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側にいるために
閑話 イーオの自白
しおりを挟むマオの嘘は直ぐに露呈した。
イーオとマオを引き離したところ、イーオはあっさりと事の顛末を話したのだ。
薬師室で光太朗への解毒薬を作りながら、イーオはぽつりぽつりと話していく。近くでは爺が目を光らせており、キースは出口を背もたれに立っている。
マオが光太朗に、武器の手入れを命じた事。イーオは、自発的に武器庫を訪れたことも、彼は自白した。
「マオは、俺がコウに惹かれている事に、気付いていたんです。……これはマオにとっては大きな裏切りです。蝋燭が催淫薬だと、マオは俺に教えてくれませんでした。言えば反対すると、マオは分かっていたんでしょう」
「これは? お前の字か?」
薬師室のドアに貼られていたという紙を、ウルフェイルがイーオに突きつける。イーオはそれを眺めた後、首を横に振った。
「似ていますが、俺が書いたものではありません」
「じゃあ、マオが書いたんだな?」
「俺とマオの字体は……似ているんです」
ウルフェイルは紙を放り、ソファへ座る。眉間を押さえながら息を吐く様は、怒りを抑えているかのように見えた。
ずっと黙っていたキースが、ブーツの踵を床に叩きつける。
「コウを殴ってたのは、お前かぁ?」
「……」
「は? 殴ってた?」
ウルフェイルが立ち上がり、イーオは肩を跳ねさせた。キースはイーオを見据えながら、言葉を続ける。
「コウが頬に、立派な痣作ってきたんですよぉ。マオが殴っても、せいぜい赤くなる程度だ。……お前だな? マオに指示されたか?」
「俺です。……指示されたとしても、罪は変わりません」
「……イーオ、お前訳わかんねぇよ。コウに惹かれてると言っておきながら、彼を殴っていたのか?」
イーオは手元を見つめて、顔をくしゃりと歪めた。
「俺は……マオが一番大事です。マオの言う事を聞いて、願いを叶えてやるのが、俺の使命だと……」
ウルフェイルが顔を憤怒に染め、調合台に拳を叩きつける。
「お前ふざけんな! だからって惚れた相手にも手を上げるのか? そんな事、言う資格もねぇだろ!」
「俺だっておかしいと思います!! ……でも、そんな俺を……コウは否定しないんです。いっそ、怯えて一線引いてくれたらいいのに、彼はずっと俺に笑顔を向けるんです! ……こんな俺を、彼は受け入れてくれた……。だから俺はこのままで良いって思えた!」
イーオの言葉は、身勝手で受け入れ難いものだった。しかし彼は両目から涙をぼろぼろと流し、まるで子供のように泣いている。
「でも、武器庫で泣いているコウを見て……気付いたんです。昔マオも、こうして泣いていたって。そんなマオを今のようにしてしまったのは、俺です……」
そこまで言うと、イーオは顔を上げた。そしてウルフェイルを見て、真っ直ぐに言い放つ。
「俺とマオを罰してください。罪は全て、俺が吐きます」
「……当たり前だ。後の事はリーリュイが決めるが、覚悟しておいた方が良い。……武器庫の件は、お前も巻き込まれた側だが……リーリュイがどう判断するかは、俺にも分からん」
「理解しています。殿下は俺とマオを、殺したいほど憎んでいるはず」
武器庫では、明らかな殺意を向けられた。あれほど激しい感情を見せるリーリュイを、イーオは初めて見た。マオもそうだろう。
「おい、ビッチ片割れ。話はええから、はよぉ調合せぇ」
爺が口を挟み、イーオは涙を拭った。作業を開始すると、爺がぽつりぽつりと呟く。
「坊は、わしの茶飲み友達なんだが……。お前のことは尊敬しちょったぞ。薬師の師匠じゃあ、言うてな」
「……っ!」
「自分のやったこと反省して、坊に返せ。ええな?」
「………はい、必ず……」
イーオはまた溢れてきた涙を拭って、作業に集中した。贖罪の言葉はもはや意味がない。 せめて光太朗が早く良くなるようにと、イーオは薬に想いを籠めた。
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