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魔法
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まただ。
また耳鳴りがする。
「どうしました? 大丈夫ですか?」
キールが気遣わしげに訊いて来る。
「大丈夫。ただの耳鳴り。小さい頃からよくあるんだ」
慌てて否定する。何故なら、お気楽極楽な王子様が、
「魔力が足りてないんじゃないか?」
などと言い出すからだ。
この世界には魔法というものが存在する。元の俺たちの世界でもあったのかも知れないが、非現実と揶揄されるものが、ここには現実として確固と存在する。
で。その、異世界の人間には魔力というものに耐性、免疫がなく、不調を来たすので馴染ませる事が必要となる。
異世界からのお客などというものは居ない事はないのだが非常に珍しく、報告事例も滅多にない。
が、言い伝えによると、食事を摂ってゆっくり馴染ませるのも良いのだが、もっと簡単な方法が存在する。
魔力の強い人間に譲渡して貰うのだ。
ただ手を当てるだけでも良いのだが、手っ取り早く摂取するにはもっと濃厚な接触が有用で。つまり、キスやセックスなどのお互いの唾液交換が非常に効果的であるらしい。
なんか騙されてないか?
とも思うのだが、この三日で俺は身をもってそれを証明してしまっていた。
何せ死にかけで食事を摂る事も出来ず、医者に診せようにもど田舎で呼んでくるのに日日が掛かる。
魔力の強い人間に譲渡して貰うのが良いのだが。魔力の強い人間なんて滅多に居ないのだが。
居たんだね。すぐそこに。
溺れてるのを救けてくれた、異世界に落ちて来て一番最初に遭ったのが、この国有数の力の持ち主だった訳だ。都合の良いんだか悪いんだか、それで俺は彼等から治療を兼ねて魔力譲渡をして貰う事になった。運あるんだろう……。
勿論、死にかけだったのでキスだけなのだが。人工呼吸と同じだ。だがそうと割り切るには、俺の経験値が低過ぎる。
例えそれが、物凄い美形ばかりから受けるのだとしても。
例えそれが、同性の恋愛がフツーの事として認められている世界だとしても。
例えそれが、
「リョウは異性愛者ですか?」という質問に対して、
「多分。でも、今好きなのは男なんだ」
というのが俺の答えだったとしても。
この上なく、居た堪れない。
「やはり風属性なのかも知れません」
ある程度なら、感覚で分かるらしいが。
「耳が良いのです」
「それだけだけどな」
同じ風属性の殿下が言う。
「あと風を操る。条件が良ければ飛んだりも出来る」
「飛べんの?!」
盛り上がったら。
「着地に失敗したら、大怪我だぞ」
リロイから茶々が入る。
当の殿下は何か覚えがあるらしく、目を泳がせる。
「訓練が要りますね」
でも俺は……。
水と火と風。その三つが人の属性としてある。
「キールは何?」
「私は水属性です」
「治癒が得意なんだ。私みたいな風でも、リロイの火でも出来るのだが、水は治癒に秀でている。声なんかにも癒し効果があってな。キールの声でストレス解消出来る」
「何か分かる」
キールは青みがかった銀色の瞳と髪をしている。髪は長くて後ろで一つに束ね、背も高くすらっとして、冷たい感じの人になりそうなのに、受ける印象がとても柔らかい。穏やかなのが身から溢れまくっている。
なんと彼は転生者だという。
元は俺と同じ日本人で、30半ばで死んだらしい。うちの親よりは上、祖父母よりは下の年代って事?
転生者は転移して来るよりは遥かに数が多いが、現実で生身で体験することの方が刺激が強いので、前世の記憶を保ったままというのは難しいらしくどんどん忘れて行く。
「私も小さい頃は記憶も確かだったんですが。最近は自分の名前まで忘れそうです」
救けられた時ずっと背中を摩ってくれてたのが彼。治癒してくれてたらしい。
グエンは嘘か誠か本当に王子様。しかも王太子殿下。こんなとこで何やってんの。
「城なんて、退屈の極み」
彼は金色の髪、青い瞳。背も高く、眉目秀麗。如何にも王子様! って、ルックスなんだが。人工呼吸だの何だの、ほざいてたのが彼。このチャラいのがな~。これ風属性の特徴じゃないよな。嫌だな。
そして、リロイ。公爵家の御令息で、泉に飛び込んで救けてくれたのが、彼。彼も男前で。この国のトップ3集めちゃいましたか。訊くと、火属性。因みにここは公爵家の別邸で。妖精の森は敷地内。
そう何と、こちらでも妖精の森。
ただ向こうと違って、滅多にお目には掛かれないらしいが妖精は本当に居る。という事になっている。しかも、魔の森とも言われていて、公爵家領内という事もあり人は寄り付かない。そう言えば、使用人見ない。公爵家なんてわんさか居そうなのに。
で、そんなとこに何で彼らが都合良く居合わせたのかというと。昔から出入りしてるのに怖い目には遭った事がないのと。
「予言があったんです」
国を挙げての大規模なという訳でなく、予言がたまに降って来る人間に、
「妖精の森に何か来るらしいよ~」
って。ゆる~く言われてやって来た。
そしたら俺が降って来て。
予言は本当になった。
ありがとう。預言者の人。貴方のお陰で命拾いしました。
「ヒヨリというのは誰だ?」
「え?」
「譫言でずっと呼んでた」
キールは元日本人なので、それが人の名前であると見当がついた様だ。
気になるのが彼の事だけなので、ずっと譫言で口にしてたとしても不思議はない。
「どんな字を書くんですか?」
「日に和む」
「良い名前ですね」
また耳鳴りがする。
「どうしました? 大丈夫ですか?」
キールが気遣わしげに訊いて来る。
「大丈夫。ただの耳鳴り。小さい頃からよくあるんだ」
慌てて否定する。何故なら、お気楽極楽な王子様が、
「魔力が足りてないんじゃないか?」
などと言い出すからだ。
この世界には魔法というものが存在する。元の俺たちの世界でもあったのかも知れないが、非現実と揶揄されるものが、ここには現実として確固と存在する。
で。その、異世界の人間には魔力というものに耐性、免疫がなく、不調を来たすので馴染ませる事が必要となる。
異世界からのお客などというものは居ない事はないのだが非常に珍しく、報告事例も滅多にない。
が、言い伝えによると、食事を摂ってゆっくり馴染ませるのも良いのだが、もっと簡単な方法が存在する。
魔力の強い人間に譲渡して貰うのだ。
ただ手を当てるだけでも良いのだが、手っ取り早く摂取するにはもっと濃厚な接触が有用で。つまり、キスやセックスなどのお互いの唾液交換が非常に効果的であるらしい。
なんか騙されてないか?
とも思うのだが、この三日で俺は身をもってそれを証明してしまっていた。
何せ死にかけで食事を摂る事も出来ず、医者に診せようにもど田舎で呼んでくるのに日日が掛かる。
魔力の強い人間に譲渡して貰うのが良いのだが。魔力の強い人間なんて滅多に居ないのだが。
居たんだね。すぐそこに。
溺れてるのを救けてくれた、異世界に落ちて来て一番最初に遭ったのが、この国有数の力の持ち主だった訳だ。都合の良いんだか悪いんだか、それで俺は彼等から治療を兼ねて魔力譲渡をして貰う事になった。運あるんだろう……。
勿論、死にかけだったのでキスだけなのだが。人工呼吸と同じだ。だがそうと割り切るには、俺の経験値が低過ぎる。
例えそれが、物凄い美形ばかりから受けるのだとしても。
例えそれが、同性の恋愛がフツーの事として認められている世界だとしても。
例えそれが、
「リョウは異性愛者ですか?」という質問に対して、
「多分。でも、今好きなのは男なんだ」
というのが俺の答えだったとしても。
この上なく、居た堪れない。
「やはり風属性なのかも知れません」
ある程度なら、感覚で分かるらしいが。
「耳が良いのです」
「それだけだけどな」
同じ風属性の殿下が言う。
「あと風を操る。条件が良ければ飛んだりも出来る」
「飛べんの?!」
盛り上がったら。
「着地に失敗したら、大怪我だぞ」
リロイから茶々が入る。
当の殿下は何か覚えがあるらしく、目を泳がせる。
「訓練が要りますね」
でも俺は……。
水と火と風。その三つが人の属性としてある。
「キールは何?」
「私は水属性です」
「治癒が得意なんだ。私みたいな風でも、リロイの火でも出来るのだが、水は治癒に秀でている。声なんかにも癒し効果があってな。キールの声でストレス解消出来る」
「何か分かる」
キールは青みがかった銀色の瞳と髪をしている。髪は長くて後ろで一つに束ね、背も高くすらっとして、冷たい感じの人になりそうなのに、受ける印象がとても柔らかい。穏やかなのが身から溢れまくっている。
なんと彼は転生者だという。
元は俺と同じ日本人で、30半ばで死んだらしい。うちの親よりは上、祖父母よりは下の年代って事?
転生者は転移して来るよりは遥かに数が多いが、現実で生身で体験することの方が刺激が強いので、前世の記憶を保ったままというのは難しいらしくどんどん忘れて行く。
「私も小さい頃は記憶も確かだったんですが。最近は自分の名前まで忘れそうです」
救けられた時ずっと背中を摩ってくれてたのが彼。治癒してくれてたらしい。
グエンは嘘か誠か本当に王子様。しかも王太子殿下。こんなとこで何やってんの。
「城なんて、退屈の極み」
彼は金色の髪、青い瞳。背も高く、眉目秀麗。如何にも王子様! って、ルックスなんだが。人工呼吸だの何だの、ほざいてたのが彼。このチャラいのがな~。これ風属性の特徴じゃないよな。嫌だな。
そして、リロイ。公爵家の御令息で、泉に飛び込んで救けてくれたのが、彼。彼も男前で。この国のトップ3集めちゃいましたか。訊くと、火属性。因みにここは公爵家の別邸で。妖精の森は敷地内。
そう何と、こちらでも妖精の森。
ただ向こうと違って、滅多にお目には掛かれないらしいが妖精は本当に居る。という事になっている。しかも、魔の森とも言われていて、公爵家領内という事もあり人は寄り付かない。そう言えば、使用人見ない。公爵家なんてわんさか居そうなのに。
で、そんなとこに何で彼らが都合良く居合わせたのかというと。昔から出入りしてるのに怖い目には遭った事がないのと。
「予言があったんです」
国を挙げての大規模なという訳でなく、予言がたまに降って来る人間に、
「妖精の森に何か来るらしいよ~」
って。ゆる~く言われてやって来た。
そしたら俺が降って来て。
予言は本当になった。
ありがとう。預言者の人。貴方のお陰で命拾いしました。
「ヒヨリというのは誰だ?」
「え?」
「譫言でずっと呼んでた」
キールは元日本人なので、それが人の名前であると見当がついた様だ。
気になるのが彼の事だけなので、ずっと譫言で口にしてたとしても不思議はない。
「どんな字を書くんですか?」
「日に和む」
「良い名前ですね」
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