拾った犬は、魔神様でした。

墨尽(ぼくじん)

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17 暴戻の魔神

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 川辺に座るクラーリオに、エリトは寄り添うように座った。まだ日差しは暖かく、川面がきらきらと光っている。
 静かな声で話し始めたクラーリオに、エリトは耳を傾けた。


「俺の一族は、国境を守る軍の統括をしていた。元は小さな部隊で、家族のような関係性だったんだ。……それが、親父の代で大きく変わってしまったんだ」
「……クリオの、お父さん?」
「ああ。親父は馬鹿みたいに強くてな……各地で武功を立てた。そして当時の魔王に右腕とまで言われ、まるで兄弟のような関係になった。……しかし、権力というものの恐ろしさを、親父は知らなかったんだ。他の王族から警戒され、謀られ……親父は王座を巡る争いに巻き込まれて死んだ」

「……」
「エリト。……エリトが街で拾ってきたビラ、あったろ? あれに書かれている『暴戻の魔神』は俺の事なんだ。……もう薄々感づいてはいるよな?」

 エリトは小さく頷き、クラーリオに身を寄せた。
 暴戻の魔神は、ガーランデの軍を打ち負かした後に行方不明となっている。クラーリオが追われている身だと告白した時から、エリトは気付いていた。

 身を寄せるエリトの頭頂部に、クラーリオはそっと唇を落とす。エリトがまるで縋るように身を寄せるのを見て、クラーリオはその身体を抱き寄せた。


「人間から恐れられる魔神、それが俺だ。……本来なら、エリトに触れることも叶わないような、存在なんだ」
「……そんな……恐いなんて、一度も思った事ない」
「そうか……でも事実、俺は人間をたくさん殺している。殺すことにも抵抗は無かった。……それでもエリトは、俺が恐くないのか?」
「恐くない。どんなクリオでも大好きになれる」

 エリトはクラーリオを見上げると、その双眸をじっと見つめた。クラーリオの驚くほど澄んだ目を見れば、恐いなんて気持ちが湧くはずもない。

 クラーリオはエリとを見返して、優しく微笑む。

「エリト、ありがとう。エリトがそう思ってくれているのと、俺も同じなんだ」
「?」
「俺は、どんなエリトでも……大好きだ」

 見上げるエリトの頬を包み、クラーリオは唇を重ねた。優しく触れるようなキスの後、小さく呟く。

「エリトに触れたい。心にも身体にも。俺の全てを捧げるから、エリトに触れさせて欲しい……」
「……うん。……僕も、クリオに触れてほしい……」

 クラーリオはエリトを抱え、そのまま立ち上がった。怪我の具合を心配するエリトに、クラーリオは笑って答える。

 家までの道のりを、エリトはほとんど覚えていない。クラーリオの胸の中、たまに落ちてくる唇に心溶かされる。
 次の瞬間には、家のベッドの上に押し倒されていた。
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