デバフの王〜スキルガチャでハズレスキル【感染】を手に入れたのでこれから無双したいと思います。〜

ぽいづん

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スキルを使って生き残れバトロワ編

第2話 勝ドン

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 早速ログインしたのだが、ソフィアの街の噴水広場にはなんの変化もない。
 前回のアプデみたいに街中で叫んでるやついるわけでもなく、みんなログインするなり無言でダッシュし素材を買いに行っている。

 まあ俺2億持ってるし。そんなことはしなくても良い。

 さて、ムカデ洞窟にでも行ってシゲゾーと合流して闘技場でも行こうかな。と思っていると、目の前にボーッと空を仰いで立っているロロリタ族の男がいることに気づく。その男の手には銀色に輝くハンマーが握られている。

 見覚えある顔……へパイスだ……

 偶然なのか必然なのか……取り敢えず気づかれないうちに……行ってしまおう……

 そーっとそーっと転移をしようとした時。

 くるっとヘパイスはこっちを向いてホラー映画にでてくる幽霊のようにニヤッと笑って、手に持ったハンマー振りかぶって襲いかかってくる。

「ごるぁぁぁしねぇぇぇ!!!」

 そう言ってヘパイスは手に持ったシルバーハンマーで殴りつける。まあ殴られてもソフィアの街はPK禁止エリアなので全くダメージは入らないのだが……

 ヘパイスはひと目も憚らず、効きもしないハンマーでひたすら俺を殴りながら精一杯の声で罵る。
「この詐欺師! ペテン師! 屑人間!! 人間の屑! 人でなし!! お前母ちゃんでーべそ! ばーか、ばーか!」

 こいつはほんとは小学生じゃねーかと思うほどの語彙力。

「死ね死ね死ね!!! 死ね死ね!!」


 このままほっとくのもあれだし、どうしたものか……

「おい! ヘパイス! エイジが困ってるだろ!」
 聞き覚えのある声、ヘパイスのリアフレ、ロジャーさんだ。

 キッ!とロジャーさんを睨むとそのまま俺を殴り続けるヘパイス。

「ったくお前なぁ……小学生かよ……PK禁止エリアでいくら殴ってもしかたねーだろ」
「うるせーーー、アキラ!お前は黙ってろ!! 100万回殴ったらバグで死ぬかもしれねーだろうが!!」

 ……そんなバグねーだろ……ロジャーさんアキラっていう名前なんだ……

 ロジャーことアキラさんがボカボカと殴り続けるヘパイスの手を掴み上げ
「あん? タカトシ誰に向かって口利いてんの? あんまりふざけたマネしてるとテストわかってんのか?」

 ヘパイスの本名、タカトシか……

「で、でもこいつら俺を騙して、全財産持って行きやがったんだ! それで工房まで手放すハメになっちまった! アキラなら分かるよな!」
 と泣きそうな顔でヘパイスことタカトシがロジャーさんに語りかける。

「は? 自業自得だろ? エイジを騙して情報を売ったのはおめぇぇだろうが! ふざけんな! 誰もお前が悪いなんて思ってねぇぇからな! リアフレも俺しかいねぇくせに、ノートもちゃんと取ってない! 全部が自業自得なんだよおめぇはよ! エイジに謝れよ!」

「そ、そんな……そこまで言わなくても……」
「あ? 何度でも言ってやらぁ! このクソ嫌われ者が!! 」

 ヘパイスは下を向いてボソボソっとか細い声で俺に話かけてくる。
「……分かったよ……エイジ……騙してごめんよ」
 ロジャーさんが手を離すとヘパイスはトボトボとどっかに消えていった。

 それを二人で見送るとロジャーさんがすまなさそうに謝ってくる。
「エイジくん、すまんね。リアフレが迷惑掛けて、あいつこのゲームで調子に乗ってるの知ってた俺が本当ならあいつに痛い目を合わせなきゃダメなのにな」

「いやいや感謝されるようなことはしてないです。ロジャーさんこそ大丈夫なんですか? 大学で気まずくならないですか?」
「大丈夫だよ。あいつ友達俺しかいねーから、むこうから頭下げてくるわ。それじゃエイジくん。また装備欲しくなったら声かけて」

「本当に助かりました! じゃあまたよろしくおねがいします! 」
 こうしてロジャーさんと別れ、ムカデの洞窟に向かう。

 洞窟に行くとシゲゾーやキングの姿もあり、他のメンバーの姿も見える。

「きたきたデバフの王がやってきた」
 シゲゾーが俺を見るなりそう言う。

「はいはい。デバフの王ですよ」

 ウキウキしたような感じでキングが俺に話しかけてくる。
「そうそうエイジくん、今週の日曜日のバトロワでるんでしょ?」
「うん。出るよ」

 小さくガッツポーズをするキング。
「キングももしかして出ちゃう系?」
 大きく頷くキング。

「親戚のお兄ちゃんのうちに遊びにいくから1時間以上でも大丈夫! ルーター買い替えたって言ってたからラグも無さそう!」

「おお良かったね! それじゃあ、この間の決着がつけられるってことか!」
 うんうんと嬉しそうに頷くキング。

 それをみて心のそこから喜べない俺……初代バトロワ王者目指してたのに……キングがでるならやばいかも……

「エイジ、お前バトロワ勝つつもりなの?」
 シゲゾーが話しかけてくる。
「そりゃ勝利を目指すでしょ」

 シゲゾーが俺の肩を叩きながら
「そりゃ無理だ。諦めろ。この勝ドンマスターのシゲゾー様が勝ドンを頂くからな! かっかっかっか!」
と意味不明の言葉を言ってシゲゾーは笑う。

「カツ丼?」
 俺が怪訝そうにそう聞くとえ?というような表情をするシゲゾー

「え? 勝ドンしらんの? 」
 キングの方を見るシゲゾー、キングも知らないという素振りで首を横にふる。

「あーそっか……もう15年も前だからな……知らなくても無理ないか……」
 シゲゾーはそう呟く。

 シゲゾーって一体何歳なんだよ……

「勝ドンってのはバトロワゲーで最後の一人になって優勝することを勝ドンっていうんだよ。KUBGっていうゲームで優勝したら今夜は勝ドンだっていうセリフがでてくるからそうなったんだけど」

「へぇぇ勝ドンねぇ」
「でも今回はエイジお前に勝ち目はないよ」
「なんでだよ!」
 ちょっとムッとしてシゲゾーに噛み付く。

「バトロワゲーって如何に目立たず隠れてやり過ごすことが大切なんだよ。回復アイテムも限られてるしな。一番有利なジョブは忍者と狩人。この2つのジョブというだけでバトロワ適正が頭二つ抜けてる。忍者は音なく動けるし、狩人は遠隔攻撃に多彩なデバフ」

「……確かに……」

「隠れるだけならヒーラーも有利だけどな。最後の決戦になったときに火力不足で詰む可能性もあるが」
「なるほど……」
「エイジ、それにお前デバフはどうするんだ? 一人で行動するんだぞ?」

 ……確かに……デバフが貰えない……

「お前、やたら有名になったしな。お前にデバフ掛けるお人好しはもういねぇよ」

 あ! そうだそれなら……一か八か……

「シゲゾー、俺と一緒に組んでやらね? 」
「は? それチーミングっていう反則な」
 シゲゾーに冷たくあしらわれた。

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