イケメン特集。~イケメンはいるよ、どこにでも~

夕時 蒼衣

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松下蒼馬~秀才くんとの秘密の放課後~

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 勉強が苦手だ。そんな私が気づかぬうちに目で追ってしまうのは、学年主席の松下蒼馬くんだ。
 彼は静かでクール。あんまり笑わなくて、なに考えてるかわからないと言って、気持ち悪がる人もいるけど物は言い様だ。つまりはミステリアス。頭の良さから、クラスでは一目おかれている。
 一重の目はキリッとしていて、細くてすらっとした体型。肌が白くて髪は少し茶色がかっていた。
 蒼馬君を初めて見たあの日、雪の国の王子様みたいなイメージをもった。
 蒼馬君の名前を初めて知ったあの日、白と青のグラデーションが綺麗なペガサスを想像した。
 彼を見ているうちに、どんどんと彼のことを好きになっていった。尊敬から愛しさへと変わった。
 そして、彼に少しでも近づこうと勉強をしている今に至る。家では弟やお姉ちゃんがいて集中できないため、仕方がなくこの図書館で勉強しているのだ。
 正直言うと、図書館はあまり好きではない。誰もいないように静かで、気味が悪い。人はいるが、まばらだ。時々、歩く足音と本を棚に戻す音だけが響く。
 おまけに集中はできても、問題は解けない。そろそろ図書館にきてから1時間ほどがたつが、目標の半分も終わっていなかった。
 私はルーズリーフに書いた数式をまた、消しゴムで消した。その時、勢い余ってルーズリーフが飛んでいった。飛んでいった先には、私が毎日、目で追っている彼の姿がありました。思わず、「あっ」と声がでた。静かな部屋に私の声だけが響く。その瞬間、彼と目が合いました。
 いつも一方的に見つめているはずなのに、今日は目があった。私の胸はドキドキがとまらなかった。
 彼は私の落としたそのルーズリーフを手にとり、私の方へと歩いてきてくれた。彼は私の解きかけの問題を歩きながら見ていた。
 きっと、勉強できないことがばればれだ。私は恥ずかしさと緊張でもうどうすればいいかわからなくなり、わざとらしく目をそらした。
 蒼馬君は私の座っている机の近くにそのルーズリーフをそっと置いた。私はその間もうつむいたままだった。ただ、彼がルーズリーフをおいた時に会釈をするだけだった。ここでありがとうと言って、少しだけでも話しかけられれば仲を深められるかもしれないのに。心の中で私は私のばかとつぶやいた。
 そのとき、椅子を引く音が聞こえた。音のした方へ顔を向けると、椅子を一つはさんだ席に蒼馬君は座っていた。驚く私をよそに、彼は先ほどのルーズリーフを自分のほうに引き寄せて、端っこの方に数式を書き、私に返してくれた。
 数式の隣に、「同じクラスだよね」と崩した文字で書いてあった。
 私は嬉しかった。同じクラスだからといったら当然なのかもしれないが、私のことを知ってくれてることが嬉しかった。
 「そうだよ」とその下に書き、彼にその紙を見せた。それからしばらく、彼は黙って隣にいてくれた。たまに私のペンがとまっていると、横から手が伸びて、ヒントを書いてくれた。私は彼が隣で座っているという事実が信じられないくらい嬉しかった。
 目標の印のついた問題を解き終えたときに、彼はポケットの中から出したメモ帳に、またスラスラと崩れた字で、でも綺麗な字で書いて私に渡してくれた。
 メモ帳にはメールアドレスと携帯番号が書かれてあった。その下には「困ったら連絡してね。放課後はしばらく俺、図書館にいるから」と書いてあった。
 私が「ありがとう」と紙に書いたのをみて、じゃあ、と手を上げると彼は部屋をあとにした。
 私はそのメモ帳を丁寧に畳むと、そっと胸に当てた。彼に会える放課後が、この静かな図書館が待ち遠しかった。
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