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旅の前に対面する
しおりを挟む勇者とユウフェは夕焼けに染まる、王都の美しい景色を2人で堪能した後、馬車に乗り帰路へと向かった。
(…あ、危ない所でした。
お優しい勇者様に、本当の事を言ってしまったら
王都に残ることになりかねません。そうなれば、物語が変わってしまう所でした…)
勇者の指摘はかなり的を射ていた。
勇者の不在を見計らって、南の魔王の指示により、ダークは王都の結界を壊し、王都に魔物を引きいれ、多くの被害を出す事になっている。
ユウフェの父であるヴィクレシア公爵は、王都に侵入した魔物を迎え撃つため軍を率いて戦い、死を迎えると言う程の大きな事件だ。
物語には、東の魔王の情報を得て、意気込んで帰ってきた勇者一行は、王都の壊滅具合に唖然としたと言う描写がある。
何故こんな事になるかと言うと、どの魔王も数百年間、王都の陥落を試みていたようだが、ずっと手を出せずにいた。
それは、王都周辺にある結界のせいだ。
しかしその結界を、訳あってダークは壊す事が出来る。
ダークにはある狙いがあって、そんな事をする訳だが、ダークにとって計画の邪魔になり得る勇者の不在時を狙われる。
だからと言って、勇者を王都に留まらせる訳にはいかないのだ。何よりも魔王討伐は優先される、東の魔王を早く討伐する為に必要な旅に行かなければいけない。
現在残っている魔王は北、南、東の魔王。
その中でも、東の魔王はアンデッドの魔王とも呼ばれており、魔王の中でも各地で数多の悲劇を生み出している。
今回の旅は、そんな東の魔王を倒す為に、必要不可欠なヒロインのスキルアップや、魔王の情報を得られるだけでは無く
勇者にとっても。東の魔王を早めに倒す事は大きな意味のある事だ。
東の魔王討伐を長引かせれば、する程に。勇者はより傷つき、後悔をする事になる。
(…王都も、お父様の事も。
私が何とかしてみせます。
でないと、勇者様に嘘をついた事にもなってしまう…)
馬車に揺られながら、密かな決意を込めて、ユウフェは指輪を眺めていた。
最近ではもう、住み慣れた勇者の邸宅へつき、屋敷の扉を開けると
ユウフェが実家から連れてきた数人の使用人達が「お帰りなさいませ」と出迎えてくれた。
そして、白髪に髭を生やした執事は、やや慌てた様子で、主人は在中の屋敷で待っていた客人について勇者とユウフェに報告をした。
「約2時間程前からパーティーの方々お見えになっております。
王宮に寄せられた情報により、とうとう旅の目処が立ったようで。
勇者であるレイヴン様の帰りを此処で待つと…」
♢♢♢
勇者とユウフェが出掛けている間に、勇者のパーティーメンバーが訪れ、客間で待っていると言う知らせを受けて、ユウフェの瞳がぱあぁっと輝き出した。
ユウフェがここまで喜ぶのは致し方ない事であった。小説に登場していた主要キャラクター達である彼等はユウフェの憧れそのもの。
サブヒロインでしか無いユウフェとは本来であれば、ほぼ関わりはない。
彼等と顔を合わせる事は王宮でしかなかったので、自分のプライベート空間に彼等がいると言うのはユウフェにとって青天の霹靂と言えた。
「こうしては居れません、私お茶の準備を!!」
慌ててお客様を出迎える準備をしようとすると、執事は興奮しているユウフェを落ち着かせるように「既にメイドが出しておりますから」と穏やかな声音で状況を説明してくれた。
それを聞いて、ユウフェは少し残念そうに「そうですか…」と項垂れる。※あわよくばお茶を配りに行くふりをして、現在揃っているパーティーメンバーを見たかった。
(折角だから勢揃いした勇者御一行をこの目で見たい…ううん、此処は我慢です。
きっと重要なお話をされるから此処へ来たのですよね)
「ユウフェ?ぼうっとしてどうしたの?」
顔の前でひらひらしていた勇者の右手をユウフェは無意識にそっと両手で掴む。
「折角ですから勇者御一行の皆様、邸宅にお泊まりになってはどうかと思いまして。
もう夕暮れ時ですし、宜しければ夕飯も勇者様と皆様でご一緒していただくのはどうでしょうか?」
ヒンヤリとした小さな両手に包まれている右手と、上目遣いで見上げてくるアメジストの瞳に意識が逸れている勇者は、戸惑いながらも何とか質問を理解して頷いた。
「ぁ…ああ、確かにわざわざ皆揃って待っていたと言う事は、重要な話だろうし…
でもその…本当に良いのか?」
「勿論です!
それでは私、今から準備して来ますので、勇者様は先に皆様の所へ行ってください」
輝かんばかりの笑顔に、染まる頬を誤魔化す様に勇者は空いた手で口元を隠しながら握られた右手で、ユウフェの片手を引き寄せて言った。
「ユウフェに皆を紹介するよ」
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