いちいちやらかす僕の妻

月山 歩

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7.新しいお茶

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 王宮では、今日もナイジェルの執務は早々に終わり、昼頃にはボーとしている。

 どうしてこんなに人よりも、早く終わってしまうのか、自分でもわからない。

 退屈過ぎて、早く帰って、コーデリアの話を聞きたい。

 すると、影が僕に合図を送って来た。
 コーデリアについている影は優秀だから、たいしたことない時に、何か言って来ることはない。

 だとすれば、まあまあの事件勃発が、予想される。

 僕はもう切り上げて、帰ることにする。

「何だ?」

「コーデリア様は穴に落ちました。」

「は?
 怪我は?」

「ないようです。
 執務が終わるまで、待ってもいいか悩みましたが、日が暮れると、面倒なので、参りました。」

「ああ、ありがとう。
 そこに、案内してくれ。」

「はい。」

 影に案内されて、馬車で向かった先には、一軒の民家があった。

 そこの畑の方から、か細い声が聞こえてくる。

「すみませ~ん。
 誰かいませんか~?」

 耳を澄ますと聞こえる程度であり、とてもじゃないが、人の家の畑の中を通りがかる人なんていない。

 僕でなければ、見つけるのは困難なのだ。

 コーデリアはどこまでも、面白い。
 どうしてこうなる?

 ナイジェルは、影に示された穴が空いただけの古井戸を覗く。

「コーデリア、今日はここかい?」

「ナイジェルいいところに。
 私達、落ちちゃって、上がれないの。
 助けて。」

「ああ、そのようだね。
 この縄に捕まって。
 上がって来れるかい?」

「私は上がれるけど、こちらはどうかしら?」

「あなた、上がれる?」

「やってみます。」

 穴に落ちたのは、コーデリアだけではなかったようで、二人はやや土埃に汚れつつも、なんとか順番に穴から地上に、縄をつたって、上がって来た。

「あー、助かったね。
 喉が渇いたわ。」

 笑顔で生還を喜んでいる二人に、ナイジェルは、持って来た水を渡す。

「ありがとう。」

 元気そうで何よりだ。

「こちらは?」

 もう一人の女性が申し訳なさそうに、僕を見る。

「こちらは、私の夫のナイジェルよ。
 いつも必ず助けてくれるの。」

 コーデリアは得意気に言っているが、君も落ちてるからな。

「ありがたいです。
 どうぞ、家で休んで行ってください。」

 その人は気の良さそうな壮年の女性だった。

「いや、僕は。」

「ナイジェル、チェリルさんは、あのお腹の調子が良くなるお茶を作っている方よ。」

「ああ、あのお茶の。」

 話しながら、何となく、彼女の家の居間で、二人はお茶をご馳走になる。

「これは、新しいお茶なんですよ。
 眠気が、スッキリするんです。

 コーデリア様は、これの試飲に来てくれて。

 でも、私は古井戸のことを忘れて、農作業中に穴に落ちてしまって。

 コーデリア様が来た時、井戸の中だったんです。
 今日はコーデリア様が来る日で、本当に良かった。

 そうでなければ、私は穴に落ちたまま、誰にも見つけられず、亡くなっていたかもしれません。

 コーデリア様に感謝でいっぱいです。」

「チェリルさん、でも、助けてくれたのは、ナイジェルよ。」

「でも、コーデリア様が来なかったら、ナイジェル様も来なかっただろうし、お礼と言ってはなんですが、このお茶を好きなだけ差し上げます。

 その、知り合いの方にもお渡しください。」

「では、ありがとう。
 お言葉に甘えて、知り合いにも渡すわ。

 今までのお茶も美味しかったけど、この新しいお茶も、とても飲みやすいわね。」

「ああ、美味しいね。
 正直、眠気がスッキリするかはわからないけれど。」 

「仕事中とかで、眠いのにスッキリしないといけない時とかに飲んで、ぜひ、どうだったか感想を教えていただけると助かります。」

「わかりました。
 では、僕達はそろそろ。」

「コーデリアさん、今日は本当にありがとうございました。
 明日にも、穴を塞ぎます。」

「そうですね。
 それがいいと思いますよ。
 ではさようなら。」

 新しいお茶をもらった二人は、チェリルの家から、馬車で邸に戻る。



 帰りの馬車の中で、

「ナイジェル様、わざわざ彼女の家まで来ていただいて、迷惑をかける私のこと怒ってらっしゃいますか?」

「いや、今日も想像の斜め上で、面白かったよ。」 

「どうしてナイジェル様はそんなに私に優しいの?
 今までそんな人に会ったことがなくて。

 ナイジェル様の優しさが、なくなったらと思うと怖くてたまらないんです。」 

「僕は君に優しくするって言ったよね。
 約束を守っているだけだから、君は気にしなくていいよ。

 少なくとも僕は君がいなかったら、毎日つまらない人生だったと思うんだ。

 でも、今はこんなに毎日面白い。

 僕は君が好きだよ。
 出会えて本当に良かったと思ってる。」

「ナイジェル様、私も好きです。
 私を選んでくれてありがとう。」

 そう言うと、ナイジェル様は私のほっぺたに、キスをしてくれた。

 私は、ナイジェルが失敗しても、本当に嫌いにならない人だと知るたびに、ますますナイジェルへの好きが止まらない。

 こんな人は、今までいなかったし、これからも知り合うことはないだろう。

 私は、自分を受け止めてくれるたった一人の人と、結婚できた幸せを噛み締める。

 いつまでも、ナイジェルと一緒にいたいと心の底から思うコーデリアだった。








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