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第1章
10話
しおりを挟む「イルシス嬢、取り乱して…驚かせてしまって悪かった」
その後、フェルナンド様は…私が魔術師として優れているとか、容姿についても可愛いとか?ちょっと恥ずかしいくらいにたくさん褒めてくださった。
さっきも、伯爵家に“ゴミ”と言われた私のために怒ってくださったのだ…とてもお優しい方なのだろう。
私は、今の生活についてしっかりとフェルナンド様にお話をしておいた。
だから当然、このまま伯爵家へ帰れるだろうと思っていた。
「兄弟子さま、今日はありがとうございました」
「伯爵家へは帰さないよ」
「へ?」
なぜに?
今、私は幸せだと説明しましたよね?
「侯爵家の…総意だと思ってくれていい」
「私が生きていくのに、その総意とやらで邪魔をするのですか?」
「…っ!…そうではない…」
では、帰らせていただきます。
「服はどこでしょう?そろそろ…失礼したいと思いま…」
「待ってくれ!」
フェルナンド様が必死に私を引き止めようと焦っている姿に、困惑してしまう。
「…君が“イシス”として生きていくことを…私が手助けするというのは?それならどうだ?!」
「兄弟子さまの仰る意味が分かりませんが…?」
「だから…その…そうだ、ここから仕事に行けばいい!」
何ですって?
伯爵家の小屋から、侯爵家へ住まいがグレードアップするということですか?
「伯爵家では、君の存在を朝晩の食事だけで把握していて…姿は確認しないんだろう?」
「…確かにそうですが…」
私に出会うと“呪われる”らしいですから。
「なら、ここにいたって構わないはずだ。
伯爵家で出される食事の後片付けくらい、こちらの者にさせる。簡単なことだ…何も気にしなくていい」
こんなフカフカなベッドで毎日眠れるなんて、それはとても有り難いことだけど…。
「師匠が君を心配しているんだ。勿論、私もそうだよ。
頼むから言うことを聞いてくれ」
また、あの気遣うような眼差し。
…うーん…本当に迷惑じゃないのかな…。
「…じゃあ…兄弟子さまは、私のことを“イシス”って呼んでくださいますか…?」
フェルナンド様がパアッと明るい顔をした。
美形が喜ぶと、こんなに眩しいものなのね。
眼をやられるわ…気を付けよう。
「あぁ…イシス。では、君も私のことを…“お兄様”って…呼んでくれないか?」
むむっ、照れた美形も眩しいのね…気を付けよう。
「…お…お兄様?では…よろしくお願いします!」
商談成立。
流れ的には…抱き合ってもいいシチュエーションなのだけど、魔眼持ちにはハードルが高過ぎるので無理でした。
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