9 / 72
銀のスプーン
しおりを挟む
手伝うと決めたので、頭痛のしない時に料理の下拵えや食事の配膳。お茶を淹れたもする。
元の世界では放任して育てられたので苦手意識はない。クライヴさんやキールほど上手くは出来ないけれど。
「ついでに魔法の練習してみるか」
王子様の悪魔の囁きに乗っかって、スプーンに意識を集中する。
途端にスプーンは勢いよく飛んで、グエンの右のこめかみを掠め後ろの壁にぶち当たって落ちた。
「力加減が難しいので、危なくない物から試した方が良いですね」
キールの適切な指導が入る。彼が配膳に気を取られている内にちょっかいかけて来たらしい。しょうがねえ王子様だな。
笑いながらスプーンを拾うグエンに文句を言う。
「小っちえぇ因果応報だな。フォークでやりゃ良かった。
暇だったら手伝え」
「えー」
高そうな陶器で試さなくて良かった、と思っとこう。
「三人は何で居んのよ?
予言以外に何かあんの?」
さっきの話を聞いたら、予言は一つの理由でしかないと思えて来る。
おばあちゃんが行方不明になったのはリロイが生まれる随分前だから、そんなに思い入れないと思うんだけど。
母上の方は、ここ離れたら憑き物が落ちて、酷い事した人たちに十二分に謝罪(金銭を含め)した後は、公爵夫人として優雅に華やかに社交界を泳ぎ回ってるそうだし。
「結婚結婚結婚結婚ウルサイわ!!!」
王子様がいきなり拾ったスプーンを握りしめて激昂した。銀のスプーンは彼の手の中でぐにゃりと使い物にならない形に潰れる。
握力か、魔法か。
高いだろうに。元に戻るのかな。
「ああ、成る程。ここなら女は寄り付かないからか」
特に今現在、身籠もったり小さな子供が居なけりゃ大丈夫だと聞いたが、好んで近寄る女もいないか。
「そういう事だ」
王子様と同い年のリロイが、憮然として答える。
「結婚して欲しかったらマトモな女連れて来い!」
今度は折角整えたカトラリーがカタカタし始める。
彼らの地位とルックスでは自己顕示欲の強い女しか寄って来ないだろうと想像が着く。大人しい可愛らしいのは遠慮しちゃうんだろうな。自己顕示欲の強いのがマトモでないとは言わないが、大人しい可愛らしいのが良かったら、そういうのは嫌だろう。
「お前はあちこち男も女も手を出し過ぎてマトモな女来なくなっただけだろう」
「あ、何だその、人の事軽い呼ばわりして自分はマジメですよアピール」
無視します。
「キールは?
緊急避難しなくても良いんじゃないの?」
二人の三コ下だと聞いた、という言葉を飲み込み。
「私たち二人の傍に居ないと、こいつはとても厄介な事になります」
穏やかな表情を取り戻して、グエンが夕食の席に着く。
「美しい人って大変だね」
グエンとリロイは、キールにありとあらゆる所からやって来る秋波を防ぐのに、とても良い地位とルックスを持っている。
この面子なら、一緒に食事を摂っても良いんじゃないの、とクライヴさんを誘ったが固辞されて。キールは元平民だし、俺なんか生粋のど平民だ。給仕だけでいいと思う。今更ながら申し訳なくなって来た。
俺がまたグエンに唆されて魔法を試そうとするのでリロイに怒られキールに嗜められたりしたが、その日の夕食は悲しい話はあったがとても穏やかに終わった。
筈だった。
寝る直前に再び激しい頭痛が襲って来て、気を失う様に眠りに就くまでは。
元の世界では放任して育てられたので苦手意識はない。クライヴさんやキールほど上手くは出来ないけれど。
「ついでに魔法の練習してみるか」
王子様の悪魔の囁きに乗っかって、スプーンに意識を集中する。
途端にスプーンは勢いよく飛んで、グエンの右のこめかみを掠め後ろの壁にぶち当たって落ちた。
「力加減が難しいので、危なくない物から試した方が良いですね」
キールの適切な指導が入る。彼が配膳に気を取られている内にちょっかいかけて来たらしい。しょうがねえ王子様だな。
笑いながらスプーンを拾うグエンに文句を言う。
「小っちえぇ因果応報だな。フォークでやりゃ良かった。
暇だったら手伝え」
「えー」
高そうな陶器で試さなくて良かった、と思っとこう。
「三人は何で居んのよ?
予言以外に何かあんの?」
さっきの話を聞いたら、予言は一つの理由でしかないと思えて来る。
おばあちゃんが行方不明になったのはリロイが生まれる随分前だから、そんなに思い入れないと思うんだけど。
母上の方は、ここ離れたら憑き物が落ちて、酷い事した人たちに十二分に謝罪(金銭を含め)した後は、公爵夫人として優雅に華やかに社交界を泳ぎ回ってるそうだし。
「結婚結婚結婚結婚ウルサイわ!!!」
王子様がいきなり拾ったスプーンを握りしめて激昂した。銀のスプーンは彼の手の中でぐにゃりと使い物にならない形に潰れる。
握力か、魔法か。
高いだろうに。元に戻るのかな。
「ああ、成る程。ここなら女は寄り付かないからか」
特に今現在、身籠もったり小さな子供が居なけりゃ大丈夫だと聞いたが、好んで近寄る女もいないか。
「そういう事だ」
王子様と同い年のリロイが、憮然として答える。
「結婚して欲しかったらマトモな女連れて来い!」
今度は折角整えたカトラリーがカタカタし始める。
彼らの地位とルックスでは自己顕示欲の強い女しか寄って来ないだろうと想像が着く。大人しい可愛らしいのは遠慮しちゃうんだろうな。自己顕示欲の強いのがマトモでないとは言わないが、大人しい可愛らしいのが良かったら、そういうのは嫌だろう。
「お前はあちこち男も女も手を出し過ぎてマトモな女来なくなっただけだろう」
「あ、何だその、人の事軽い呼ばわりして自分はマジメですよアピール」
無視します。
「キールは?
緊急避難しなくても良いんじゃないの?」
二人の三コ下だと聞いた、という言葉を飲み込み。
「私たち二人の傍に居ないと、こいつはとても厄介な事になります」
穏やかな表情を取り戻して、グエンが夕食の席に着く。
「美しい人って大変だね」
グエンとリロイは、キールにありとあらゆる所からやって来る秋波を防ぐのに、とても良い地位とルックスを持っている。
この面子なら、一緒に食事を摂っても良いんじゃないの、とクライヴさんを誘ったが固辞されて。キールは元平民だし、俺なんか生粋のど平民だ。給仕だけでいいと思う。今更ながら申し訳なくなって来た。
俺がまたグエンに唆されて魔法を試そうとするのでリロイに怒られキールに嗜められたりしたが、その日の夕食は悲しい話はあったがとても穏やかに終わった。
筈だった。
寝る直前に再び激しい頭痛が襲って来て、気を失う様に眠りに就くまでは。
0
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。
これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。
無自覚両片想いの勇者×親友。
読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない
波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。
異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。
強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。
彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。
しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。
「俺に触れられるのは、お前だけだ」
呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。
となります。
勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される
八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。
蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。
リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。
ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい……
スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)
追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜
たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる