47 / 71
雨の中二人きり②
しおりを挟む
今日は天気があまり良くなかったが、今のところ雨はやんでいた。そうは言っても、今にも降り出しそうな曇り空だった。なんだか嫌な予感がする。僕はそう思った。
だけれども、僕はそれ以上にいいことがあるとも感じていた。というのも、今、僕の横にはあの、遠くから眺めていた神楽様がいるのだ。僕にとっては、それだけで雨なんて帳消しになるのだ。彼が、ここにいる。ああ。なんていい日なのだろうか。もれるため息は幸せで満ちている。隣に歩いている神楽様を見て、僕はもう一度幸せを漏らした。
「どうしたの、祐一?」
神楽様が僕がこっそり覗いていたのに気が付いていたらしく、僕の顔を仕返しと言わんばかりにぐいっと、のぞき込んできた。その行動に僕はまた動揺して、思わず視線をそらした。こういうちょっとしたことに、何気に気づくのが神楽様だが、今の僕は神楽様でなくとも、平常心を保てていないのは明らかだった。その証拠に、心臓が打つ脈拍はひどく速足になっていた。
「な、何でもないよ。」
いや、本当はなんでもあるのだ。焦って早口になっていることに、もちろん神楽様は気がついたのだ。その証拠に、
「本当に?本当になんでもない?」
神楽様はすかさず、僕にアタックしてきた。あの、微笑とともに。ただ一つ違ったのは、教室にいた時よりも、やっぱり柔らかい表情に見えたことだった。いつも通りのいじわるから垣間見えるのは、神楽様の温かさなのだ。これが、僕の好きな神楽様なのだと実感した。
「いや、だから、その…」
僕は神楽様にこうやって、攻められていくのが嫌いではない。じわじわと、隅から攻められて、最終的には逃げ場がなくなっている、この感じ。神楽様だから、こんなにも僕は満たされるのだろう。きっと、他の人では駄目なのだ。神楽様でないとダメなのだ。
心の奥底から、流れてくるこの思い。僕はその思いに堪忍して、思っていることすべてを口に出そうと思った。
「その、僕が言いたいのは…神楽様は、ずるい、かっこよすぎる。」
雨が降ってきた。今まで耐えていた雨雲が、耐えきれなくなってきたようだ。しとしとと、冷たい雨。でも、僕の心はこの上なく晴れやかだ。神楽様に初めて伝えられた気がする。
「祐一、傘もってる?」
僕は、いそいでカバンの中を探した。あれ、あれ。僕は気が付いた。いろいろあって、今日はいつものルーティンが乱れてるのだ。折り畳み傘を毎日持って歩いている、僕としては痛恨のミスだった。おそらく、傘は机のよこにかけられっぱなしだ。僕は、首を横にふった。
「わかった。じゃあ、祐一、走るぞ。」
落ち着いた声とは裏腹に、神楽様の口調はすこし早口だった。きっと、この雨は、強くなる。
僕がうなずくと、神楽様は僕に手を伸ばしてきた。僕の手をつかむと、神楽様は僕のことをまっすぐ見てこう言うんだ。
「つなげって、お願いしたのはお前だからな。」
つながれた手は骨ばった男らしい大きな手だった。体温が伝わってくる。僕の好きな、彼のあたたかさだ。
だけれども、僕はそれ以上にいいことがあるとも感じていた。というのも、今、僕の横にはあの、遠くから眺めていた神楽様がいるのだ。僕にとっては、それだけで雨なんて帳消しになるのだ。彼が、ここにいる。ああ。なんていい日なのだろうか。もれるため息は幸せで満ちている。隣に歩いている神楽様を見て、僕はもう一度幸せを漏らした。
「どうしたの、祐一?」
神楽様が僕がこっそり覗いていたのに気が付いていたらしく、僕の顔を仕返しと言わんばかりにぐいっと、のぞき込んできた。その行動に僕はまた動揺して、思わず視線をそらした。こういうちょっとしたことに、何気に気づくのが神楽様だが、今の僕は神楽様でなくとも、平常心を保てていないのは明らかだった。その証拠に、心臓が打つ脈拍はひどく速足になっていた。
「な、何でもないよ。」
いや、本当はなんでもあるのだ。焦って早口になっていることに、もちろん神楽様は気がついたのだ。その証拠に、
「本当に?本当になんでもない?」
神楽様はすかさず、僕にアタックしてきた。あの、微笑とともに。ただ一つ違ったのは、教室にいた時よりも、やっぱり柔らかい表情に見えたことだった。いつも通りのいじわるから垣間見えるのは、神楽様の温かさなのだ。これが、僕の好きな神楽様なのだと実感した。
「いや、だから、その…」
僕は神楽様にこうやって、攻められていくのが嫌いではない。じわじわと、隅から攻められて、最終的には逃げ場がなくなっている、この感じ。神楽様だから、こんなにも僕は満たされるのだろう。きっと、他の人では駄目なのだ。神楽様でないとダメなのだ。
心の奥底から、流れてくるこの思い。僕はその思いに堪忍して、思っていることすべてを口に出そうと思った。
「その、僕が言いたいのは…神楽様は、ずるい、かっこよすぎる。」
雨が降ってきた。今まで耐えていた雨雲が、耐えきれなくなってきたようだ。しとしとと、冷たい雨。でも、僕の心はこの上なく晴れやかだ。神楽様に初めて伝えられた気がする。
「祐一、傘もってる?」
僕は、いそいでカバンの中を探した。あれ、あれ。僕は気が付いた。いろいろあって、今日はいつものルーティンが乱れてるのだ。折り畳み傘を毎日持って歩いている、僕としては痛恨のミスだった。おそらく、傘は机のよこにかけられっぱなしだ。僕は、首を横にふった。
「わかった。じゃあ、祐一、走るぞ。」
落ち着いた声とは裏腹に、神楽様の口調はすこし早口だった。きっと、この雨は、強くなる。
僕がうなずくと、神楽様は僕に手を伸ばしてきた。僕の手をつかむと、神楽様は僕のことをまっすぐ見てこう言うんだ。
「つなげって、お願いしたのはお前だからな。」
つながれた手は骨ばった男らしい大きな手だった。体温が伝わってくる。僕の好きな、彼のあたたかさだ。
0
あなたにおすすめの小説
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
先輩たちの心の声に翻弄されています!
七瀬
BL
人と関わるのが少し苦手な高校1年生・綾瀬遙真(あやせとうま)。
ある日、食堂へ向かう人混みの中で先輩にぶつかった瞬間──彼は「触れた相手の心の声」が聞こえるようになった。
最初に声を拾ってしまったのは、対照的な二人の先輩。
乱暴そうな俺様ヤンキー・不破春樹(ふわはるき)と、爽やかで優しい王子様・橘司(たちばなつかさ)。
見せる顔と心の声の落差に戸惑う遙真。けれど、彼らはなぜか遙真に強い関心を示しはじめる。
****
三作目の投稿になります。三角関係の学園BLですが、なるべくみんなを幸せにして終わりますのでご安心ください。
ご感想・ご指摘など気軽にコメントいただけると嬉しいです‼️
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
溺愛系とまではいかないけど…過保護系カレシと言った方が 良いじゃねぇ? って親友に言われる僕のカレシさん
315 サイコ
BL
潔癖症で対人恐怖症の汐織は、一目惚れした1つ上の三波 道也に告白する。
が、案の定…
対人恐怖症と潔癖症が、災いして号泣した汐織を心配して手を貸そうとした三波の手を叩いてしまう。
そんな事が、あったのにも関わらず仮の恋人から本当の恋人までなるのだが…
三波もまた、汐織の対応をどうしたらいいのか、戸惑っていた。
そこに汐織の幼馴染みで、隣に住んでいる汐織の姉と付き合っていると言う戸室 久貴が、汐織の頭をポンポンしている場面に遭遇してしまう…
表紙のイラストは、Days AIさんで作らせていただきました。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる