7 / 19
7.話し合い
しおりを挟む
夜会では次々と女性達に話しかけられ、アレシアは帰りの馬車の中で心地よい疲れを感じていた。
ドレスをうまくアピールできたから、きっと明日からモナンジュは良い方向に進むはずだわ。
「アレシア、この後のことだけど、今夜は邸に戻るだろう?
久しぶりにゆっくり話したい。」
「えっ、このままモナンジュに戻ろうかと思っていたわ。」
「モナンジュ?
さっきその話をしていたね。」
「ええ、モナンジュは、私の経営しているお店よ。
経営していることは秘密にしているから、あなたに迷惑をかけることはないと思うの。
だから、安心して。」
モナンジュに戻り、明日朝一でドレスをアピールできたことを、レオニー達に報告するつもりだった。
「いや、今夜はちゃんと話をしよう。
モナンジュへ行くのはダメだ。」
トラヴィス様が真剣な眼差しで私を見ている。
「そうね。
話は必要ね。」
今後の離縁について、話し合わずはっきりさせないのは、いつまでも中途半端で嫌なのだろう。
「それなら、居室で話そう。」
「わかったわ。」
ついに避けていたこの瞬間が訪れてしまったのね。
二人の終わりの時。
「君の支度が整うまでゆっくり待っているよ。」
「ふふ、夜会に行く時もそうであったけれど、あなたが私を待つなんて、邸を出る前にはあり得なかったわね。」
「そうかもしれないな。
僕はいつも忙しすぎた。
とにかく急がなくていいから、僕に時間をくれ。」
私は驚きながら頷いた。
普段は忙しくしているトラヴィス様が、私と向き合うために待つと言ってくれている。
きっと私達の結婚はこれが最後ね。
もし私が邸を出なければ、彼からこんな言葉は引き出せなかったはずだわ。
私は静かに頷いた。
「お待ちどうさま。」
たっぷりの湯に浸かり、久しぶりに侍女達に手伝ってもらいながらの湯あみを終え、浴室から出ると二人の居室に向かう。
トラヴィス様はワインを飲みながら、ソファで寛ぎ、私を待っていた。
「やあ、君も一杯どうだい?」
「えっ、お話をするのにワインですか?
大丈夫かしら。」
「リラックスして話すのにいいと思うよ。
嫌なら、果実水でもいいけれど。
侍女に用意させるよ。」
「いいわ。
もうこんな夜更けだもの。
みんな休みたいはずだから、ワインをいただくわ。」
そう答えると、トラヴィス様は私の前に置いてあったグラスにワインを注いでくれた。
「こうして二人でワインを飲むこともなかったね。」
「そうね。
あなたは夜会の後でも、いつも王宮に戻っていたから。」
「そうだったな。
聞いてもいいか?
どうしてここを出て行ったんだ?」
トラヴィス様の眼差しが鋭くなり、やはり私を責めているようだ。
「私がこの邸にいる必要性を感じなかったからよ。」
「何だって?
妻が邸にいる必要がないだって?
そんなはずはないだろう。」
「どうして?
あなたもいないのに、私は必要ないでしょう?
ヨルダンがこの邸のことをすべてうまくやってくれているわ。」
「そうではない。
僕はどうするんだ?」
「トラヴィス様?
あなたは王宮で活躍しているわ。
リベルト王子を支える大切な役割なんでしょう?
これからも応援しているわ。」
「邸にいないのに?」
「ええ。」
離縁した後、時々王宮に行った際に回廊からあなたを見守り続けるなんて、言えないけれど…。
「邸に戻らないのか?」
「ええ。
新しい生活を始めているの。」
「男か?」
「まさか。」
「邸を出てどこで何をしている?」
「モナンジュという工房で、経営をしている話は先ほどしたわ。」
「それでも邸から通うことだってできるだろう?」
「しようと思えばできるけれど、さっきも言ったように、この邸に私は必要ないもの。」
「必要だ。」
「どうして?」
「…。
どうしてもだ。」
「離縁は?」
「絶対にダメだ。」
「そう?」
「ああ。」
私はトラヴィス様の言葉に首をかしげる。
彼はもう私と別れたいのだと思っていた。
離縁は世間体が悪いから嫌なのかしら?
その気持ちはわかるわ。
私だって離縁すれば、お父様に破門されて、お兄様のお荷物になるしかない。
だから、このままの関係でトラヴィス様がいいのなら、この距離感のまま彼のそばにいようかしら。
夜会では、今日のようにエスコートしてくれるだろうし。
そうすれば、少しは彼をそばで感じることができる。
でも、今までのようにここに閉じこもる生活だけはしたくない。
彼を思い過ぎてしまう。
「私はモナンジュの仕事を続けて行きたいの。
それは譲らないわ。」
「その仕事をやりたいなら、止めはしないよ。
だけど、夜には帰って来てほしいんだ。
約束してくれ。」
「あなたがいないのに?」
「もちろん、これからは早く帰るよ。
リベルト王子にも話した。」
「えっ、私とのことを?」
「そうだ。
見放されそうだとね。」
「そんな、リベルト王子に私のことを話す時間を使わせるなんて恐れ多いわ。」
「いや、彼はむしろ僕に詫びていたよ。
自分のせいだとね。
本当は僕のせいなのだけど。」
私が何をしようとトラヴィス様に影響はなく、ましてやリベルト王子にまで気を使わせるなんて、想像すらしなかった。
「トラヴィス様は私のことなど気にしなくていいわ。
もちろんリベルト王子も。」
私は彼に気を使わせて早く帰ってほしいと望んだわけではない。
ただ、愛して欲しかったのだ。
その気持ちがないなら、大切な仕事まで犠牲にしてくれる必要はない。
「今まで通りなら、アレシアはこの邸に戻らないつもりなんだろう?」
「ええ、まぁ。
でも、それであなたの仕事に悪い影響があるなら、気を使わなくていいの。
私のことは忘れて。」
元の生活に戻るなら、覚悟を決めて邸を出た意味がなくなってしまう。
「だったら、こうしよう。
僕は早く帰るし、君も夜には邸に帰るんだ。
君がどうしても帰りたくないと言うのなら、仕方がない。
僕もそこに住もう。」
「えっ?
何をおっしゃっているの?
トラヴィス様がモナンジュに来ると言うの?」
「ああ、僕を甘く見てはいけない。
僕はどこまでも君を追いかけるし、君を手放さない。
君が眠れる場所なら、僕だってそこに眠れるさ。」
「…。」
トラヴィス様の言葉に驚いてしまう。
これではまるで、彼が私に執着しているかのようだわ。
そんなはずないのに。
手に入れたものは手放さないタイプの人なの?
今まで彼が何かに執着するようすを見たことがなかったけれど。
ふふ、そもそも私は彼のほとんどのことを知らないわ。
今や私達は形だけの夫婦だから。
「何がおかしい?」
「あなたは謎に満ちていると思って。」
「そうだろうな。」
「トラヴィス様は私と一緒に寝たいの?」
「当たり前だ。
そのことに関しては一歩も譲るつもりはない。」
「そう?
別にいいけれど。」
「一つだけ聞いておきたいことがある。
正直に答えてほしい。」
「何かしら?」
「男はいるのか?」
「えっ?」
「好きな男や夜を共にした男はいるのか?」
トラヴィス様は、顔を顰め、声を捻り出すように問いかける。
「まさか。
そんなことをしないわ。
私達は夫婦なのよ。」
「わかった。
それならいい。」
そもそも私は彼と別れたかったわけではない。
彼に見向きもされず、一人ぼっちの毎日が耐えがたかっただけだ。
だから、私が浮気するはずがない。
彼が離縁を望まないなら、夫婦でいることに異論などないのだ。
ワインを二人で飲んだ後、寝室のベッドに並んで横たわる。
久しぶりにこのベッドに寝たけれど、不思議と落ち着く。
まるで、旅行から帰って来たかのようにしっくり来るし、良く眠れそう。
不思議ね。
さっきまではこのまま離縁して、別々の道を歩むものだと思っていたのに、こうしてまた、トラヴィス様と同じベッドで眠ることになるなんて。
彼が私と共にベッドに横になるのはいつぶりだったかしら。
思い出せないわ。
いつも私が先に寝てしまっていたから、彼がいつベッドに戻ってきたのかさえ知らず、私にとっては一緒に寝ているイメージはないのだ。
それなのに今、隣に彼がいて、同じ時間を過ごしている。
二人でベッドに並ぶなんて、今更ながらなんだか恥ずかしい。
彼のことを好きな私は、相変わらず彼を意識し、緊張してしまう。
そんな中、彼がこちらをじっと見ている視線を感じる。
「夜会に行く時、君は僕の顎にキスをしたよね?
あれをもう一度してくれないか。
挨拶で構わないから。」
「えっ、あれですか?
もう忘れてください。」
あれはもう離縁を覚悟していたから、せめて最後にと勢いでやってしまったのだ。
今更ながら恥ずかしい。
普段の私なら、あんなことは絶対にしないのに。
「あの時、思いがけなくて、正直すごく嬉しかったんだ。
君から僕に何かしてくれたのが、初めてだったから。」
そうだったかもしれない。
私は最初からトラヴィス様に憧れていて、彼の堂々とした振る舞いに圧倒されていたし、恐縮して自分から何かをするなんて、考えたこともなかった。
彼のそばにいるだけで、精一杯だったから。
「私からキスなんてして、嫌じゃなかった?
夫婦だからギリギリ許されるかと思ったの。
ごめんなさい。」
「謝らないで、むしろもっとして欲しいんだ。」
その言葉に戸惑いながらも、トラヴィス様が望むのならと、彼にそっと近づき、顎にやさしくキスをする。
これでいいのかしら?
「うん、いいね、もう少し続けて。」
「えっ、もっとですか?」
私は驚きつつももう一度そっとキスをすると、トラヴィス様はうっとりするような眼差しで私を見つめて、そのまま静かに抱きしめた。
そして、久しぶりに彼は私を求めるのだった。
ドレスをうまくアピールできたから、きっと明日からモナンジュは良い方向に進むはずだわ。
「アレシア、この後のことだけど、今夜は邸に戻るだろう?
久しぶりにゆっくり話したい。」
「えっ、このままモナンジュに戻ろうかと思っていたわ。」
「モナンジュ?
さっきその話をしていたね。」
「ええ、モナンジュは、私の経営しているお店よ。
経営していることは秘密にしているから、あなたに迷惑をかけることはないと思うの。
だから、安心して。」
モナンジュに戻り、明日朝一でドレスをアピールできたことを、レオニー達に報告するつもりだった。
「いや、今夜はちゃんと話をしよう。
モナンジュへ行くのはダメだ。」
トラヴィス様が真剣な眼差しで私を見ている。
「そうね。
話は必要ね。」
今後の離縁について、話し合わずはっきりさせないのは、いつまでも中途半端で嫌なのだろう。
「それなら、居室で話そう。」
「わかったわ。」
ついに避けていたこの瞬間が訪れてしまったのね。
二人の終わりの時。
「君の支度が整うまでゆっくり待っているよ。」
「ふふ、夜会に行く時もそうであったけれど、あなたが私を待つなんて、邸を出る前にはあり得なかったわね。」
「そうかもしれないな。
僕はいつも忙しすぎた。
とにかく急がなくていいから、僕に時間をくれ。」
私は驚きながら頷いた。
普段は忙しくしているトラヴィス様が、私と向き合うために待つと言ってくれている。
きっと私達の結婚はこれが最後ね。
もし私が邸を出なければ、彼からこんな言葉は引き出せなかったはずだわ。
私は静かに頷いた。
「お待ちどうさま。」
たっぷりの湯に浸かり、久しぶりに侍女達に手伝ってもらいながらの湯あみを終え、浴室から出ると二人の居室に向かう。
トラヴィス様はワインを飲みながら、ソファで寛ぎ、私を待っていた。
「やあ、君も一杯どうだい?」
「えっ、お話をするのにワインですか?
大丈夫かしら。」
「リラックスして話すのにいいと思うよ。
嫌なら、果実水でもいいけれど。
侍女に用意させるよ。」
「いいわ。
もうこんな夜更けだもの。
みんな休みたいはずだから、ワインをいただくわ。」
そう答えると、トラヴィス様は私の前に置いてあったグラスにワインを注いでくれた。
「こうして二人でワインを飲むこともなかったね。」
「そうね。
あなたは夜会の後でも、いつも王宮に戻っていたから。」
「そうだったな。
聞いてもいいか?
どうしてここを出て行ったんだ?」
トラヴィス様の眼差しが鋭くなり、やはり私を責めているようだ。
「私がこの邸にいる必要性を感じなかったからよ。」
「何だって?
妻が邸にいる必要がないだって?
そんなはずはないだろう。」
「どうして?
あなたもいないのに、私は必要ないでしょう?
ヨルダンがこの邸のことをすべてうまくやってくれているわ。」
「そうではない。
僕はどうするんだ?」
「トラヴィス様?
あなたは王宮で活躍しているわ。
リベルト王子を支える大切な役割なんでしょう?
これからも応援しているわ。」
「邸にいないのに?」
「ええ。」
離縁した後、時々王宮に行った際に回廊からあなたを見守り続けるなんて、言えないけれど…。
「邸に戻らないのか?」
「ええ。
新しい生活を始めているの。」
「男か?」
「まさか。」
「邸を出てどこで何をしている?」
「モナンジュという工房で、経営をしている話は先ほどしたわ。」
「それでも邸から通うことだってできるだろう?」
「しようと思えばできるけれど、さっきも言ったように、この邸に私は必要ないもの。」
「必要だ。」
「どうして?」
「…。
どうしてもだ。」
「離縁は?」
「絶対にダメだ。」
「そう?」
「ああ。」
私はトラヴィス様の言葉に首をかしげる。
彼はもう私と別れたいのだと思っていた。
離縁は世間体が悪いから嫌なのかしら?
その気持ちはわかるわ。
私だって離縁すれば、お父様に破門されて、お兄様のお荷物になるしかない。
だから、このままの関係でトラヴィス様がいいのなら、この距離感のまま彼のそばにいようかしら。
夜会では、今日のようにエスコートしてくれるだろうし。
そうすれば、少しは彼をそばで感じることができる。
でも、今までのようにここに閉じこもる生活だけはしたくない。
彼を思い過ぎてしまう。
「私はモナンジュの仕事を続けて行きたいの。
それは譲らないわ。」
「その仕事をやりたいなら、止めはしないよ。
だけど、夜には帰って来てほしいんだ。
約束してくれ。」
「あなたがいないのに?」
「もちろん、これからは早く帰るよ。
リベルト王子にも話した。」
「えっ、私とのことを?」
「そうだ。
見放されそうだとね。」
「そんな、リベルト王子に私のことを話す時間を使わせるなんて恐れ多いわ。」
「いや、彼はむしろ僕に詫びていたよ。
自分のせいだとね。
本当は僕のせいなのだけど。」
私が何をしようとトラヴィス様に影響はなく、ましてやリベルト王子にまで気を使わせるなんて、想像すらしなかった。
「トラヴィス様は私のことなど気にしなくていいわ。
もちろんリベルト王子も。」
私は彼に気を使わせて早く帰ってほしいと望んだわけではない。
ただ、愛して欲しかったのだ。
その気持ちがないなら、大切な仕事まで犠牲にしてくれる必要はない。
「今まで通りなら、アレシアはこの邸に戻らないつもりなんだろう?」
「ええ、まぁ。
でも、それであなたの仕事に悪い影響があるなら、気を使わなくていいの。
私のことは忘れて。」
元の生活に戻るなら、覚悟を決めて邸を出た意味がなくなってしまう。
「だったら、こうしよう。
僕は早く帰るし、君も夜には邸に帰るんだ。
君がどうしても帰りたくないと言うのなら、仕方がない。
僕もそこに住もう。」
「えっ?
何をおっしゃっているの?
トラヴィス様がモナンジュに来ると言うの?」
「ああ、僕を甘く見てはいけない。
僕はどこまでも君を追いかけるし、君を手放さない。
君が眠れる場所なら、僕だってそこに眠れるさ。」
「…。」
トラヴィス様の言葉に驚いてしまう。
これではまるで、彼が私に執着しているかのようだわ。
そんなはずないのに。
手に入れたものは手放さないタイプの人なの?
今まで彼が何かに執着するようすを見たことがなかったけれど。
ふふ、そもそも私は彼のほとんどのことを知らないわ。
今や私達は形だけの夫婦だから。
「何がおかしい?」
「あなたは謎に満ちていると思って。」
「そうだろうな。」
「トラヴィス様は私と一緒に寝たいの?」
「当たり前だ。
そのことに関しては一歩も譲るつもりはない。」
「そう?
別にいいけれど。」
「一つだけ聞いておきたいことがある。
正直に答えてほしい。」
「何かしら?」
「男はいるのか?」
「えっ?」
「好きな男や夜を共にした男はいるのか?」
トラヴィス様は、顔を顰め、声を捻り出すように問いかける。
「まさか。
そんなことをしないわ。
私達は夫婦なのよ。」
「わかった。
それならいい。」
そもそも私は彼と別れたかったわけではない。
彼に見向きもされず、一人ぼっちの毎日が耐えがたかっただけだ。
だから、私が浮気するはずがない。
彼が離縁を望まないなら、夫婦でいることに異論などないのだ。
ワインを二人で飲んだ後、寝室のベッドに並んで横たわる。
久しぶりにこのベッドに寝たけれど、不思議と落ち着く。
まるで、旅行から帰って来たかのようにしっくり来るし、良く眠れそう。
不思議ね。
さっきまではこのまま離縁して、別々の道を歩むものだと思っていたのに、こうしてまた、トラヴィス様と同じベッドで眠ることになるなんて。
彼が私と共にベッドに横になるのはいつぶりだったかしら。
思い出せないわ。
いつも私が先に寝てしまっていたから、彼がいつベッドに戻ってきたのかさえ知らず、私にとっては一緒に寝ているイメージはないのだ。
それなのに今、隣に彼がいて、同じ時間を過ごしている。
二人でベッドに並ぶなんて、今更ながらなんだか恥ずかしい。
彼のことを好きな私は、相変わらず彼を意識し、緊張してしまう。
そんな中、彼がこちらをじっと見ている視線を感じる。
「夜会に行く時、君は僕の顎にキスをしたよね?
あれをもう一度してくれないか。
挨拶で構わないから。」
「えっ、あれですか?
もう忘れてください。」
あれはもう離縁を覚悟していたから、せめて最後にと勢いでやってしまったのだ。
今更ながら恥ずかしい。
普段の私なら、あんなことは絶対にしないのに。
「あの時、思いがけなくて、正直すごく嬉しかったんだ。
君から僕に何かしてくれたのが、初めてだったから。」
そうだったかもしれない。
私は最初からトラヴィス様に憧れていて、彼の堂々とした振る舞いに圧倒されていたし、恐縮して自分から何かをするなんて、考えたこともなかった。
彼のそばにいるだけで、精一杯だったから。
「私からキスなんてして、嫌じゃなかった?
夫婦だからギリギリ許されるかと思ったの。
ごめんなさい。」
「謝らないで、むしろもっとして欲しいんだ。」
その言葉に戸惑いながらも、トラヴィス様が望むのならと、彼にそっと近づき、顎にやさしくキスをする。
これでいいのかしら?
「うん、いいね、もう少し続けて。」
「えっ、もっとですか?」
私は驚きつつももう一度そっとキスをすると、トラヴィス様はうっとりするような眼差しで私を見つめて、そのまま静かに抱きしめた。
そして、久しぶりに彼は私を求めるのだった。
1,000
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
もう演じなくて結構です
梨丸
恋愛
侯爵令嬢セリーヌは最愛の婚約者が自分のことを愛していないことに気づく。
愛しの婚約者様、もう婚約者を演じなくて結構です。
11/5HOTランキング入りしました。ありがとうございます。
感想などいただけると、嬉しいです。
11/14 完結いたしました。
11/16 完結小説ランキング総合8位、恋愛部門4位ありがとうございます。
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
婚約破棄を、あなたのために
月山 歩
恋愛
私はあなたが好きだけど、あなたは彼女が好きなのね。だから、婚約破棄してあげる。そうして、別れたはずが、彼は騎士となり、領主になると、褒章は私を妻にと望んだ。どうして私?彼女のことはもういいの?それともこれは、あなたの人生を台無しにした私への復讐なの?
こちらは恋愛ファンタジーです。
貴族の設定など気になる方は、お避けください。
王子様への置き手紙
あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯
小説家になろうにも掲載しています。
旦那様。私が悪女ならば、愛人の女は何になるのかしら?
白雲八鈴
恋愛
我が公爵家主催の夜会の最中。夫が愛人を連れてやってきたのです。そして、私を悪女という理由で離縁を突きつけてきました。
離縁して欲しいというのであれば、今まで支援してきた金額を全額返済していただけません?
あら?愛人の貴女が支払ってくれると?お優しいわね。
私が悪女というのであれば、妻のいる夫の愛人に収まっている貴女は何なのかしら?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる