4 / 72
雪と月
しおりを挟む
満月が少し欠けている。
俺に充てがわれた寝室で、窓を開けて空を見上げる。ティールームと同じ豪華な部屋。
雲がすっかり消えてしまった空には月がかかり、降り積もった雪をキラキラ照らしている。
「うふふ。またリロイに怒られますよ」
「キール。こっちの月も一つ?」
「そうですね。気にもしなかったですが」
多分、俺の年代の毒され方なんだな。キールが転生する前ってオタクに市民権なかったとかいうから。俺の年代ではオタクですらない。俺はアウトドアなのであまりゲームしないんだけれど、それでも月が幾つもあるのは異世界での定番だった気がする。ここでは同じ。
月は一つ。
「下弦の月ですね。半月にはまだですが。
耳鳴りはどうですか?」
「今日はしてないかも」
あったとしてもそんなに強烈ではなく俺自身が気付いてない事もある。
「昔、お姫様が満月の夜に現れて、多大な富を齎したという話があります」
キールが横に来て月を仰ぎ見、そんな話を始めた。
「これには諸説あって、元々こちらのお姫様が異世界に行ってお宝を持って帰ったとか。お宝を持って来たのはお姫様を追って来た王子様だとか」
「かぐや姫みたい。でもあれって宝は手に入ってないよな」
『竹取物語』を逆にすればそんな感じになるけど。王子様が追っかけてったという部分もなかった筈。
そしてキールは、思わせぶりに月から俺に視線を落とした。
「貴方が現れたのも満月でした」
「俺、お宝持ってない」
「貴方自身が宝という事もある」
やっぱり何か居た堪れない。
強弱はあるが魔力なんて誰にでもあるとかいうけど実感ないし、東洋人の姿形が珍しい位しか、俺に特別感はない。
「これね、お伽話ではないんです」
え?
キールはとんでもない話を始めた。
「二百年程前に実際にあった話として公式文書に残されてるんです。
話は公開されてなくて、私も見た事はありません。ただ」
と、彼の話は続く。
「その時の衣裳は遺されていて、一般には公開されていませんが。特別に観る事が許される事もあります」
俺の目は今きっと満月みたいにまん丸だ。息もちゃんと出来てない気がする。
「観たの?」
キールはふんわりと微笑った。
「十二単衣ではありませんでした」
絵本や挿し絵では十二単衣が定番だが、話の書かれた年代としては奈良時代かそれより前だと、俺も聞いた事がある。
キールは頷く。
そう言えば、池の周りに竹があった気が。竹なんて何処にでもあるから気にしなかったけど、こんな話を聞かされたら特別な意味があるのかと疑ってしまう。
「そうなると千何百年と経ってる筈ですが、こちらでは二百年前程度の話です」
「五つの宝物だっけ」
「西洋的には、フィフス・エレメンツですかね」
「異世界でも俺たちが元居た世界でも似たような話が出来上がるって事? 西洋も東洋も問わず。勝手に?」
話がデカくなって来たぞ。
「事実だとしたらどうですか?」
「う~ん。俺はあんまり興味ないかな」
本当にあるんだとしたら面白いけど。
「リョウは求めるものが判ってるんですね」
「お宝で欲しいものが手に入るんなら別だけど」
「まぁ、普通はそうですね」
俺にとっての問題は、千何百年が二百年という事だ。
時の流れ方が違うって事?
こっちで二百年が、向こうで千何百年?
でも、かぐや姫の話がもっと前だったら?
え? だったらキールの年齢とかもおかしくない? 俺の勘違いか?
『竹取物語』の確かな年代って判ってないと聞いたことが。こういうのヒヨリが得意なんだけどな。俺のここいら辺の知識は全部ヒヨリのだ。
俺の願い事はそこなんだけど。
ケンカ別れしたまんまの幼馴染の顔が浮かぶ。
7倍から8倍? 下手をしたらもっと?
かぐや姫じゃなくて、浦島太郎じゃん。
向こうの妖精の森にもあったじゃん。浦島太郎話あったじゃん。
嫌~だぁ、もう!
俺に充てがわれた寝室で、窓を開けて空を見上げる。ティールームと同じ豪華な部屋。
雲がすっかり消えてしまった空には月がかかり、降り積もった雪をキラキラ照らしている。
「うふふ。またリロイに怒られますよ」
「キール。こっちの月も一つ?」
「そうですね。気にもしなかったですが」
多分、俺の年代の毒され方なんだな。キールが転生する前ってオタクに市民権なかったとかいうから。俺の年代ではオタクですらない。俺はアウトドアなのであまりゲームしないんだけれど、それでも月が幾つもあるのは異世界での定番だった気がする。ここでは同じ。
月は一つ。
「下弦の月ですね。半月にはまだですが。
耳鳴りはどうですか?」
「今日はしてないかも」
あったとしてもそんなに強烈ではなく俺自身が気付いてない事もある。
「昔、お姫様が満月の夜に現れて、多大な富を齎したという話があります」
キールが横に来て月を仰ぎ見、そんな話を始めた。
「これには諸説あって、元々こちらのお姫様が異世界に行ってお宝を持って帰ったとか。お宝を持って来たのはお姫様を追って来た王子様だとか」
「かぐや姫みたい。でもあれって宝は手に入ってないよな」
『竹取物語』を逆にすればそんな感じになるけど。王子様が追っかけてったという部分もなかった筈。
そしてキールは、思わせぶりに月から俺に視線を落とした。
「貴方が現れたのも満月でした」
「俺、お宝持ってない」
「貴方自身が宝という事もある」
やっぱり何か居た堪れない。
強弱はあるが魔力なんて誰にでもあるとかいうけど実感ないし、東洋人の姿形が珍しい位しか、俺に特別感はない。
「これね、お伽話ではないんです」
え?
キールはとんでもない話を始めた。
「二百年程前に実際にあった話として公式文書に残されてるんです。
話は公開されてなくて、私も見た事はありません。ただ」
と、彼の話は続く。
「その時の衣裳は遺されていて、一般には公開されていませんが。特別に観る事が許される事もあります」
俺の目は今きっと満月みたいにまん丸だ。息もちゃんと出来てない気がする。
「観たの?」
キールはふんわりと微笑った。
「十二単衣ではありませんでした」
絵本や挿し絵では十二単衣が定番だが、話の書かれた年代としては奈良時代かそれより前だと、俺も聞いた事がある。
キールは頷く。
そう言えば、池の周りに竹があった気が。竹なんて何処にでもあるから気にしなかったけど、こんな話を聞かされたら特別な意味があるのかと疑ってしまう。
「そうなると千何百年と経ってる筈ですが、こちらでは二百年前程度の話です」
「五つの宝物だっけ」
「西洋的には、フィフス・エレメンツですかね」
「異世界でも俺たちが元居た世界でも似たような話が出来上がるって事? 西洋も東洋も問わず。勝手に?」
話がデカくなって来たぞ。
「事実だとしたらどうですか?」
「う~ん。俺はあんまり興味ないかな」
本当にあるんだとしたら面白いけど。
「リョウは求めるものが判ってるんですね」
「お宝で欲しいものが手に入るんなら別だけど」
「まぁ、普通はそうですね」
俺にとっての問題は、千何百年が二百年という事だ。
時の流れ方が違うって事?
こっちで二百年が、向こうで千何百年?
でも、かぐや姫の話がもっと前だったら?
え? だったらキールの年齢とかもおかしくない? 俺の勘違いか?
『竹取物語』の確かな年代って判ってないと聞いたことが。こういうのヒヨリが得意なんだけどな。俺のここいら辺の知識は全部ヒヨリのだ。
俺の願い事はそこなんだけど。
ケンカ別れしたまんまの幼馴染の顔が浮かぶ。
7倍から8倍? 下手をしたらもっと?
かぐや姫じゃなくて、浦島太郎じゃん。
向こうの妖精の森にもあったじゃん。浦島太郎話あったじゃん。
嫌~だぁ、もう!
0
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。
これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。
無自覚両片想いの勇者×親友。
読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない
波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。
異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。
強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。
彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。
しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。
「俺に触れられるのは、お前だけだ」
呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。
となります。
勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される
八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。
蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。
リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。
ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい……
スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)
追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜
たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる