拾った犬は、魔神様でした。

墨尽(ぼくじん)

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14 バレたか

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 クラーリオは懐から小袋を出すと、エリトの膝の前にそっと置く。美しい刺繍の施された小袋は、富裕層がよく使う財布によく似ていた。

「宝石が入っている。人間の国でも価値があるものだ。それを売って、生活に役立ててほしい。……巻き込んで、本当にすまない」
「……」
「身体が治ったら、俺が魔獣を狩りに行く。エリトが暮らしに困らなくなるほどの素材を……」
「いりません! こんなもの!!」

 エリトは小袋を掴んで、クラーリオの胸元へ突き返した。咄嗟の事にバランスを崩し、クラーリオが後方へ倒れる。
 
 エリトがクラーリオに覆いかぶさるような体勢になり、クラーリオは驚いてその顔を見上げる。悔しそうで、それでいて拗ねた表情を浮かべるエリトは、恨めし気に口を開いた。

「僕があなたを拾ったのは、確かに善意からでした。でも今は違う。僕は、あなたがここに居てほしいと願ってる。だから、お金なんていらない!」
「……? ひ、拾った?」
「魔族でも犬でも、あなたはかぞ……く、あ」

 しまった、といった顔をして固まったエリトは、顔を真っ赤に染め上げた。手で口を覆い、眉尻を限界まで下げる。その顔が可愛くて、クラーリオは声を立てて笑った。

 クラーリオが両手を伸ばし、エリトの頬を包む。悪戯気に「バレてたか」と笑うと、エリトの瞳からボロリと涙が零れ出した。
    次から次へと溢れ出す涙が、クラーリオの胸元を濡らす。その胸が焦がされるように熱くなって、クラーリオはエリトを抱き寄せた。

 エリトの頭を胸に抱き、その髪に頬ずりする。エリトもそれに応えるように、クラーリオの胸に顔を埋めた。

「……ほんとうに、ノウリなの?」
「さあ? 違うかも」
「……ずるいなぁ……。あ……」

 エリトはクラーリオの胸に顔を埋めて、息を呑む。レゴーラ狩りに失敗したあの日、助けてくれたのは、やはりノウリクラーリオだったのだ。

 心配そうに鳴く声も、優しい瞳も全部全部、クラーリオだったのだ。

 湧き出した涙が、後から後から流れる。クラーリオの胸元が濡れていくのを申し訳なく思いながら、涙は止められなかった。

「……クリオは、ずっと、僕を……守ってくれてたんだ……」
「……違う。守られていたのは俺だ。エリトに……救われた」
「……」
「あ、ごめん……怪我しているのに、重い、よね?」

 エリトがぐすっと鼻を啜り、クラーリオから身を離そうとする。しかしクラーリオは、それを抱きしめることで制した。まるで駄々をこねる子どものように、クラーリオはエリトの髪へと鼻を埋める。

 そして側にあった毛布を引っ張ると、エリトごと2人を包み込む。毛布の上からエリトの背を撫で、クラーリオはふすりと笑い声を零した。

「エリト。このまま2人でお昼寝しよう」
「……お昼寝? ふふ、もう夕方だよ?」
「駄目か? 少しだけ……」

 背中を撫でられ、頭の側ではクラーリオの優しい声が響く。身体の中からじんわりと温まって、エリトはほっと息をついた。
 クラーリオがエリトの頭にキスを落とすと、2人は同時に瞳を閉じる。

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