星降る真夏の夜に、妖精の森で迷子になる。

折原ミフク

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遊び? 修行ですよ?!

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 翌日の朝は晴れていた。しかし太陽が出ているのに雪が細かく降っている。

 公爵家別邸の前庭は広大である。その大きさは学校の校庭の大きさで測るより、何処ぞの球場の大きさで測った方が早いだろうという位、広大である。本邸の次に大きいのだという。
大きい方だから、これ位大きくてもいいとか。??? それもしかして何か謙遜して言ってるんだろうか。自慢じゃなく? 謙遜の仕方間違えてんな。
 庭の向こうには、妖精の森が広がっている。元の世界、俺の近所の妖精の森とは比べものにもならない位こちらも大きい。前庭以上に広大で。慣れた人間でも迷うので不用意には入るなと言われた。
「狼も居るからな」
 リロイから新たな情報。
 ……俺よく生きてんな。
 両手にぎにぎしてしまう。

 くよくよしててもしょうがないので、俺は前向きに自分に出来る事をしていく事にした。くよくよが長続きしない性質というのもあるが、昨夜キールが手を握って添い寝してくれてたというのもある(添い寝だけである。16なんだけど、やっぱり俺はまだガキんちょだ)。彼が手から癒しを流しててくれたお陰でだいぶ持ち直した。

 それに俺には秘策がある。

 かぐや姫(多分)のお宝だ。

 本当にあるかどうかは分からないが、全部ひっくり返せる様な、起死回生の一発逆転は今の所これしか思い付かない。

 そしてそれへの最短距離の伝手もある。王太子殿下という途轍もなく大きなコネクションだ。

 で、出来る事。
 魔力はあるらしいが未知数で、コントロールの仕方も知らないと何の役にも立たないので、今日から魔法の訓練。

 修行の時間だ。

 折角の、魔法!
 魔法ですよ!! 皆さん!!

 悩んでてもしょうがない。
 やれること取り敢えず、やる!

 妖精の森を向こうに見ながら、キールのレクチャーを受ける。
 キールは令息ではなく現役の男爵である。元は平民なのだが、魔力の強さが半端ない上その癒し効果も見逃せない為、貴族に取り立てられた。その能力を取り込みたかったんだろう。そんな事無くてもこの容姿は手元に置いて眺めたいの分かる。魔力の強さなんて後付けで、案外こっちが目当てかも。納得の神秘的な美しさなのだ。
 俺もヒヨリを知らなかったら平常心保てないと思う。
 美貌のバロンは雪景色でいつも以上にキラキラだ。
 雪は降ってるのだが小降りで、太陽も出ていているので、目に入るもの全て輝いて見える。
 彼は教師としても優れているらしい。あの声で教授されたら生徒は大人しく何でも言う事聞く、というのはよく分かる。

 強力な伝手。コネ。
 おチャラけ王太子殿下。
 宝があるとしたら宝物庫かなんかにあるのだろうか。一番近いのは有り難いんだが、俺が最初にしたのは真後ろから抱きついて来た殿下を引き剥がす事である。
「この方がやり易いのに」
 確かに風の力の動きが、殿下から流れて来るのが解る。俺も風属性なので殿下にサポートして貰うのが良い、のは分かるんだけど。
 けど、この人絶対距離感おかしい。パーソナルスペースというものご存知ではないんだろうか。
 離れてても分かりますよ?

 キールが左に付く。
「大事なのはイメージです」
 彼の声が心地よい。冬の澄み切った空気が更に浄化される。

 イメージね。イメージ。

 グエンは右。
「雪を動かす事からやってみるか。
 完全に止めるより、雪を吹き流す方がやり易い。降って来るのと違う方向で。真逆でなくても構わない」
 グエンから波動を感じる。治癒の時と違って力強い。
 ひらひらと舞ってた雪が、上から下ではなく横に流れ出す。
 グエンを中心にして放射状に、キラキラの雪がひらひらと広がって行く。

 イメージ。

 俺を中心に、降って来る雪をーー。
 ふわっと、煽ぐカンジ?

 雪が物理を無視して、水に石を落とした様な波紋を描く。

「いいぞ」
 グエンの抑えた声がする。

 降って来る雪を横に流すコツを掴んで慣れて来て、次は上に吹き上げる。勢いを増して、噴水みたいにしてみる。

 しゅわ~~、っとね。

 楽しい!

「上手いじゃないか」
「飲み込み早いですね」
 
 こんな感じで飛べるのかな?

 雪を動かすイメージから、自分の浮き上がるのを想像してしまった。
 そうしたら勝手に体が浮かび上がって、2メートル位?!
 びっくりして思わずイメージを手放してしまう。
 今度は当然の事ながら急降下。
 すかさずリロイが抱き止めてくれて痛い所はないが、二人して雪の地面に倒れ込み暫く胸がドキドキして動けない。
 降り積もった雪が、俺とリロイの形になる。
「調子に乗るな」
 エラそうなのは腹が立つのだが、さすがに文句言えない。
 俺この人に何回救けられるんだろう。
 早く自立したい。


 
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