2 / 72
異世界
しおりを挟むクルクルと螺旋を描きながら落ちて来る雪を下から眺めていると、グレーの空に吸い込まれそうな錯覚に陥る。
窓枠に背を凭れさせ逆さに半身を乗り出させる様にして、雪が降って来るのを眺めていたら、顔では溶けていたそれが髪に積もるのと同じ位顔に積もり出した。
そろそろ引っ込もうかなと思った時、最後の一片を俺に残して雪が消えた。
風が雲を散らして、代わりに月が顔を出す。満月が少し欠けている。
「また熱が出るぞ」
ヨーロッパ風の豪華な部屋に幾人かの異世界人だという人達が居た。尤も向こうにしてみれば俺が異世界人なんだが。
注意して来たのは、リロイと言う。公爵家の御令息だそうだ。異世界にはフツーにお貴族さま居るんですね。有難い注意が、エラそーに聞こえる。ダメだ。そんな事思っちゃ。命の恩人だぞ。
「温かいミルク入りましたよ」
「ありがと。キール」
もう一人の恩人には素直に礼を言う。
「ブランデー入れました。お酒は大丈夫ですか?」
大丈夫と言う前に、
「病み上がりに酒はまずいんじゃないか。それにリョウの世界ではリョウはまだ成人していないんだろう」
またエラそーに注意が入る。
やっとの普通の食事の後だぞ。まったりゆったりしたい。
「三日も経ちゃ、大丈夫だろ。お陰様で」
救かったのは嬉しいんですよ?
本当に。
でも、その救かり方というか救けられ方というか。
色んな思いを込めて、俺が頭を抱えていると、暢気な声と共に勢いよく扉が開けられた。
「食後のお茶だな! 好い香りだ!」
<<<<<<
猛吹雪だった。
視界が真っ白で何も見えないまま恐怖で歩き続ける内に、バシャッと水に足を突っ込んだ。森の中には池があるのだ。池まで5分掛からない筈なのに、何時間も歩いてる気がする。慌てて迂回しようとして池の淵にある竹に当たり葉から雪を落とした。
有り得ない様な突風が来て、俺を空中に巻き上げる。
上下が分からなくなる迄吹き上げられ、そしてピタリと全てのものが止まった。
風も、雪も、時間さえ止まった気がした。
あろう事か、俺も止まっていた。
空中で逆様。
その時、白い光が出現し、それが大きく広がって一瞬止まり。更に縮まる。俺より少し大きい位まで縮まって、それに取り込まれる様に俺は包まれた。
そして、俺はその白い光から生まれる様に、ゆっくりと落下を開始した。
ぽこん、と完全に光から出た途端スピードは増し息が出来ない位になった時、池の水面に激しく叩き付けられ、また水面で一瞬止まってから水中に沈んで行く。
息が出来ない。
寒さで体も動かない。
水と冷気で押し潰される。
その時、ヒヨリの顔が浮かんだ。
胸に温かいものが広がって行く。
あ、死ぬんだな。と分かった。
でも良い。
俺のせいで険悪になっちゃったけど。
謝れなかったけど。
険悪なのは罪悪感に苛まれる俺の方だけで、優しいヒヨリはごちゃごちゃしてる俺に困ってただけなんだろうけど。
良かった。最期に一番見たい顔を思い出して。
圧迫感が解けて体の力が抜けゆっくりと沈み出す。水底に迎え入れられそうになった時、ガッシリと力強いものに脚を掴まれた。
放っといてくれれば良いのに。
面倒くさい。
救け甲斐のない俺を、その力強いものは脚から体を手繰り寄せ抱きかかえ、息が出来る所まで引っ張り上げた。
抱きかかえられたまま、淵まで辿り着き降り積もった雪の上に横たえられる。
ゴボッと、冷たい水を雪の上に吐き出すと楽になると同時に、咳き込んで苦しくなる。
誰かが背中を摩ってくれて、その手から体に熱が蘇る。
「なんだ。人工呼吸は無しか」
俺を抱きかかえたままの人の後ろからの暢気な声を聞いて、俺はやっと気を失った。
>>>>>>
四人揃ったところで、食後のお茶タイム。
俺のはミルクだけど、後の三人は香の好いお茶を飲んでいる。
豪華なソファにテーブル。茶器も最高級品なんだろうな。元の世界みたいにブランドとかあるんだろうか。元の世界でも俺にはそんな知識ないけど。ヒヨリだったら分かるんだろう。まぁ、ここは異世界だから、元の俺たちの知識なんて役に立たないか。
飲み終わったところで、
「さて。今日の魔力の譲渡はどうする?
私としては残念だが、ここまで快復すれば、もう要らないかな」
色っぽい目つきで、グエン殿下は宣った。
0
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。
これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。
無自覚両片想いの勇者×親友。
読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない
波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。
異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。
強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。
彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。
しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。
「俺に触れられるのは、お前だけだ」
呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。
となります。
勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される
八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。
蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。
リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。
ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい……
スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)
追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜
たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる