【完結】異世界で出会った戦友が、ゼロ距離まで迫ってくる! ~異世界の堅物皇子は、不具合転移者を手放せない~

墨尽(ぼくじん)

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薬屋キュウ屋

第22話 拾われた男

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 3年前、地下牢から出された光太朗は、行き倒れていたのをミカに拾われた。

 実際には行き倒れていたのではない。ウィリアムがこの孤児院の前に、光太朗を投げ捨てたのだ。
 そしてウィリアムの計画通り、光太朗は孤児院の院長であるミカに救われることとなる。
 
 善人であるミカは、フェンデである光太朗にも優しく接してくれた。死にそうになっていた光太朗の治療費は、施設の運営費を削って充てたと聞く。

 あの時ミカに救われていなければ、間違いなく光太朗はそのまま死んでいた。ミカには返しきれないほどの恩がある。
 いや、恩が出来てしまったのだ。


 光太朗がしばらく孤児院で生活した後、ウィリアムはまたひょっこりと現れた。

『君はもう僕のものだから、色々手伝ってもらうよ? 逆らうなら、この孤児院への国からの給付金を停止する。寄付金もね』

 ウィリアムはそう言い放って、にこりと微笑んだ。まさに天使の笑みといった顔だったが、腹の中はとんでもなく黒い。

『僕の手伝いをしてくれたら、お小遣いをあげるよ? この孤児院が豊かになるほどのお小遣いだ。……やるよね?』


 それから全てが、ウィリアムの思惑通りに進んだ。

 孤児院への寄付を増やすため、光太朗はウィリアムの手伝いをしている。薬屋もウィリアムから与えられた隠れ蓑に過ぎない。


 光太朗の肩に、そっとミカの手が伸びる。労わるように肩を撫でられ、光太朗は困った様に笑った。ミカが別れ際に言う言葉は、いつも決まっているのだ。

「コウ……。また痩せたんじゃない? 孤児院に戻ってきても良いのよ? あなた一人ぐらい増えても、この孤児院は潰れないんだから。子供たちも寂しがってるわ」

「ミカさん、俺は子供じゃないんだから孤児院には居れないよ。……こうして毎日顔出すからさ、俺の生存確認も出来るだろ?」

「馬鹿! 縁起でもない!」

 綺麗な顔を真っ赤にして怒るミカから、光太朗はそっと距離をとった。手で降参のポーズをとったあと、その手をひらひらと動かす。

「と、いうことで。俺は帰るよ! じゃあね、ミカさん、みんな!」
「! コウ! 気をつけて帰るのよ! 最近このあたり、物騒だから!」

 孤児院に向かって手を振り、光太朗は空を見た。もう陽は落ちてしまっている。直に真っ暗になるだろう。
 光太朗は壁に沿いながら、足早に歩いた。

 この世界にも電気らしいものはある。しかし元の世界ほどではなく、闇を照らすのは火が主流だ。

 たいまつに火を付けた役人が、街灯に火を付けて行く。それでも追いつかないくらい、街は闇に呑まれていった。
 もう閉まってしまった菓子屋を横目に見ていると、光太朗の耳が不穏な音を捉える。


 複数人が争うような音だ。こちらへ走ってくる数人の足音と、それを追っている一人の足音。

 複数人が一人を追っているなら、どちらに加担すべきかは判別が付かない。しかし複数人を一人が追っているとなると、加担すべきは一人の方だろう。


 光太朗は壁から離れると、耳をそばだてた。こちらへ走ってくる足音を読んで、タイミングよく道の真中へと足を突き出す。

 光太朗の足に躓いて、先頭の男が派手に転んだ。その後に続いていた男も体勢を崩し、膝をつく。
 光太朗は膝をついた男に走り寄り、その背中に飛び乗った。腕を後ろに捻り上げながら男を組み伏せ、その親指をへし折る。

(ここで、追いつくか……?)

 光太朗がそう思った瞬間、後ろから一人で追ってきた男が踊り出た。先頭で転んだ男に飛びかかり、頭を地面に叩きつける。
 先頭の男を一撃で沈めた後、間髪入れず男は光太朗を振り返った。
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