星降る真夏の夜に、妖精の森で迷子になる。

折原ミフク

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異世界

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 クルクルと螺旋を描きながら落ちて来る雪を下から眺めていると、グレーの空に吸い込まれそうな錯覚に陥る。
 窓枠に背を凭れさせ逆さに半身を乗り出させる様にして、雪が降って来るのを眺めていたら、顔では溶けていたそれが髪に積もるのと同じ位顔に積もり出した。
 そろそろ引っ込もうかなと思った時、最後の一片を俺に残して雪が消えた。
 風が雲を散らして、代わりに月が顔を出す。満月が少し欠けている。
「また熱が出るぞ」
 ヨーロッパ風の豪華な部屋に幾人かの異世界人だという人達が居た。尤も向こうにしてみれば俺が異世界人なんだが。
 注意して来たのは、リロイと言う。公爵家の御令息だそうだ。異世界にはフツーにお貴族さま居るんですね。有難い注意が、エラそーに聞こえる。ダメだ。そんな事思っちゃ。命の恩人だぞ。
「温かいミルク入りましたよ」
「ありがと。キール」
 もう一人の恩人には素直に礼を言う。
「ブランデー入れました。お酒は大丈夫ですか?」
 大丈夫と言う前に、
「病み上がりに酒はまずいんじゃないか。それにリョウの世界ではリョウはまだ成人していないんだろう」
 またエラそーに注意が入る。
 やっとの普通の食事の後だぞ。まったりゆったりしたい。
「三日も経ちゃ、大丈夫だろ。お陰様で」
 救かったのは嬉しいんですよ?
 本当に。
 でも、その救かり方というか救けられ方というか。
 色んな思いを込めて、俺が頭を抱えていると、暢気な声と共に勢いよく扉が開けられた。
「食後のお茶だな! 好い香りだ!」

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 猛吹雪だった。
 視界が真っ白で何も見えないまま恐怖で歩き続ける内に、バシャッと水に足を突っ込んだ。森の中には池があるのだ。池まで5分掛からない筈なのに、何時間も歩いてる気がする。慌てて迂回しようとして池の淵にある竹に当たり葉から雪を落とした。
 有り得ない様な突風が来て、俺を空中に巻き上げる。
 上下が分からなくなる迄吹き上げられ、そしてピタリと全てのものが止まった。
 風も、雪も、時間さえ止まった気がした。
 あろう事か、俺も止まっていた。
 空中で逆様。
 その時、白い光が出現し、それが大きく広がって一瞬止まり。更に縮まる。俺より少し大きい位まで縮まって、それに取り込まれる様に俺は包まれた。
 そして、俺はその白い光から生まれる様に、ゆっくりと落下を開始した。
 ぽこん、と完全に光から出た途端スピードは増し息が出来ない位になった時、池の水面に激しく叩き付けられ、また水面で一瞬止まってから水中に沈んで行く。
 息が出来ない。
 寒さで体も動かない。
 水と冷気で押し潰される。
 その時、ヒヨリの顔が浮かんだ。
 胸に温かいものが広がって行く。
 あ、死ぬんだな。と分かった。
 でも良い。
 俺のせいで険悪になっちゃったけど。
 謝れなかったけど。
 険悪なのは罪悪感に苛まれる俺の方だけで、優しいヒヨリはごちゃごちゃしてる俺に困ってただけなんだろうけど。
 良かった。最期に一番見たい顔を思い出して。
 圧迫感が解けて体の力が抜けゆっくりと沈み出す。水底に迎え入れられそうになった時、ガッシリと力強いものに脚を掴まれた。
 放っといてくれれば良いのに。
 面倒くさい。
 救け甲斐のない俺を、その力強いものは脚から体を手繰り寄せ抱きかかえ、息が出来る所まで引っ張り上げた。
 抱きかかえられたまま、淵まで辿り着き降り積もった雪の上に横たえられる。
 ゴボッと、冷たい水を雪の上に吐き出すと楽になると同時に、咳き込んで苦しくなる。
 誰かが背中を摩ってくれて、その手から体に熱が蘇る。
「なんだ。人工呼吸は無しか」
 俺を抱きかかえたままの人の後ろからの暢気な声を聞いて、俺はやっと気を失った。

>>>>>>

 四人揃ったところで、食後のお茶タイム。
 俺のはミルクだけど、後の三人は香の好いお茶を飲んでいる。
 豪華なソファにテーブル。茶器も最高級品なんだろうな。元の世界みたいにブランドとかあるんだろうか。元の世界でも俺にはそんな知識ないけど。ヒヨリだったら分かるんだろう。まぁ、ここは異世界だから、元の俺たちの知識なんて役に立たないか。
 飲み終わったところで、
「さて。今日の魔力の譲渡はどうする?
私としては残念だが、ここまで快復すれば、もう要らないかな」
 色っぽい目つきで、グエン殿下は宣った。
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