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正ヒロインと勇者は出会う
しおりを挟む「貴方、何者なの?」
初めて出会った時
気付けば私は勇者にそう問いかけていた。
私にとってその出会いは衝撃で
この世に、これ程強い人が存在するなんて、それまで想像した事も無かった。
人々にとって、勇者がどんなに心強い存在なのか。
魔王が現れて数百年間、人々が求め続けていたのだから、勇者の必要性を頭では理解していた。
だけど実際、勇者と言う存在を目の当たりにして、私は本当の意味でそれを理解したその瞬間、興味と言う名の好意を止める術は無かった。
♢♢♢
村を壊滅させた炎龍を倒しにその住処へと赴いた私がピンチになったときに、勇者は現れた。
巫女は魔物に見つからないよう邪気払いや結界を張れても、攻撃方面に優れている訳じゃ無い。
数百年間魔王の存在に抑圧され続け、邪気を浴び続けた龍は、勇者により西の魔王が消失した後に活性化して村を襲った。
当代の巫女だった母は炎龍と善戦したが、惜しくも力を使い果たし倒れてしまった。
残された村人達は巫女を死守しようと足掻いたが、その挙句に炎龍に多くの者を殺されてしまった。
だから私は、炎龍の伝承を引継ぐ巫女の後継者でありながらー…、いや。だからこそ。
人に害をもたらすようになった悪しき炎龍を、決死の覚悟で倒そうと意気込んでいた。
けれども、やはり幾ら炎龍の知識があっても、私はまだ未熟な巫女見習いでしか無かった。
巫女の力の源は、神より授かった聖なる光。
その光は闇の魔を祓い、結界を張って人々を守り、
さらに〝月読み〟によって災厄の気配を読み取ることができる。
けれど——それでも救えなかった命がある。
回復はさせられず、回復ポーションには限りがあるので、皆を災厄から守るには、祓う力で前に出て戦うしかない。
月読みによる作戦も、聖力による攻撃もーー理不尽な程に桁違いな強度と暴虐な炎龍の前ではまったく歯が立たない。
邪気払いはあっという間に炎で掻き消され、一緒に戦った村人達で編成された兵達を守る為に張った結界も数度の攻撃で破られ、皆大きな傷を負い、倒れている。
炎から身を守るための結界も、鋭い熱に砕かれ粉々になった。
(私の力じゃ、到底歯が立たない…。あの時の母のように、私も皆を守れなかった…)
炎を前に絶望しながら身を焼かれてしまうと身構えた時に勇者は現れた。
炎龍が一瞬で倒され、目の前に広がるのはただの静寂ーー私の頭の中が一瞬で空白になり、何もかもが信じられなかった。
私は目の前の光景に目を疑い、胸が震えた。勇者いた。
長い絶望の中、ただひとつ、希望の光が差し込んだ。
それは、私が今まで見たこともない力強い光――そして、それが勇者によるものだと気づいた瞬間、胸が高鳴った。
「貴方、何者なの?」
「俺は王都より仕わされた勇者」
ほぼ無意識で問いかけた私に反応して、振り返った勇者と目があったその時。
「ここまで良く持ち堪えたね。
ーー後は下がってて、巫女殿」
「私は、結界が張れます。
それとまだ、聖力で邪気を払えます。
私の納める村のことですから、最後まで戦わせて」
これまでの私が知らない何かが、始まる予感がしていた。
♢♢♢
炎龍が勇者に倒されてから数日が経過したある日の事。
被害を受けた村に王宮から支援の手が届いた。巫女の存在を知った王宮は、魔王討伐を命じられている勇者の仲間として、私を王都へ呼び寄せた。
どうやら巫女の様に村全体を覆える程、高域な結界術や邪気払いを使える者は、数百年前存在した賢者以来、王都に現れなかったそうだ。
私は王から勇者一行のメンバーとして、この国に住う民として。そして村を守護する巫女として、魔王討伐に貢献せよとの命を受けた。
再び勇者に会えてーーしかもその仲間になれるとわかった時は魔王討伐と言う途方もない名目にも関わらず、不安と同時にこれから始まる旅へ何処か希望と期待が湧いたのは、勇者と言う存在の心強さを知っていたから。
だけど、そうやって人々に大きな希望を与え、栄光と名誉を万人に讃えられている勇者が、実はただ家族を大切にしていた平凡な人間で、本人は栄光も名誉も興味が無い。
彼はもう、守りたい家族も、守りたかった故郷も西の魔王に殺され失っているから。
それでも、戦うことでしか自分を保てないのだと、何度も自分に言い聞かせていると、勇者一行の仲間に聞いた。
彼はもう、戦いたくは無いのに。
他人から求められるままに戦い続けている。
何故戦い続けるのか――それは、他人から求められるままに戦う宿命を受け入れているからだ。
勇者は力が強いだけでは無い。
ただ悲しいだけでもない。
人としての芯の強さがある事を知ったのは、勇者と仲間になった後のこと。
私は勇者に惹かれていった。
その強さに魅かれるだけでなく、彼が持っていた「人としての芯の強さ」に、私は心の中で無力感や恐れを抱えていた自分を見つけた。
彼と一緒にいることで、少しずつ自分を励まし、強くなれる気がしたからだ。
ーー私が勇者に惹かれてゆくのは、当然のことだったーー
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