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第2章 裏
18 危険人物
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神聖魔法の使い手であることが分かったカイエはそれからすぐに学園の寮から教会の一室へと住まいを移し、退学が決まった。
魔法は危険だ。誰かに危害を加えることが容易にできる。人助けのためとはいえ感情に任せて魔法を使ってしまったカイエは感情的になると魔法を使う可能性がある危険人物と認定された。王太子をはじめとする高位貴族の子女在籍する学園に通わせるのは危険だと判断されたのだ。
しかしヒロインが途中退場しては物語が終わってしまうと娘に泣きつかれたフォッセン公爵とカイエの神聖魔法により娘の令嬢としての命を救われた侯爵家、そして教会と模擬戦を行っていた二人の実家からの口添えがあり、退学は覆されることになった。
レックスは反対だった。退学にするべきだと最後まで粘ったが退学は覆されたままだった。
「人助けだったのでしょう?通常の魔法と違い神聖魔法だったわけですし、彼女は生徒会役員の方々を好いているようですから感情的になったとしても殿下たちに危害が及ぶことはないから構わないではないですか」
「でも君たちに対してはわからない」
フィオレはそういうけれど、自分たちのことを心配しているのではない。フィオレのことを心配しているのだ。
「心配してくれてありがとうございます」
カイエの人となりがどうであろうと、人を一人救ったことには違いないのだ。フィオレ自身もカイエの退学には反対だった。自分を心配してくれるレックスには申し訳ないが、フィオレはそう言って穏やかにほほ笑んだ。
フォッセン公爵領で水害が起きてしまった。
センエンティ王国ではまれに災害に見舞われることがあったが、この100年間は比較的安定した気候が続き小規模なものはあったが大規模な災害が起こることは一度もなかった。
ちょうど長期休暇であったレックスは連日執務室に詰め対応に当たっていた。
災害が起きたとしても他の領地での政策を止めるわけにはいかない。その為レックスが王太子として災害への対応に当たっていた。
フィオレも王城に詰め次期王太子妃として、食料などの救援物資、水が引いた後に流れてしまった家などの再建に必要な人手の手配などグリーク公爵家は勿論他家からの支援を取りまとめてくれている。
公爵領は広い。各家がそれぞれ支援物資や人材を派遣しても偏りが出てしまうため、フィオレが被害と物資、派遣される人材を把握した上で、いつどこに何を運び誰が向かうかを指示するのだ。
しかし経験したことのない未曽有の災害の報に、この国になにか良くないことが起こる前兆ではないのかという声が上がりだしたのは、水害が起きてそんなに経ってはいない頃だった。
そしてその声が、何故かレックス・センエンティ第一王子が王太子にふさわしくないからではないか──などという噂に代わり、国内にじわじわと広まっていた。
いや、何故か、ではない。噂の出現の速さや広まり方からも故意──それもレックスを王太子の座から引きずり下ろし第二王子をその席につけようと目論む第二王子派の仕業なのは分かっていた。
遅くに生まれた第二王子は優秀ではあるがまだ八歳。十年も先に生まれ既に帝王学を学んでいる優秀な第一王子とは比べるまでもない。しかも本人は兄に憧れ、将来は王弟として兄を支えるのだと勉学に励んでいるのだ。
しかし周囲がそれを許さない。どこか得体のしれないレックスを国王にすることを不安視する一派だ。
問題となっているのは災害であり誰かのせいというわけではないが、国民の不安を煽り、そう印象付けるには十分である。
フォッセン公爵には申し訳ないがこれで流行り病でも出てくれたら更に都合がいい。第二王子派の面々はそうほくそ笑んだが、その目論見が台無しとなる出来事が起こった。
貴族としての役目も果たさず、ただ国民の不安を煽るだけの無責任さに反吐が出る。
レックスは煩わしい噂を打破するために、今話題の神聖魔法の使い手であるカイエを使うよう国王や宰相に進言し、受理されたのだ。
自身の噂はどうでもいいが、国民には少しでも安心できる要素が必要だ。レックスはその力の強さを国民に認知されているカイエを動かすことによって、国民の不安を軽減しようと考えたのだ。
その結果、レックスの思惑は思った以上の成果を上げた。
歴史上二人目となる『治癒』と『浄化』二つの神聖魔法に目覚めた使い手が誕生することになったのだ。
このニュースにより、次の治世も安泰であるという方向に世論が流れ、第一王子派が盛り返したのだった。
魔法は危険だ。誰かに危害を加えることが容易にできる。人助けのためとはいえ感情に任せて魔法を使ってしまったカイエは感情的になると魔法を使う可能性がある危険人物と認定された。王太子をはじめとする高位貴族の子女在籍する学園に通わせるのは危険だと判断されたのだ。
しかしヒロインが途中退場しては物語が終わってしまうと娘に泣きつかれたフォッセン公爵とカイエの神聖魔法により娘の令嬢としての命を救われた侯爵家、そして教会と模擬戦を行っていた二人の実家からの口添えがあり、退学は覆されることになった。
レックスは反対だった。退学にするべきだと最後まで粘ったが退学は覆されたままだった。
「人助けだったのでしょう?通常の魔法と違い神聖魔法だったわけですし、彼女は生徒会役員の方々を好いているようですから感情的になったとしても殿下たちに危害が及ぶことはないから構わないではないですか」
「でも君たちに対してはわからない」
フィオレはそういうけれど、自分たちのことを心配しているのではない。フィオレのことを心配しているのだ。
「心配してくれてありがとうございます」
カイエの人となりがどうであろうと、人を一人救ったことには違いないのだ。フィオレ自身もカイエの退学には反対だった。自分を心配してくれるレックスには申し訳ないが、フィオレはそう言って穏やかにほほ笑んだ。
フォッセン公爵領で水害が起きてしまった。
センエンティ王国ではまれに災害に見舞われることがあったが、この100年間は比較的安定した気候が続き小規模なものはあったが大規模な災害が起こることは一度もなかった。
ちょうど長期休暇であったレックスは連日執務室に詰め対応に当たっていた。
災害が起きたとしても他の領地での政策を止めるわけにはいかない。その為レックスが王太子として災害への対応に当たっていた。
フィオレも王城に詰め次期王太子妃として、食料などの救援物資、水が引いた後に流れてしまった家などの再建に必要な人手の手配などグリーク公爵家は勿論他家からの支援を取りまとめてくれている。
公爵領は広い。各家がそれぞれ支援物資や人材を派遣しても偏りが出てしまうため、フィオレが被害と物資、派遣される人材を把握した上で、いつどこに何を運び誰が向かうかを指示するのだ。
しかし経験したことのない未曽有の災害の報に、この国になにか良くないことが起こる前兆ではないのかという声が上がりだしたのは、水害が起きてそんなに経ってはいない頃だった。
そしてその声が、何故かレックス・センエンティ第一王子が王太子にふさわしくないからではないか──などという噂に代わり、国内にじわじわと広まっていた。
いや、何故か、ではない。噂の出現の速さや広まり方からも故意──それもレックスを王太子の座から引きずり下ろし第二王子をその席につけようと目論む第二王子派の仕業なのは分かっていた。
遅くに生まれた第二王子は優秀ではあるがまだ八歳。十年も先に生まれ既に帝王学を学んでいる優秀な第一王子とは比べるまでもない。しかも本人は兄に憧れ、将来は王弟として兄を支えるのだと勉学に励んでいるのだ。
しかし周囲がそれを許さない。どこか得体のしれないレックスを国王にすることを不安視する一派だ。
問題となっているのは災害であり誰かのせいというわけではないが、国民の不安を煽り、そう印象付けるには十分である。
フォッセン公爵には申し訳ないがこれで流行り病でも出てくれたら更に都合がいい。第二王子派の面々はそうほくそ笑んだが、その目論見が台無しとなる出来事が起こった。
貴族としての役目も果たさず、ただ国民の不安を煽るだけの無責任さに反吐が出る。
レックスは煩わしい噂を打破するために、今話題の神聖魔法の使い手であるカイエを使うよう国王や宰相に進言し、受理されたのだ。
自身の噂はどうでもいいが、国民には少しでも安心できる要素が必要だ。レックスはその力の強さを国民に認知されているカイエを動かすことによって、国民の不安を軽減しようと考えたのだ。
その結果、レックスの思惑は思った以上の成果を上げた。
歴史上二人目となる『治癒』と『浄化』二つの神聖魔法に目覚めた使い手が誕生することになったのだ。
このニュースにより、次の治世も安泰であるという方向に世論が流れ、第一王子派が盛り返したのだった。
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