35 / 48
第四章 憧れないからヤってしまおうと思います・編
4-11
しおりを挟む
翌日の早朝、二本目の『変身薬』を飲んだ私は、エルナトの街方面へ行く馬車に乗るため、レグルスと共に馬車乗り場にいた。
赤髪赤目の女の子を探している騎士を見かける。どうやら王女殿下に探されているらしい。
おそらく周りの言葉を聞かずに動いているのだろう。流石『ワガママ王女』だ。あと、『しつこい』だったか?
そのうち国王辺りが嗜めてくれるだろうと思っている。私を敵に回したくなければね。
エルナトの街に到着すると、まずギルドに向かってギルマスとリゲルさんに会った。
さすがに昨日の今日だ。
王女様の命令で、騎士さんが申し訳なさそうに訪ねてきたらしい。
王女様は『お別れも言ってないのに』と、大層怒ってらっしゃるそうだ。
騎士さんは「あんな目にあったのにわざわざお別れなんて言って出ていくわけないですよ──イエ、我々としては出来れば関わりたくな・・・国王と騎士団長から探す必要は無いと言われています。ただ王女殿下に納得して頂く為、探していたという形を取らせていただく必要があるので数日滞在させて頂きますが、その後は速やかに引き上げさせていただきます。──もし彼女が顔を出したらそう伝えてください」
そう言って、遠い目をしていたらしい。
現場にいた騎士さんなのかな?
「で、何をやらかし・・・いや、何があったんだ」
「はい、第二王子が王位簒奪の為にピヨさんを狙って私に毒を盛ったり婚約を申し込んできたりした上に、冒険者不適格の烙印を押すために一個小隊を差し向けてきたので、二度と手を出してこないように脅してきました!
あ、第二王子はその場で捕まっちゃったし、ここに来た騎士達は剣を握れない身体にしてきたんで、もうこの街には手出しは出来ません。おまけにこの街の安全は騎士団長さんが保証してくれたので安心してください!」
安心安全アピールの為、にっこり笑ってそう伝える。
なのに、ギルマスは逆に不安そうな目で私を見た。何故?
「──旅に出るのか?」
「はい。行きたいところが出来たんです。今日はそのご挨拶に。大変お世話になりました」
ギルマスにそう聞かれたのでペコリと頭を下げると
「そうか。平穏が訪れるが、寂しくなるな」
そう言って頭を撫でられた。
リゲルさんにも
「お元気で。きっと行く先々で色々あると思われますが・・・。ほどほどに──」
と、言われてしまった。
この二人が持ってる私のイメージってどんななの?
次に治療院に顔を出し、私は無事だと伝えた。
安心して泣き出したミモザさんを折角慰めたのに、旅に出ると言うとまた泣き出してしまったけど。
先生にもご挨拶をする。王宮の騎士が私を探していることを知っているようで、仕方ないねと言って送り出してくれた。
「いつでも帰ってきなさい」と、言ってくれたよ。
それから私は七星に会うために家に帰った。
七星は私が帰ってくることも旅に出ることも分かっていたようで、作り置きのご飯をいっぱい作ってくれていた。
「餞別よ。星良が巻き込まれるかどうかも分からなかったし、先入観もよくないと思って前もって言わなかったの。ごめんなさい」と言って。
因みに第二王子にそんな設定はなかったらしい。やはりもう乙女ゲームの内容からはかけ離れてしまっているようだ。
七星とは自分もいつか旅に出たいと思っているけど、色を変える魔道具が出来ない限り動けないから、だから──
「「いつかどこかで会おうね(会いましょう)」」
そう、約束した。
最後にレグルスにお別れをと思い探していると、ちょうど道に立っているのを見つけたので小走りで駆け寄った。
「レグルスさん!」
「お、スピカ。お別れは終わったか?じゃ、行くか」
レグルスが何故かそう言って歩きだした。
「え?どこ行くの?」
「『え?』って・・・もしかしてスピカは兄ちゃんを置いていくつもりだったのか?」
「だってレグルスにはここでの生活があるでしょう?」
「お、兄妹っぽくていいね。呼び捨て。これからそれでいこう!」
いつも心の中では呼び捨てにしてたからつい・・・って、いやいや・・・
「私は一人で大丈夫よ」
「今日初めて馬車に乗ったのに?
「うっ!」
「この世界のこと、エルナトと王宮しか知らないくせに?」
「うぅっ!」
「宿屋の取り方わかるのか?」
「はうぅっ!」
「いくら結界があっても毎日夜営と言うわけにも行かないだろ?
俺ならリストや元の世界のことも知ってるし、なんと言っても強い上に旅に慣れている。旅の相棒にはいいと思うんだけどなぁ。
それに女の子の一人旅はいくらピヨさんと紅さんがいても大変だぞ」
ううう、それを言われると・・・
「それに、スピカがどこかで何か問題を起こしているかと思うと心配で眠れそうにない」
ん??
「それに家も売ってしまったから、帰るところがない」
「え。エエエエエーッ!」
なんですと!?
『仕方ない。星良よ。足手まといになることはないだろう。こやつも連れていけ』
「ピヨさんがそう言うなら──。ではよろしくお願いします」
「よしよし、それでこそ俺の妹だ──って、ええー!?ピヨさんって、話せるのか!?」
『ふん。来やすく呼ぶな。我はまだ貴様が我を食べようと思考したことを許しておらん!』
楽しい旅になりそうです。
----------
リスト『異世界でやってみたい50のこと』
達成可能(4)
★異世界旅行をしてみたい
★こっちの世界にない景色を見てみたい
★いろんな種族に会ってみたい
★討伐をやってみたい
未達成(12)
達成済み(34)--新規(0)・確認済み(34)
----------
赤髪赤目の女の子を探している騎士を見かける。どうやら王女殿下に探されているらしい。
おそらく周りの言葉を聞かずに動いているのだろう。流石『ワガママ王女』だ。あと、『しつこい』だったか?
そのうち国王辺りが嗜めてくれるだろうと思っている。私を敵に回したくなければね。
エルナトの街に到着すると、まずギルドに向かってギルマスとリゲルさんに会った。
さすがに昨日の今日だ。
王女様の命令で、騎士さんが申し訳なさそうに訪ねてきたらしい。
王女様は『お別れも言ってないのに』と、大層怒ってらっしゃるそうだ。
騎士さんは「あんな目にあったのにわざわざお別れなんて言って出ていくわけないですよ──イエ、我々としては出来れば関わりたくな・・・国王と騎士団長から探す必要は無いと言われています。ただ王女殿下に納得して頂く為、探していたという形を取らせていただく必要があるので数日滞在させて頂きますが、その後は速やかに引き上げさせていただきます。──もし彼女が顔を出したらそう伝えてください」
そう言って、遠い目をしていたらしい。
現場にいた騎士さんなのかな?
「で、何をやらかし・・・いや、何があったんだ」
「はい、第二王子が王位簒奪の為にピヨさんを狙って私に毒を盛ったり婚約を申し込んできたりした上に、冒険者不適格の烙印を押すために一個小隊を差し向けてきたので、二度と手を出してこないように脅してきました!
あ、第二王子はその場で捕まっちゃったし、ここに来た騎士達は剣を握れない身体にしてきたんで、もうこの街には手出しは出来ません。おまけにこの街の安全は騎士団長さんが保証してくれたので安心してください!」
安心安全アピールの為、にっこり笑ってそう伝える。
なのに、ギルマスは逆に不安そうな目で私を見た。何故?
「──旅に出るのか?」
「はい。行きたいところが出来たんです。今日はそのご挨拶に。大変お世話になりました」
ギルマスにそう聞かれたのでペコリと頭を下げると
「そうか。平穏が訪れるが、寂しくなるな」
そう言って頭を撫でられた。
リゲルさんにも
「お元気で。きっと行く先々で色々あると思われますが・・・。ほどほどに──」
と、言われてしまった。
この二人が持ってる私のイメージってどんななの?
次に治療院に顔を出し、私は無事だと伝えた。
安心して泣き出したミモザさんを折角慰めたのに、旅に出ると言うとまた泣き出してしまったけど。
先生にもご挨拶をする。王宮の騎士が私を探していることを知っているようで、仕方ないねと言って送り出してくれた。
「いつでも帰ってきなさい」と、言ってくれたよ。
それから私は七星に会うために家に帰った。
七星は私が帰ってくることも旅に出ることも分かっていたようで、作り置きのご飯をいっぱい作ってくれていた。
「餞別よ。星良が巻き込まれるかどうかも分からなかったし、先入観もよくないと思って前もって言わなかったの。ごめんなさい」と言って。
因みに第二王子にそんな設定はなかったらしい。やはりもう乙女ゲームの内容からはかけ離れてしまっているようだ。
七星とは自分もいつか旅に出たいと思っているけど、色を変える魔道具が出来ない限り動けないから、だから──
「「いつかどこかで会おうね(会いましょう)」」
そう、約束した。
最後にレグルスにお別れをと思い探していると、ちょうど道に立っているのを見つけたので小走りで駆け寄った。
「レグルスさん!」
「お、スピカ。お別れは終わったか?じゃ、行くか」
レグルスが何故かそう言って歩きだした。
「え?どこ行くの?」
「『え?』って・・・もしかしてスピカは兄ちゃんを置いていくつもりだったのか?」
「だってレグルスにはここでの生活があるでしょう?」
「お、兄妹っぽくていいね。呼び捨て。これからそれでいこう!」
いつも心の中では呼び捨てにしてたからつい・・・って、いやいや・・・
「私は一人で大丈夫よ」
「今日初めて馬車に乗ったのに?
「うっ!」
「この世界のこと、エルナトと王宮しか知らないくせに?」
「うぅっ!」
「宿屋の取り方わかるのか?」
「はうぅっ!」
「いくら結界があっても毎日夜営と言うわけにも行かないだろ?
俺ならリストや元の世界のことも知ってるし、なんと言っても強い上に旅に慣れている。旅の相棒にはいいと思うんだけどなぁ。
それに女の子の一人旅はいくらピヨさんと紅さんがいても大変だぞ」
ううう、それを言われると・・・
「それに、スピカがどこかで何か問題を起こしているかと思うと心配で眠れそうにない」
ん??
「それに家も売ってしまったから、帰るところがない」
「え。エエエエエーッ!」
なんですと!?
『仕方ない。星良よ。足手まといになることはないだろう。こやつも連れていけ』
「ピヨさんがそう言うなら──。ではよろしくお願いします」
「よしよし、それでこそ俺の妹だ──って、ええー!?ピヨさんって、話せるのか!?」
『ふん。来やすく呼ぶな。我はまだ貴様が我を食べようと思考したことを許しておらん!』
楽しい旅になりそうです。
----------
リスト『異世界でやってみたい50のこと』
達成可能(4)
★異世界旅行をしてみたい
★こっちの世界にない景色を見てみたい
★いろんな種族に会ってみたい
★討伐をやってみたい
未達成(12)
達成済み(34)--新規(0)・確認済み(34)
----------
96
あなたにおすすめの小説
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
最強剣士が転生した世界は魔法しかない異世界でした! ~基礎魔法しか使えませんが魔法剣で成り上がります~
渡琉兎
ファンタジー
政権争いに巻き込まれた騎士団長で天才剣士のアルベルト・マリノワーナ。
彼はどこにも属していなかったが、敵に回ると厄介だという理由だけで毒を盛られて殺されてしまった。
剣の道を極める──志半ばで死んでしまったアルベルトを不憫に思った女神は、アルベルトの望む能力をそのままに転生する権利を与えた。
アルベルトが望んだ能力はもちろん、剣術の能力。
転生した先で剣の道を極めることを心に誓ったアルベルトだったが──転生先は魔法が発展した、魔法師だらけの異世界だった!
剣術が廃れた世界で、剣術で最強を目指すアルベルト──改め、アル・ノワールの成り上がり物語。
※アルファポリス、カクヨム、小説家になろうにて同時掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる