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薬屋キュウ屋
第21話 孤児院『リプト』
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店に鍵を掛けて、光太朗はコートのポケットに手を突っ込んだ。ポケットの中の銅貨をかき回しながら、歩き出す。
キュウヤの近くには、小規模だが商店街のようなものがある。
八百屋、肉屋、魚屋。見た目や売るものが違っていても、食にまつわるものを見るとどこかホッとする。
ここランパルは、三角屋根の可愛らしい建造物が並ぶ町だ。
どことなくドイツの街並みに似ているのは、建造物がハーフ・ティンバー式だからだろう。女性が喜びそうな街並みだ。
光太朗はいつものように、馴染みの菓子屋で焼き菓子を買う。すると店主が花束を手渡してきた。
それを受け取りながら、光太朗は呆れたように笑う。
「あんたも懲りないな。直接手渡せって」
「……渡すか渡さないかは、コウに任せる」
菓子屋の店主は、光太朗の恩人である女性に恋をしている。
光太朗はその彼女が運営している孤児院へ、毎日焼き菓子を買って行く。そのついでに花束も受け取るようになったのは、いつからだったか。
菓子屋の店主は、見た目は30半ばの男性に見える。この世界の住人は長命のため、光太朗は未だに年齢の判別が苦手だ。
「分かった。渡すよ」
「……いや、コウが持っていてくれても良いんだぞ」
「大丈夫だって! ちゃんと渡すからさ」
銅貨を店主に渡し、光太朗は任せろとばかりに微笑んだ。店主は顔を赤らめて、口を真横に引き結ぶ。
人の恋路を応援するのは、意外と楽しい。
(ミカさんも、早く良い人見つかればいいな)
花束を持ったまま菓子屋に手を振り、光太朗は脇道に入った。
2ブロックほど歩くと、孤児院『リプト』の門が見える。
見た目は大きめの一軒家だが、庭がかなり大きい。光太朗にとっては慣れた家だった。
門前に立つと、早速子供たちが駆けてくる。
「コウ! きた!」
「おそいよ! もう日がくれちゃう!」
きゃいきゃい騒ぐ子供たちに焼き菓子を渡し、光太朗は子供たちの頭をわしわし撫でた。
「日がくれちゃう、なんて言葉が言えるようになったか~。可愛いなぁ、ニアは」
「いつまでも子どもあつかいしないで!」
ニアを抱き上げると、周りの子どもも抱っこをせがんでくる。光太朗が抱けるだけ抱っこしていると、建物から女性が駆けてきた。
光太朗の恩人であり、リプトを運営しているミカだ。
「コウ! こんな時間に大丈夫なの? 直に陽も落ちてしまうのに……」
「大丈夫、直ぐに帰るから。……はいこれ、また菓子屋の店主から」
光太朗が花束を渡すと、ミカが困った様に笑う。いつも通りの反応に、光太朗もつい吹き出した。
「ミカさん、こんだけ想われてるんだから、ちょっとは考えてあげなよ? あの人、良い人そうだし」
「う、うん、あのね、コウ……」
困った様に花束を見つめるミカも、光太朗には30半ばに見える。実際の年齢は遠慮して聞いてはいないが、褐色の肌に赤い髪が映えて、とても綺麗な女性だ。
まだ独り身でいるのが不思議なくらいなのに、ミカは恋人を作らない。
孤児院の運営が厳しいから、と以前は言っていた。しかし今はそれも心配ないはずだ。
「……ミカさん、今日は寄付金あった?」
「あ、うん。それが……たくさんだったの。こんなに頂いて良いのかってくらい」
「いくら?」
「それが……15万トルカぐらいあったの」
(くそ、ウィリアムの奴……5万も懐に入れやがったな……)
光太朗は心の中で毒づきながら、ミカに笑顔を向ける。
「良かったじゃん! どこぞの貴族に気に入られているのかもな」
「それにしても、多すぎないかしら……」
「隣町の寄付金も増えたらしいって、ミカさん言ってたろ? 大丈夫だよ」
そう言いながら、光太朗は穏やかに笑う。心配性のミカだが、光太朗の笑みを見て安心したように微笑んだ。
店に鍵を掛けて、光太朗はコートのポケットに手を突っ込んだ。ポケットの中の銅貨をかき回しながら、歩き出す。
キュウヤの近くには、小規模だが商店街のようなものがある。
八百屋、肉屋、魚屋。見た目や売るものが違っていても、食にまつわるものを見るとどこかホッとする。
ここランパルは、三角屋根の可愛らしい建造物が並ぶ町だ。
どことなくドイツの街並みに似ているのは、建造物がハーフ・ティンバー式だからだろう。女性が喜びそうな街並みだ。
光太朗はいつものように、馴染みの菓子屋で焼き菓子を買う。すると店主が花束を手渡してきた。
それを受け取りながら、光太朗は呆れたように笑う。
「あんたも懲りないな。直接手渡せって」
「……渡すか渡さないかは、コウに任せる」
菓子屋の店主は、光太朗の恩人である女性に恋をしている。
光太朗はその彼女が運営している孤児院へ、毎日焼き菓子を買って行く。そのついでに花束も受け取るようになったのは、いつからだったか。
菓子屋の店主は、見た目は30半ばの男性に見える。この世界の住人は長命のため、光太朗は未だに年齢の判別が苦手だ。
「分かった。渡すよ」
「……いや、コウが持っていてくれても良いんだぞ」
「大丈夫だって! ちゃんと渡すからさ」
銅貨を店主に渡し、光太朗は任せろとばかりに微笑んだ。店主は顔を赤らめて、口を真横に引き結ぶ。
人の恋路を応援するのは、意外と楽しい。
(ミカさんも、早く良い人見つかればいいな)
花束を持ったまま菓子屋に手を振り、光太朗は脇道に入った。
2ブロックほど歩くと、孤児院『リプト』の門が見える。
見た目は大きめの一軒家だが、庭がかなり大きい。光太朗にとっては慣れた家だった。
門前に立つと、早速子供たちが駆けてくる。
「コウ! きた!」
「おそいよ! もう日がくれちゃう!」
きゃいきゃい騒ぐ子供たちに焼き菓子を渡し、光太朗は子供たちの頭をわしわし撫でた。
「日がくれちゃう、なんて言葉が言えるようになったか~。可愛いなぁ、ニアは」
「いつまでも子どもあつかいしないで!」
ニアを抱き上げると、周りの子どもも抱っこをせがんでくる。光太朗が抱けるだけ抱っこしていると、建物から女性が駆けてきた。
光太朗の恩人であり、リプトを運営しているミカだ。
「コウ! こんな時間に大丈夫なの? 直に陽も落ちてしまうのに……」
「大丈夫、直ぐに帰るから。……はいこれ、また菓子屋の店主から」
光太朗が花束を渡すと、ミカが困った様に笑う。いつも通りの反応に、光太朗もつい吹き出した。
「ミカさん、こんだけ想われてるんだから、ちょっとは考えてあげなよ? あの人、良い人そうだし」
「う、うん、あのね、コウ……」
困った様に花束を見つめるミカも、光太朗には30半ばに見える。実際の年齢は遠慮して聞いてはいないが、褐色の肌に赤い髪が映えて、とても綺麗な女性だ。
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「……ミカさん、今日は寄付金あった?」
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