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第2章
第4話(再会)
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詩歩理は手紙を読んだ。筆で書かれた端正な文字に嘉音の気持ちが込められていた。詩歩理の目から涙が溢れ出す。『一緒に飲みたいです』と書かれた詩歩理の手紙が嘉音に届いた。
嘉音「こんばんは」
ウエティング・バーで待っていた嘉音は、詩歩理が入ってきたのを確かめ、一呼吸おいて声を掛けた。二人とも黒のフォーマルな服装でレストランの雰囲気に溶け込んでいる。ここは配偶子センター内のレストランではない。レストランは賑わっていたが二人には何も聞こえなかった。受付ロボに案内され、詩歩理が先に席についた。続いて嘉音が座る。
嘉音「勝手なことをして申し訳ありません」
嘉音には聞きたいこと、言いたいことが沢山あったが、いまは浮かばなかった。元気そうで、記憶の中より一段と魅力的な詩歩理がいる。詩歩理と一緒に食事できる。少なくともマッチングの不達成感は薄れていく。彼女に良いパートナーがいるなら祝おう、嘉音はそう思った。
詩歩理「お招きいただきありがとうございます。手紙をみてビックリしました」
嘉音「どうも申し訳ありません。さぞかし驚かれたでしょう。お忙しい中ありがとうございます」
シャンパンの栓が抜かれグラスに注がれる。グラスの底から小さな泡が二人の積み重ねた別々の時間を紡ぐように切れ間なく立ち上がる。嘉音が持ってきたシャンパンだ。お互いを見つめ合う目は、優しく、穏やかで、想いやりが込められていた。
詩歩理「マッチングをお断りしてしまい申し訳ありませんでした」
嘉音「誤るのは私のほうです。気持ちの整理ができなくてシオリさんを巻き込んでしまいました」
唐突な詩歩理の言葉に嘉音は遮るように言ったが、詩歩理はマッチング中止をセンターに連絡したときの話を続けた
実験が遅れ、詩歩理は約束の時間に遅れそうになっていた。慌てて研究室を出て、近道と思い通り慣れていない道を小走りしていた。ちょっとした段差に躓いて衝伏せる。眼鏡が外れて前に飛んだ。ちょうどそのとき前から来ていた自転車が眼鏡を轢く。「ガチャ」という音がする。自転車に乗っていた若い男性は自転車から飛び降り、詩歩理のもとに駆け寄った。
若い男「怪我されていませんか?救急車を呼びましょうか?すいません」
蒼白になりながら謝っている。
詩歩理「驚かせしまってごめんなさい。私が自分で転んだだけなの。あなたが謝ることないわ」
詩歩理は直ぐに立ち上がりながら言った。若い男性は、謝りながら倒れていた自転車を立て起こし、何度も頭を下げながら走り去った。放置しては危険と壊れた眼鏡のガラス片も拾い集めた。脱げていた片方の靴を履き直し走ろうとした。靴のヒールがぐらつく。約束の時間に遅れる。こんなに慌てたことはない。動揺する。「約束の時間に遅れるような相手を自分は許せない」、「そんな自分は嘉音に相応しくない」詩歩理は自分の決断に当惑しながらマッチング中止をセンターに連絡した。
詩歩理「嘘みたいな話でしょう。でも本当なんです。そそっかしくて。約束の時間に遅れる自分が許せなくて、自分に嫌気がさしてマッチング中止を連絡してしまいました」。
嘉音「素敵な方がいてマッチングを機会に決断されたのだろうかと考えていました」
グラスを重ねるごとに二人の会話は弾み、カルベネソービニオンの赤ワインをフルボトルで注文する頃には、久しぶりにあった友だちが話をしているようであった。
嘉音「こんばんは」
ウエティング・バーで待っていた嘉音は、詩歩理が入ってきたのを確かめ、一呼吸おいて声を掛けた。二人とも黒のフォーマルな服装でレストランの雰囲気に溶け込んでいる。ここは配偶子センター内のレストランではない。レストランは賑わっていたが二人には何も聞こえなかった。受付ロボに案内され、詩歩理が先に席についた。続いて嘉音が座る。
嘉音「勝手なことをして申し訳ありません」
嘉音には聞きたいこと、言いたいことが沢山あったが、いまは浮かばなかった。元気そうで、記憶の中より一段と魅力的な詩歩理がいる。詩歩理と一緒に食事できる。少なくともマッチングの不達成感は薄れていく。彼女に良いパートナーがいるなら祝おう、嘉音はそう思った。
詩歩理「お招きいただきありがとうございます。手紙をみてビックリしました」
嘉音「どうも申し訳ありません。さぞかし驚かれたでしょう。お忙しい中ありがとうございます」
シャンパンの栓が抜かれグラスに注がれる。グラスの底から小さな泡が二人の積み重ねた別々の時間を紡ぐように切れ間なく立ち上がる。嘉音が持ってきたシャンパンだ。お互いを見つめ合う目は、優しく、穏やかで、想いやりが込められていた。
詩歩理「マッチングをお断りしてしまい申し訳ありませんでした」
嘉音「誤るのは私のほうです。気持ちの整理ができなくてシオリさんを巻き込んでしまいました」
唐突な詩歩理の言葉に嘉音は遮るように言ったが、詩歩理はマッチング中止をセンターに連絡したときの話を続けた
実験が遅れ、詩歩理は約束の時間に遅れそうになっていた。慌てて研究室を出て、近道と思い通り慣れていない道を小走りしていた。ちょっとした段差に躓いて衝伏せる。眼鏡が外れて前に飛んだ。ちょうどそのとき前から来ていた自転車が眼鏡を轢く。「ガチャ」という音がする。自転車に乗っていた若い男性は自転車から飛び降り、詩歩理のもとに駆け寄った。
若い男「怪我されていませんか?救急車を呼びましょうか?すいません」
蒼白になりながら謝っている。
詩歩理「驚かせしまってごめんなさい。私が自分で転んだだけなの。あなたが謝ることないわ」
詩歩理は直ぐに立ち上がりながら言った。若い男性は、謝りながら倒れていた自転車を立て起こし、何度も頭を下げながら走り去った。放置しては危険と壊れた眼鏡のガラス片も拾い集めた。脱げていた片方の靴を履き直し走ろうとした。靴のヒールがぐらつく。約束の時間に遅れる。こんなに慌てたことはない。動揺する。「約束の時間に遅れるような相手を自分は許せない」、「そんな自分は嘉音に相応しくない」詩歩理は自分の決断に当惑しながらマッチング中止をセンターに連絡した。
詩歩理「嘘みたいな話でしょう。でも本当なんです。そそっかしくて。約束の時間に遅れる自分が許せなくて、自分に嫌気がさしてマッチング中止を連絡してしまいました」。
嘉音「素敵な方がいてマッチングを機会に決断されたのだろうかと考えていました」
グラスを重ねるごとに二人の会話は弾み、カルベネソービニオンの赤ワインをフルボトルで注文する頃には、久しぶりにあった友だちが話をしているようであった。
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