星降る真夏の夜に、妖精の森で迷子になる。

折原ミフク

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銀のスプーン

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 手伝うと決めたので、頭痛のしない時に料理の下拵えや食事の配膳。お茶を淹れたもする。
 元の世界では放任して育てられたので苦手意識はない。クライヴさんやキールほど上手くは出来ないけれど。

「ついでに魔法の練習してみるか」
 王子様の悪魔の囁きに乗っかって、スプーンに意識を集中する。
 途端にスプーンは勢いよく飛んで、グエンの右のこめかみを掠め後ろの壁にぶち当たって落ちた。
「力加減が難しいので、危なくない物から試した方が良いですね」
 キールの適切な指導が入る。彼が配膳に気を取られている内にちょっかいかけて来たらしい。しょうがねえ王子様だな。
 笑いながらスプーンを拾うグエンに文句を言う。
 「小っちえぇ因果応報だな。フォークでやりゃ良かった。
 暇だったら手伝え」
「えー」
 高そうな陶器で試さなくて良かった、と思っとこう。

「三人は何で居んのよ?
 予言以外に何かあんの?」
 さっきの話を聞いたら、予言は一つの理由でしかないと思えて来る。
 おばあちゃんが行方不明になったのはリロイが生まれる随分前だから、そんなに思い入れないと思うんだけど。
 母上の方は、ここ離れたら憑き物が落ちて、酷い事した人たちに十二分に謝罪(金銭を含め)した後は、公爵夫人として優雅に華やかに社交界を泳ぎ回ってるそうだし。

「結婚結婚結婚結婚ウルサイわ!!!」
 王子様がいきなり拾ったスプーンを握りしめて激昂した。銀のスプーンは彼の手の中でぐにゃりと使い物にならない形に潰れる。
 握力か、魔法か。
 高いだろうに。元に戻るのかな。
「ああ、成る程。ここなら女は寄り付かないからか」
 特に今現在、身籠もったり小さな子供が居なけりゃ大丈夫だと聞いたが、好んで近寄る女もいないか。
「そういう事だ」
 王子様と同い年のリロイが、憮然として答える。
「結婚して欲しかったらマトモな女連れて来い!」
 今度は折角整えたカトラリーがカタカタし始める。
 彼らの地位とルックスでは自己顕示欲の強い女しか寄って来ないだろうと想像が着く。大人しい可愛らしいのは遠慮しちゃうんだろうな。自己顕示欲の強いのがマトモでないとは言わないが、大人しい可愛らしいのが良かったら、そういうのは嫌だろう。
「お前はあちこち男も女も手を出し過ぎてマトモな女来なくなっただけだろう」
「あ、何だその、人の事軽い呼ばわりして自分はマジメですよアピール」
 無視します。
「キールは?
 緊急避難しなくても良いんじゃないの?」
 二人の三コ下だと聞いた、という言葉を飲み込み。
「私たち二人の傍に居ないと、こいつはとても厄介な事になります」
 穏やかな表情を取り戻して、グエンが夕食の席に着く。
「美しい人って大変だね」
 グエンとリロイは、キールにありとあらゆる所からやって来る秋波を防ぐのに、とても良い地位とルックスを持っている。

 この面子なら、一緒に食事を摂っても良いんじゃないの、とクライヴさんを誘ったが固辞されて。キールは元平民だし、俺なんか生粋のど平民だ。給仕だけでいいと思う。今更ながら申し訳なくなって来た。

 俺がまたグエンに唆されて魔法を試そうとするのでリロイに怒られキールに嗜められたりしたが、その日の夕食は悲しい話はあったがとても穏やかに終わった。

 筈だった。
 寝る直前に再び激しい頭痛が襲って来て、気を失う様に眠りに就くまでは。
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