装備を着たキングが現れる。

 するとブーーーー!!! と嵐のようなブーイング巻き起こる。

「俺達は嫌われ者のPK集団だからな……仕方ない……」
 シゲゾーは寂しそうに呟く。

 二人は向き合って対峙をする。するとフォーン!とホーンが鳴った。

 両手で剣を持ち、小気味よく足でリズムを取るキング。それと相対するように大きな盾をドンと構えるショーグン。

「ショーグンはパラディンだ。エイジもショーグンの動きは気をつけてみたほうがいい」
 コクリと頷く。
「そしてあれがキングのパラディン攻略だ」

 シゲゾーがそう言うと、一瞬で間合いを詰めたキングが一気に斬りつけ、そのまま連続で斬り続ける。

 ショーグンはそれをカンカンと盾で受け、右手にもった細身の剣でキングに斬りつける。
 キングもそれを予測していたかのように平然とその攻撃をかわす。

 シゲゾーはそれを見て息を漏らす。
「ふーっ! 流石ショーグン一筋縄ではいかんな。大抵はあのキングのラッシュに対応できなくてそのままやられるんだけどな」
「でも盾上からでもダメージが入るのは大きいね」

 盾で受けると3ないし5のダメージがショーグンに入っている。
「小さなダメージだが、回復する隙を与えない。回復しようとすれば、キングが一気に攻め立てるというわけだ」
「なるほど」

 キングは一気に攻め立てているが、ショーグンはそれを事も無げにいなしている。そしてショーグンの攻撃を剣で受けるキング。

「ふー危な……」
 俺とシゲゾーは安堵をする。

 キングから5のダメージ表記が飛び出ている。その時のキングの表情はしまったというような表情に見える。

 なんでだろ? キングの方が与ダメージは多いハズだし、優位に進めているようにすら見える。

 シゲゾーはその表情に気がついていないようで、
「イケる! 勝てる! キング頑張れ!! 俺達ムカデ団の実力をみせてやれーーーー!! 」
 と叫んでいる。

 この前、言われてたのよっぽど悔しかったんだろうな……
 シゲゾーを生暖かい目でちらっとみると、急に顔が青ざめている。

 すぐに舞台に目を向けると、ショーグンの体から緑の文字で30という数字が飛び出ている。
「ま、まさか……」
 慌ててショーグンの装備を見てみると、武器:キングスレイヤー(付加能力:攻撃時、HP徐々に回復(大)自身に付与)製作者ヘパイスと銘が記されている。

 そしてショーグンはダン! とキングに盾を向け地面に盾を付ける。

 それは完全に防ぎきるという意思表示にすら思える程強固な構え。

 そして膠着状態のまま15分ほどが経過する。

「まずい……」
 シゲゾーが呟く。

「どうした?」
「タイムリミットだ……」
「あ……シゲゾー……キングのタイムリミットまではあと何分だ?」
「キングはいつも学校が終わってからログインするから16:30前後にログインする……そして今が17:15……」

「あと15分しかない……」
「まさか……ショーグンはキングのタイムリミットを知っている?」

 シゲゾーの言う通り、あの長期戦はキングのタイムリミット知っているから取っているとしか思えない。

 それにあの武器だ。攻撃力を犠牲にしてまで回復能力を優先している……まるで長期戦を持ち込むかのような付加能力……まてよ……

 俺はふと昨日のヘパイスのTELを思い出す。そしてショーグンの持っている武器は……ヘパイス製!!

 ま、まさか……

「シ、シゲゾー……す、すまない……ショーグンはキングがうどん県民だって知っている……」
「なんだと! なんでだ!!」

「昨日、ヘパイスからTELが着たんだ……キングの武器を作りたいけど会えないかなって……その時俺……ポロリと言っちゃった……」

 シゲゾーは苦虫を潰したような顔をして
「エイジ、お前がキングに最初あったとき、キングがうどん県民だって、俺が言わなかった意味分かるか? それ自体がPvPだと弱点に成り得るからな……」

 俺は俯いて
「ごめん……」
 とただ謝るしかなかった。

 するとシゲゾーはパーンと俺の背中を叩いて
「大丈夫だ! エイジ顔を上げろ! 俺達のキングだ! キングを信じよう!」
 そう言って前を向く。

 そして膠着状態のまま残り1分を迎える。

 俺は祈るような気持ちでキングの姿を目で追う。

 キングは防御を捨てた破れかぶれのラッシュでショーグンを攻撃する。そしてそのラッシュを防ぎきったショーグンの口元はニヤリと笑っているかのように見え攻撃に転じようとした時、ブスンとキングの姿が消えた。

 そうタイムリミットを迎えたのだ……

 観客たちは何が起こったのか分からず、シーンと静まり返っている。

 兜を外したショーグンが大声で話す。

「これがムカデだ!!! 負けそうになったら回線を切る!! そんな最低な奴らがムカデなのだ!! 俺は絶対にそんな卑怯な連中には負けない!! 絶対にだ!!!」

 ショーグンがそう言うと観客のボルテージは一気に上がり、地鳴りのような歓声。そして
「ショーッグッン! ショーッグッン! ショーッグッン! ショーッグッン!」
 とショーグンコールが巻き起こる。

 シゲゾーはそれを尻目に悔しそうに呟く。
「やられた……連中は始めからこれが狙いだったんだ……大衆の面前で回線切り……最悪だ……まだ普通に戦って負けたほうがマシだったかもしれない……」

「回線切りってそんなに悪いことなのか?……」
「そうかエイジは知らないか……オンラインゲームじゃ負けそうになって、回線切りは最悪の行為の一つだ……闘技場は回線切りをしても負けはつくがな……」

「……そうなんだ……俺の所為だ……」
「エイジの所為じゃないよ。俺達が弱かったんだ。ただそれだけだ」
 シゲゾーはポツリとそう言った。 

 俺は両手の拳に力を入れ、肩を震わせる。

 クソ! クソ!! クソ!!! 俺を騙したヘパイス、そんな卑怯な真似にでたショーグンにも腹が立つ……でもただただ足を引っ張っただけの自分に一番、腹が立つ!!!

 俺は頭に血が登って何も考えられないという訳ではない。凄く冷静な怒りが俺を支配している。そしてシゲゾーに静かに話しかける。

「シゲゾー……ショーグンと戦うにはいくつ勝てばいい?」
「お前……まさか……」
「ああ、ムカデを背負ってショーグンをぶっ潰す! 」

しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

勇者辞めます

緑川
ファンタジー
俺勇者だけど、今日で辞めるわ。幼馴染から手紙も来たし、せっかくなんで懐かしの故郷に必ず帰省します。探さないでください。 追伸、路銀の仕送りは忘れずに。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

処理中です...