星降る真夏の夜に、妖精の森で迷子になる。

折原ミフク

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遊びをせんとや生まれけむ

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 両手で雪を掬い取り、意識を集中させる。
 くっついたり溶けかかったりしている雪が、空から新しく落ちて来るお仲間と混じり合って渦を描き、再び宙に浮く。

「え? 乳兄弟なの?」
 公爵家御令息と王太子殿下はリロイの母上がグエンの乳母に採用されてからの付き合いなんだって。空気を読んで母上の事は訊かない事にする。こういうのは相手が話すまでこっちから話を振らない方が良いよね? 多分。
「影武者とかやんないの?」
 グエンとリロイは背格好も似てる。
「やるやる。こいつを置き去りにしてお忍びで城下に繰り出すのだ」
 王太子殿下、大丈夫か。
 訊いてみたら、王太子という地位はグエンのお兄ちゃんである現国王の、息子であるところのグエンの甥っ子くんが育つまでの繋ぎらしい。

 アホのフリして身の安全を図ってるのだとか。下手に担ぎ出されても煩わしいので。
 骨肉の争いって、想像するだけでしんどいもんね。
 繋ぎというのは周知の事実だが、変な欲をかく人間もいる訳で、こんなの担ぎ出してもしょうがないですよ、という牽制。本人の主張だが。

「アホ? フリ?」
 自分でいうのもなぁ。
「何だ? 何か文句でも」

 遠くに森が視界に入る。意識を他に持って行っても、魔法はまだ俺の手の中で続いていた。

 俺はわざとらしく話題を変えた。
「馬とか居んの?」
 厩舎らしきものは見えない。
「え?」
「泉まで遠いんでしょ」
 元の世界では、小さい森に小さい池で、森に入って池まで5分程度だったが。
 こちらの森は大きくてちょうど真ん中にある泉まで凄くかかりそうだ。ちょうど真ん中というのは同じだが。泉も大きかったな。死に掛けでも覚えている。リロイが泳いで運んでくれた岸までは結構距離あった。元の世界の池は小さい上に名前なんて付いてなかったが、こちらの妖精の森の泉にはあって「女神の泉」というんだそうだ。
 ……別の、お伽話もう出て来ないよな。
 
「それはまだ早い」
「?」

 乗馬とかも出来るのならしてみたい。
 何かやる事いっぱい出て来たな。

「他に人はいないの? 馬丁? って言うんだっけ?」

 何か歯切れ悪い。
 ぐるりと見回しても公爵家の邸以外に人工物はない。裏にあるんだろうか。見回した後で三人と順に眼を合わせる。
「車とかあるのか?」
「くるま?」
「車輪の事ですか?」
 質問に質問で返された。

「クライヴ以外に、使用人は居ない」
 リロイが言う。
 執事さんだよね。給仕してくれる。
 確かに、彼以外誰にも会わない。勿論、この三人を除いてだけど。
「え? ご飯とかは? 料理人も居ないのか?」
「私も手伝いますが、基本彼が作っています」
 お茶の用意は、キールがいつもしてくれるんだよな。
「大変じゃん。二人は何してんの」
「男子厨房に入るべからず」
 得意気に言う王太子殿下に、
「モテないっしょ」
とツッコミを入れると、公爵家御令息も苦虫を潰した様な顔になる。今日から俺も出来るだけ家の事を手伝う様にしようと決めた。
「俺、得意じゃないけど、一通り出来るよ」
 親に放任されて育ったからな。
 恩返しじゃないが、出来る事が増えるのは嬉しい。
「それは頼もしいですね」
 キールが喜んでくれるのは更に嬉しい。
「だけど何で、こんなに誰もいないんだ?」
 何かあるのか。
「女はこの家に好かれないんだ」

 彼らは自らこの家に纏わる悲しい話をしてくれた。

 
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