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いざ、競技会!
第144話 招かれざる客
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◇◇
(出発して3日。……まぁ、そう上手くはいかないよなぁ……)
がたがたと揺れる幌馬車の中で、光太朗は耳を澄ませた。目の前には、ポーチから脱出したアゲハが、腹を見せたまま眠っている。
ランパルから王都への道のりを、魔導騎士団はゆっくりと進んでいた。
光太朗の乗った幌馬車を、馬に乗った騎士らが護るように囲む。この隊形で進んでいるのには訳があった。
光太朗は幌馬車の外へと、ひょっこり顔を出す。乾燥した地域を走っている為、砂塵が酷い。
光太朗に気付いたウルフェイルが、馬に乗ったまま近づいてきた。彼は防塵ゴーグルを上へずらすと、眉を吊り上げる。
「コウ、どうした?」
「ウルフ、襲撃かも。こっちに怒涛の勢いで迫って来てる音がする」
「またかよ……。多いな」
光太朗は幌馬車の枠を掴み、逆上がりをするように身体を回転させた。そのまま幌馬車の屋根に乗り、音のする方を見据える。
見えはしないが、やはり複数の馬がこちらへ駆けてくる音がする。
屋根の上にいる光太朗へ向かって、キースが声を張り上げた。
「こらぁ、コウ!! そこにいたら、狙ってくださいって言ってるようなもんだろぉ?」
「だって狙いは俺でしょ?」
ウルフェイルの指示で、2騎が先行して飛び出していく。後に残った者たちは、馬を降りて剣を構えた。
皆が戦闘態勢に移行する中、光太朗は屋根の上で胡坐をかく。
(ランパルを出て3日……襲撃は4回目。すげぇなぁ……)
多少の襲撃は予想されていたが、予想以上の頻度だ。もはや驚きを通り越して、うんざりとしている。進行も大幅に遅れてしまった。
しかも襲撃のターゲットは、例にもれず光太朗である。騎士らに申し訳なくて、ため息ばかりが出てしまう。
リーリュイは最も優秀な皇子だが、今までは王座に興味を示さなかった。そんな彼が本気を出し始めると、困る人間がたくさんいるらしい。
そしてリーリュイが初めて囲った側近が、フェンデである光太朗だ。リーリュイの弱みになるフェンデを握ろうと、各方面が躍起になっているようだ。
先行していった騎士が、襲撃者の馬を次々と攻撃していく。
襲撃者は30人ほどの数だったが、さすが騎士の中でもエースの魔導騎士団である。あっという間に襲撃者は瓦解していき、ばらばらと逃げ惑う。
しかし彼らの狙いは光太朗だ。2騎を何とか潜り抜け、こちらへと走ってくる者たちもいた。そこに、馬を降りていた騎士らが立ち向かう。
(ほえ~。魔導騎士団、つえぇえ……)
彼らの得意分野は魔法だが、それを使うまでもないようだ。襲撃者は剣で無慈悲に斬り払われ、血潮をまき散らしながら地面へと伏せる。
人を殺すことに、騎士らは惑いを見せない。普段穏やかで陽気な彼らも、生死をかけた場に出ると戦士に変わる。
その姿が、見惚れるほど格好良いのだ。
「きゃ~、魔導騎士団かっこいい! 推せる~!」
光太朗が黄色い声援を贈ると、騎士らの動きが一瞬止まる。しかし直ぐに復活し、雄叫びを上げて攻撃し始めた。
男の声援で申し訳ないが、それなりに嬉しいようだ。光太朗がにやりと笑うと、背後から声がした。
「……お前が、第4皇子のお気に入りのフェンデか……?」
光太朗が振り向くと、そこには血塗れの男が短剣を手に立っていた。必死で騎士らをかいくぐり、屋根へと登ってきたのだろう。
気配には既に気付いていたが、光太朗は両手を挙げて、降参のポーズを取った。
「フェンデかどうかなんて、見たら分かんだろ」
「大人しくしろ。でなきゃ殺す」
「お、珍しい。『生死は問わない』派か。これまでの先客は『生きたまま確保』派だったけどね」
光太朗は騎士らの方を見下ろす。もうほとんど、片が付いているようだ。
「味方はいないのに、俺を殺して良いのか? 馬鹿なの?」
「……っ! 舐めやがって!! 動くな!」
男は攻撃するでもなく、短剣を突きつけて来た。光太朗のアドバイス通り、人質を取ることにしたのだろう。
しかし光太朗の心は、突きつけられた刃にも、男から流れ出す殺気にも動かされない。
光太朗は左の掌底で、短剣を持つ男の手を叩き上げた。男の右腕が左へ跳ね飛ばされると同時に足を払い、肩口を下へと押さえつける。
男は体勢を崩し、屋根へと突っ伏した。光太朗は短剣を持つ腕を捻り上げながら、その上へ馬乗りになる。
下にいる騎士らから、ざわめきが広がった。珍しくキースの慌てた声がする。
「コウ! 大丈夫か!?」
「ああ、大丈夫!」
光太朗は騎士らへ笑顔を送りながら、自分の下にいる男をぎりぎりと締め上げる。
襲われたのは光太朗だが、彼らは結果的にリーリュイへ害をなそうとしているのだ。
光太朗から殺気が漏れ出し、周囲は鋭い空気に包まれた。
(出発して3日。……まぁ、そう上手くはいかないよなぁ……)
がたがたと揺れる幌馬車の中で、光太朗は耳を澄ませた。目の前には、ポーチから脱出したアゲハが、腹を見せたまま眠っている。
ランパルから王都への道のりを、魔導騎士団はゆっくりと進んでいた。
光太朗の乗った幌馬車を、馬に乗った騎士らが護るように囲む。この隊形で進んでいるのには訳があった。
光太朗は幌馬車の外へと、ひょっこり顔を出す。乾燥した地域を走っている為、砂塵が酷い。
光太朗に気付いたウルフェイルが、馬に乗ったまま近づいてきた。彼は防塵ゴーグルを上へずらすと、眉を吊り上げる。
「コウ、どうした?」
「ウルフ、襲撃かも。こっちに怒涛の勢いで迫って来てる音がする」
「またかよ……。多いな」
光太朗は幌馬車の枠を掴み、逆上がりをするように身体を回転させた。そのまま幌馬車の屋根に乗り、音のする方を見据える。
見えはしないが、やはり複数の馬がこちらへ駆けてくる音がする。
屋根の上にいる光太朗へ向かって、キースが声を張り上げた。
「こらぁ、コウ!! そこにいたら、狙ってくださいって言ってるようなもんだろぉ?」
「だって狙いは俺でしょ?」
ウルフェイルの指示で、2騎が先行して飛び出していく。後に残った者たちは、馬を降りて剣を構えた。
皆が戦闘態勢に移行する中、光太朗は屋根の上で胡坐をかく。
(ランパルを出て3日……襲撃は4回目。すげぇなぁ……)
多少の襲撃は予想されていたが、予想以上の頻度だ。もはや驚きを通り越して、うんざりとしている。進行も大幅に遅れてしまった。
しかも襲撃のターゲットは、例にもれず光太朗である。騎士らに申し訳なくて、ため息ばかりが出てしまう。
リーリュイは最も優秀な皇子だが、今までは王座に興味を示さなかった。そんな彼が本気を出し始めると、困る人間がたくさんいるらしい。
そしてリーリュイが初めて囲った側近が、フェンデである光太朗だ。リーリュイの弱みになるフェンデを握ろうと、各方面が躍起になっているようだ。
先行していった騎士が、襲撃者の馬を次々と攻撃していく。
襲撃者は30人ほどの数だったが、さすが騎士の中でもエースの魔導騎士団である。あっという間に襲撃者は瓦解していき、ばらばらと逃げ惑う。
しかし彼らの狙いは光太朗だ。2騎を何とか潜り抜け、こちらへと走ってくる者たちもいた。そこに、馬を降りていた騎士らが立ち向かう。
(ほえ~。魔導騎士団、つえぇえ……)
彼らの得意分野は魔法だが、それを使うまでもないようだ。襲撃者は剣で無慈悲に斬り払われ、血潮をまき散らしながら地面へと伏せる。
人を殺すことに、騎士らは惑いを見せない。普段穏やかで陽気な彼らも、生死をかけた場に出ると戦士に変わる。
その姿が、見惚れるほど格好良いのだ。
「きゃ~、魔導騎士団かっこいい! 推せる~!」
光太朗が黄色い声援を贈ると、騎士らの動きが一瞬止まる。しかし直ぐに復活し、雄叫びを上げて攻撃し始めた。
男の声援で申し訳ないが、それなりに嬉しいようだ。光太朗がにやりと笑うと、背後から声がした。
「……お前が、第4皇子のお気に入りのフェンデか……?」
光太朗が振り向くと、そこには血塗れの男が短剣を手に立っていた。必死で騎士らをかいくぐり、屋根へと登ってきたのだろう。
気配には既に気付いていたが、光太朗は両手を挙げて、降参のポーズを取った。
「フェンデかどうかなんて、見たら分かんだろ」
「大人しくしろ。でなきゃ殺す」
「お、珍しい。『生死は問わない』派か。これまでの先客は『生きたまま確保』派だったけどね」
光太朗は騎士らの方を見下ろす。もうほとんど、片が付いているようだ。
「味方はいないのに、俺を殺して良いのか? 馬鹿なの?」
「……っ! 舐めやがって!! 動くな!」
男は攻撃するでもなく、短剣を突きつけて来た。光太朗のアドバイス通り、人質を取ることにしたのだろう。
しかし光太朗の心は、突きつけられた刃にも、男から流れ出す殺気にも動かされない。
光太朗は左の掌底で、短剣を持つ男の手を叩き上げた。男の右腕が左へ跳ね飛ばされると同時に足を払い、肩口を下へと押さえつける。
男は体勢を崩し、屋根へと突っ伏した。光太朗は短剣を持つ腕を捻り上げながら、その上へ馬乗りになる。
下にいる騎士らから、ざわめきが広がった。珍しくキースの慌てた声がする。
「コウ! 大丈夫か!?」
「ああ、大丈夫!」
光太朗は騎士らへ笑顔を送りながら、自分の下にいる男をぎりぎりと締め上げる。
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