星降る真夏の夜に、妖精の森で迷子になる。

折原ミフク

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プロローグ

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 だから!
 何で真夏に雪が降ってんだよ!!

 叫びたくても声が出ない。
 出ないと言うより出せない。猛吹雪が口の中に入って来て声を出せない。より先に息が出来ない。それどころか肺に冷気が入り込んでそのまま凍り付いて死んでしまう。
 そんな体験した事がないが、確信出来る。
 絶対に死ぬ。


 ーーーーーーーーー


 夏休みに入ったとこだった。
 いつもの様に、靴に足を突っ込み、扉を開ける。そしていつもの様に鍵を掛けて、いつも様に身体を伸ばして大きく深呼吸する。

 隣の家は見ない。
 物心ついてからの習慣は、そこだけ変わった。
 最近の事だ。
 カラカラとニ階の窓が閉められる音がする。それが俺の胸を痛くする。いつもなら声が掛かる筈なのに、それも変わってしまった。更に壁を厚くする様に俺はフードを深く被った。

 暫く行って踏切で止まる。極彩色の電車が通り過ぎるのを、視界の上の端で目を足元に移した状態で見ながら。
 と、その時。

 ーーーー≠ーー/ーー>一ー……

(なんだ? 耳鳴り?)

 何かおかしいと感じて目を上げても何も変わった様には見えない。
 気のせいにして遮断機の上がった踏切に足を踏み入れる。
 そういう時は引き帰すべきなんだ。多分、絶対。でも俺が気付いたのは森に深く足を踏み入れた後だった。
 妖精の森と呼ばれる其処に。


 家族は基本俺を放ったらかしだ。寂しいと思った事はない。小さい頃から構われるのが嫌いで誕生日も義務的な感じが嫌だったので思いっ切り顔に出してたらいつの間にやら特別に祝われる事はなくなった。
 たった一人を除いて。
 それも俺のせいで今年は無くなり、独りだけの誕生日だったが、だからって自殺を図ろうとした訳じゃない。
 基本独りで平気なんだ。
 人間関係は希薄だがイジメられるとか無かったし学校のクラスでもフツーに喋る友達は居た。成績も良く運動も出来たしルックスも悪くない。筈。自慢だけどバレンタインには毎年複数の女の子からチョコ貰った。
 ただ、好きな相手には好かれなかった。
 それだけなんだけど。
 それが一番、重要か。
 だからって、自殺なんて図らない。言うの二度目だけど!
 思わず叫んじゃうけど!
 そういうつもりで行ったんじゃない。
 それが、妖精の森。
 人によっては、魔の森と呼ばれる所であったとしても。

 家の近所にある森は森という程深くない。林に毛の生えた程度で狸やイタチなんかは居るらしいが、ジジババは朝の散歩に行くし、子供は学校帰りに寄り道する。大人も遅くなるなとは言うが行ってはいけないなどと注意はしない。

 ただ。
 妖精が居る。
 という話は俺も小さい頃聞いた。
 妖精を見たという人間もいるし、その妖精にプレゼントを貰ったりもするらしい。
 狸か狐に化かされたように10分程度で通り抜け出来るのに道に迷って朝入って出て来れたのは日も暮れるとこだったとか。中には何ヶ月も経ってたとか何年も経ってたとか。何年も経ってた人は家族離散の上自分の墓まであったとか。本人の体感ではほんの数日の事なのに。浦島太郎か。
 嘘みたいな話はアンダーグラウンドに広まってて、他所からわざわざ探検しに来る人間もいた。俺も富士山登頂に行くような格好をした人と会った事がある。その彼が森に消えてから1時間もしないうちに森に一番近いカフェで再会した時は爆笑してしまった。

 俺は物心ついてから毎日のように行く。
 どこかに旅行に行ったり高熱でベッドから起上がれないなんかを除いて。
 春夏秋冬。
 雨が降ろうが、雷が鳴ろうが。
 そして、雪が降っていようが。
 ただ、冬だったけど!
 だから!
 なんで!
 真夏に雪が降ってる?!
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