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13 愛しい二つの生き物が
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ちょんちょんと痛みを感じないように、傷口についた汚れや血を落としていく。エリトが目をぎゅっと閉じているのを見て、クラーリオは苦笑いを零した。
「ちょっとだけ我慢してくれ。……触れられるの、嫌だろうけど」
「……え?」
「……わかっている。魔族で、しかも追われている身だ」
「………ええ? 追われてるの? 誰に?」
目を開いたエリトは、窺うような視線をクラーリオへ向ける。クラーリオは驚いた後、思わず吹き出した。
「エリト、この間の魔族は俺を狙ってきていたんだぞ? 気付かなかったのか?」
「え!? そうだったの? じゃあ、何であの魔族は僕の家を狙ったんだろう……」
「……」
「クリオはあの時怪我を負ったんじゃなくて、もう負傷していたってこと? あなたを追っていた魔族が、何故か僕の家を狙い……あなたは重傷だったけど、僕を助けた。そういうこと?」
「……ああ、まぁ……そういう事だ」
(やつらが狙っていたのは、エリトの家にいた俺だなんて……言えないな)
更にノウリが自分だったなどと、クラーリオが言えるはずもない。可愛い可愛いと愛情を注いでいた相手が、こんな魔族だったなんてエリトが不憫だ。
クラーリオが違う話題を探していると、エリトが首を捻る。
「でもあいつら、ノウリの事まるで標的だったかのように話していて……依代、とか何とかって言ってて……」
「……いや、聞き間違いではないか? しかし、その犬には悪いことをしたな……亡骸が見つかっていないなら、どこかできっと生きていると思うが……」
「……うん。それなら、いいけど……」
どことなく落ち着きがないクラーリオを、エリトは見つめる。何か隠している顔だが、そこに悪意はない。
(クリオに、ノウリは犬だって言ったかな? どうしてノウリという名前だけで、犬だと分かったんだろう……)
エリトがクラーリオに助けられたのは、ノウリが攻撃を受けて吹き飛ばされた後だ。ノウリが攻撃されたのを見ていたとしたら、クラーリオはどこで見ていたのだろう。
そして怪我の位置はノウリと同じだ。「もしかして」が、エリトの頭に過ぎる。
「エリト、消毒は終わりだ」
「ん? あ、ああ、ありがとう」
(上位の魔族って、ドラゴンとかにも擬態できたよね? まさか、クリオも……)
ちらりとクラーリオを見ると、彼は慌てて視線を逸らす。狼狽えているのを隠せていないのが、何となく可愛い。必死で何かを隠そうとしているのが、バレバレだ。
(やっぱり、そうなの? ほんとうに、そうなんだとしたら……)
ぎゅっと胸が痛くなって、エリトは下唇を柔く噛んだ。胸から湧き出す淡い気持ちが、確かな形になっていく。
「エリト」
「ひゃいっ!」
急に名前を呼ばれ、エリトは上ずった声を上げる。予想以上に情けない声になったことが恥ずかしく、咄嗟に目を伏せた。
「ちょっとだけ、髪に触れてもいいか?」
「……う? うん」
目線を落としたままエリトが答えると、大きな手が髪に触れた。その手は頭を優しく撫でで、髪の間を指が通る。それだけで胸がとろりと溶けだすようだった。
「……思った通り、綺麗な髪だな」
「……そ、そう?」
「エリト……あまり無理して狩りをしては駄目だ」
「……クリオ?」
「ちょっとだけ我慢してくれ。……触れられるの、嫌だろうけど」
「……え?」
「……わかっている。魔族で、しかも追われている身だ」
「………ええ? 追われてるの? 誰に?」
目を開いたエリトは、窺うような視線をクラーリオへ向ける。クラーリオは驚いた後、思わず吹き出した。
「エリト、この間の魔族は俺を狙ってきていたんだぞ? 気付かなかったのか?」
「え!? そうだったの? じゃあ、何であの魔族は僕の家を狙ったんだろう……」
「……」
「クリオはあの時怪我を負ったんじゃなくて、もう負傷していたってこと? あなたを追っていた魔族が、何故か僕の家を狙い……あなたは重傷だったけど、僕を助けた。そういうこと?」
「……ああ、まぁ……そういう事だ」
(やつらが狙っていたのは、エリトの家にいた俺だなんて……言えないな)
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クラーリオが違う話題を探していると、エリトが首を捻る。
「でもあいつら、ノウリの事まるで標的だったかのように話していて……依代、とか何とかって言ってて……」
「……いや、聞き間違いではないか? しかし、その犬には悪いことをしたな……亡骸が見つかっていないなら、どこかできっと生きていると思うが……」
「……うん。それなら、いいけど……」
どことなく落ち着きがないクラーリオを、エリトは見つめる。何か隠している顔だが、そこに悪意はない。
(クリオに、ノウリは犬だって言ったかな? どうしてノウリという名前だけで、犬だと分かったんだろう……)
エリトがクラーリオに助けられたのは、ノウリが攻撃を受けて吹き飛ばされた後だ。ノウリが攻撃されたのを見ていたとしたら、クラーリオはどこで見ていたのだろう。
そして怪我の位置はノウリと同じだ。「もしかして」が、エリトの頭に過ぎる。
「エリト、消毒は終わりだ」
「ん? あ、ああ、ありがとう」
(上位の魔族って、ドラゴンとかにも擬態できたよね? まさか、クリオも……)
ちらりとクラーリオを見ると、彼は慌てて視線を逸らす。狼狽えているのを隠せていないのが、何となく可愛い。必死で何かを隠そうとしているのが、バレバレだ。
(やっぱり、そうなの? ほんとうに、そうなんだとしたら……)
ぎゅっと胸が痛くなって、エリトは下唇を柔く噛んだ。胸から湧き出す淡い気持ちが、確かな形になっていく。
「エリト」
「ひゃいっ!」
急に名前を呼ばれ、エリトは上ずった声を上げる。予想以上に情けない声になったことが恥ずかしく、咄嗟に目を伏せた。
「ちょっとだけ、髪に触れてもいいか?」
「……う? うん」
目線を落としたままエリトが答えると、大きな手が髪に触れた。その手は頭を優しく撫でで、髪の間を指が通る。それだけで胸がとろりと溶けだすようだった。
「……思った通り、綺麗な髪だな」
「……そ、そう?」
「エリト……あまり無理して狩りをしては駄目だ」
「……クリオ?」
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