上 下
25 / 32
鬼姫の始まり

二十二話

しおりを挟む
ミコトはジャン・ラドロンと名のった目付きの鋭い、盗賊のような男の案内で、街の外れにある石造りの建物の扉の前にいた。

「……ここだ、ボスはこの建物の上にいる。」

そう言って中に入っていった、背中に幸せそうな寝顔の子供二人を、おんぶしたまま。

建物の中は殺風景な長い廊下と左右に部屋が一つずつ、奥に四つの扉とでかい階段があった。

左の部屋では、強面の人達がお酒を飲んでいる、右の部屋は数人の寝息が聞こえる。

前を歩くジャン・ラドロンはそのまま奥の階段を上っていっていまった。
ミコトは後れまいと後をついていった。

酒を飲んでいた一握りの人達が会話や酒を飲むのをいつの間にか止めて、ジャンやミコトの歩いていった廊下の方を見ていたが、大半の人は気付いてすらいないようだ。
しばらくすると、知っている気配や叫び声が上の階から聞こえたので、普通に騒ぎだしたが。



「ここだ……ん?」
ジャンは一番上の階の奥にある扉の前に来ると立ち止まり、扉を叩こうとすると、中から変な叫び声が聞こえた。

『が~書るがーーー!終わら!ーーー~な…は!……………来た!~ーー。』

「あぁ、またか……あ~お嬢さん、すまねーんだけど、中で見たことは記憶の片隅にでもしまっといてください。」

「…ん………分かった。」

コン コン コン コン

『パシリ~はーーーヒャーハー!!ぬりゃ!』
ジャンは扉をノックして一呼吸おいてから扉を開けた。
部屋の中、一番奥の書類のつまれた机の上に登った、女性が今にも投げナイフを………………投げた。

「ちょま?!」

「…!……」

先に部屋に入ったジャンに向かって全部で3本の投げナイフが投擲された、変な叫び声と共に。
ジャンは背中に子供二人を背負っているので手がつかえない、その時ジャンの真横を、ミコトが滑り込むように通過して、飛来したナイフを受け止めた。

右手に2本、左手に1本

三人に謎な間が出来た。

そして、目を見開いたままの固まった、ジャン。

それとナイフを指の間に受け止めたミコトはそのままいつでも投げ介せるように構えをとると、ナイフを投げてきた相手に狙いを定めた。

そうするとやっと落ち着いたのか机の上の女性が一言。
「あ~…………すまない。」

その一言でジャンは割れに帰った。

「ボ…ボス………行きなり危ない、流石に今のは………。」

「あ…ご…ごめんなさい」






ミコトは改めてめのまえの人物、ジャンが言っていたボスと言う人を見た。
緑色の乱れた髪に、目の下にクマがある、美人な人だ。

…………ただし服装が……ラフな服一枚、むろん机の上にのっていたから、ミコトには下着が丸見えである、女性としてどうなのかとミコトには思えたが。

それにジャンはそれなりに背が高いためか机の上の女性、よりも目線が高いので、鋭い目付きが、見おろす形になりさらに鋭くなった。

………ついでに言うと、子供二人はジャンがこの部屋のソファーに下ろして、今もぐっすり眠っている?

あの女性は何故か机の上に正座したままジャンに怒られている、それなりに丈の長い服なのかスカートのように見えなくもないが、よく見ると、この部屋の床に女性のズボンや武具、酒瓶に、書類らしき物が散乱している。

机の上の女性、ボスは物凄く涙目だ。

それにジャンには全くと言っていいほど見えてはいなかったようだ………………

…何がとはあえて言わないでおこう。




……なんだこの状況………
しおりを挟む

処理中です...