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おまけ話

それぞれの幸せ (イシスSide)

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宮殿では、皇后陛下の“バースデイパーティー”が盛大に開かれていた。


皇帝陛下が皇后陛下をエスコートされ、お2人はホールの中心で優雅に何曲もダンスを踊られた。

皇太子殿下と皇太子妃殿下はにこやかにその様子をご覧になっていたが、側妃殿下と第二皇子ユーリス殿下のお席は空いたままとなっていて…一向にお越しになる気配がない。


大広間では、帝国一の人気歌姫が伸びやかな歌声を披露し、楽士たちが雅な音楽を奏でている。
招かれた高位貴族たちは、皇后陛下に一言お祝いの言葉を述べようと…長い列を作っていた。




「マルフェリウス公爵夫人、レガリア伯爵夫人」


お声をかけてくださったのは、ナターリエ皇太子妃殿下。


「「皇太子妃殿下!」」

「お2人とも、お元気そうね」



クリストファー殿下は臣籍降下をされ、現在はマルフェリウス公爵家の若きご当主。
婚姻契約を結んでいたタチアナ様とは、1ヶ月ほど前に結婚式を挙げたばかり。


フェルナンド様は側近と護衛の任期を無事に終え、レガリア伯爵となりました。私たち夫婦は、帝都から離れて緑豊かな領地へと移り住んでいます。

以前の豪邸・・は、帝都でのパーティーや社交シーズンの時にタウンハウスとして使用させていただくことにしました。


結婚してそれぞれ身分に変化はあったものの、私たち3人は変わらず仲良しです。





「少し…あちらで話しませんこと?」


ナターリエ妃殿下は、私たちを皇族専用の個室へと誘ってくださった。

部屋には、冷えたワインやシャンパンなどが数多く用意され、メイン料理からデザートまで美しく盛り付けられたお皿がテーブルの上にズラリと並んでいる。

給仕は不要だと…ナターリエ妃殿下はお人払いをされた。



伯爵夫人として初めて招かれたパーティーなのに、いきなり最高級の場所へと来てしまったわ。
部屋の壁も灯りもテーブルセットも…食器やカトラリーまで…全てがキラキラと輝いていて眩しい!何?!この部屋!


お腹が空いていた私は、自分が食べたいのを理由に…お2人へお料理を取り分けたり、飲み物をお配りする。

このお料理が美味しそうだとか、おススメだとか3人で話しながら…食べたいものをどんどんお皿へと盛っていく。

個室って、周りの目を気にせず好きに食べれていいわ。




「さぁ、身分など気にせずにお喋りいたしましょう。
お2人とも、新しい暮らしはどうかしら?」


タチアナ様はクリストファー様と新婚生活がスタート、私は帝都から離れて過ごし始めたところ。


「やはり領地経営は難しいですわ。でも、やり甲斐がありますの!私は楽しんで笑顔で過ごしております」

「タチアナ様ならそうだと思いましたわ。クリストファー様は広い視野をお持ちだけれど…細かなことに気付けるのは、きっとタチアナ様でしょうね」

「あ、確かに…そうかもしれません。2人で力を合わせるとバランスが取れていい感じですわ」

「ふふっ、仲良くしているのね。イシス様は?」

「領地のことはフェルナンド様が中心ですし、私は魔導具の改良が上手くいっている分…勉強不足ですわ。
これからは伯爵夫人として邸内のことを任されますので、1年間お義母様からご指導を受けて頑張ろうと思います。
まだこれから…という感じでしょうか」

「1年?」

「えぇ…1年後、お義父様とお義母様はノエル様の領地へと移られるご予定なのです」


私たちに領地を任せられるようになったら、お義父様たちは隠居され…実の娘であるノエル様のお近くでゆっくりとお過ごしになる。


「それは、フェルナンド様も後1年で独り立ちされる…ということね?優秀なフェルナンド様でも、それなりに大変だと思いますわ」

「はい。以前とはまた違う忙しさですけれど、毎日頑張って学んでいらっしゃいます。どうやら、フェルナンド様は領地で人気者みたいですから…ふふっ」

「領主が領民から愛されているなら心配ないですわね。
私も、この半年間は領民の方たちと親睦を深めてまいりましたのよ」

「落ち着いたら、タチアナ様のところに遊びに行かせてくださいね」

「是非いらして!私たちの領地は意外と近いんです!」

「イシス様は、全く知識のない状態から数ヶ月で魔導具の改良をし始めたお方だもの…何をしてもすぐに要領を得るに違いありませんわ。

お2人は、どんな時でも領地を守り…お力を尽くすのでしょうね。領民は本当に幸せよ」

「「…妃殿下…」」



皇太子妃として自信に満ち溢れ、とてもいい表情をされていらっしゃるわ。




「…私は…子供を授かりましたの…」

「えぇっ!まぁっ!妃殿下、おめでとうございます!
あれ?待ってください…私“叔母”になりますの?!」

「ありがとうございます。もう…タチアナ様ったら、落ち着いて。気が早いわ」

「本当におめでとうございます!
そういえば、お食事もあまり…お酒も飲まれませんでしたわね。今は体調に問題なくお過ごしでいらっしゃるの?」

「えぇ…最近やっと落ち着きましたの。今日は、無理をしないで短時間だけ出席するようにと殿下に言われたのですけれど、お2人にお会いして直接お伝えしたくて…」


タチアナ様と私は顔を見合わせ…微笑んだ。


「エリック殿下もお喜びでいらしたでしょう」

「とても喜んでくださいましたわ。もしかすると、驚きのほうが先だったかもしれませんけれど…。
子を宿す私とは違って、殿下は実感がわかないですものね。それでも、優しく私の身体を気遣ってくださいます。

運命的な出会いや大恋愛はできませんでしたが…将来この国を背負っていかれる殿下をお支えしていきたい、子供を大切に育てたい。そう心から思っておりますわ」

「妃殿下がお幸せそうで何よりです。ね、イシス様」

「はい。こんなにもうれしい知らせを直接教えていただけるだなんて…私たちも幸せです。ね、タチアナ様」



タチアナ様の新婚生活についても…お聞きしようかな?









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