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チートじゃない
7 突然の告白?
モルデントさんに素材についての報告をする為に薬屋に行ってくると言ったら、自分も研究成果を聞きたいとプレストが言い出したので二人で向かったのだが──
「・・・・・・・」
奥の部屋にはこの世の終わりと言うほど落ち込んでいるモルデントさんが座っていた。
彼の手元を見ると、乾燥してカピカピになったスライム素材があった。
「あー、ヴィーちゃんかぁ~。悲しい出来事が起こってね。希少なスライム素材が一夜にして駄目になってしまったよ」
どうやらこの世界のハイドロコロイドは、ある日突然乾燥するらしい。
モルデントさんはうつろな目で微笑むが、ハッとして急に目に光が戻ったかと思うと、次の瞬間には目の前にいた。
転移か?!っていうスピード感。わぉ。
「この間ヴィーちゃんに渡した素材!残ってないかいっ」
「近い近い近い──」
落ち着けと言わんばかりに私が両手でモルデントさんを制するが、離れてくれない。すると不機嫌そうなプレストがモルデントさんを引き剥がしてくれた。
「残念ながら全部使っちゃいました」
「そうか・・・」
いや、そこまで落ち込まなくても──
「その素材って、スライム素材のことですよね。あれは俺が採ってきたヤツですよ。今度見つけたらまた採ってきましょうか?契約があるので一旦商会に納品することになりますが」
「本当かい?」
希少だから、いつになるか分からないが、それでもいつかは手に入るだろう。
プレストの言葉に涙目のモルデントさんがやや復活する。
「そうそう、それにモルデントさん、その素材の用途が分かりましたよ」
私が掻い摘まんで説明すると、モルデントさんの目に再び光が戻る。
しかし「自分も試してみたかった」とまた落ち込んでいた。忙しい人ね。
あったらあったで自分の体で試しそうなので、無くて良かったのでは?とも思うけど。
スライム素材の利用法について話していたところに、接客を終えたフィーネさんがやってきた。
「あ、師匠。やっぱりそれ、出しっぱなしはいけなかったのね」
モルデントさんの机の上のカピカピの素材を見たフィーネは、そう言ってマジックバックからスライム素材を取り出した。
「ヴィーちゃんがマジックバックに入れてたでしょ?ヴィーちゃんのすることだからそれが良いんだろうって、師匠が使わない分はマジックバックに保管しておいたのよ」
それに喜んだのはモルデントさんだ。喜びの勢いのまま、フィーネを思い切り抱きしめた。
「流石フィーネだ。僕をいつも支えてくれる!大好きだ!!」
「わ、私も大好きです・・・!」
ぷしゅ~という音が聞こえそうなほど真っ赤になったフィーネ。
モルデントさんがそういう意味で好きだと言ったのかは謎だが、自分が何をしているのか、何を口走ったのか、何を言われたのか、理解をしたモルデントさんもつられて真っ赤になっていた。
突然の告白劇に、私はプレストの手を取りそっとその場から離れた。
スライム素材を再び手に入れたモルデントさんの暴挙はフィーネさんが止めてくれるに違いない。
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