星降る真夏の夜に、妖精の森で迷子になる。

折原ミフク

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シナモンとナッツ

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「毒は入れておりませんよ」
 俺たちに待てをして先にリロイが食事に手を付ける。昨夜のヒヨリとライトと一緒だった夜食はキールの用意してくれたものだったし、今朝の朝食は、「一宿一飯の恩義」とヒヨリも手伝ってる。ご想像の通りヒヨリは料理のスペックが高い。俺は何とか食べられる程度なら作れるが、美味しいのかと聞かれたら自信は無いので下拵えのみ手伝う。

 俺は正直、そんな事思いつかなかったよー。

 クライヴさんが食事に毒を仕込む可能性である。衆目のうちだから大丈夫だと思うけど、隠れてって事を危惧してなんだろうか。
 リロイは雇主の責任で毒味役なんだろうが様子に変わったところはなかったので、王太子殿下も食事を始めたのを機に、俺たちも折角の美味しそうなのが冷めない内に頂く。
「殺すつもりだったらもうとっくに殺してるんじゃないの?」
「俺たちを排して失敗したら次がなくなるだろう」
 そっか、ばれなかったらまた今度。というのもありだったのか。今回バレちゃったけど。
 だから用心してるのか。
 俺はクライヴさんに怒ってないし、だったら自分たちで用意すればと、理不尽を感じてしまう。
 まあ、基本信頼してるから任せてるんだろうが。保険というか、体裁を調えたって事なんだろう。

 平和ボケの子供には世知辛過ぎる。

 美味しい。
 このチーズ入りオムレツもサラダもヨーグルトも何もかも。こっち来てから、食べるものが不味いと思った事がない。
 異世界のお陰か。
 お貴族様の食べられるものだからか。
 クライヴさんが特別料理が美味いんだろうか。
 だから余計なんか疑うのが申し訳なく思ってしまう。

「パンやケーキにナッツとかシナモンとか入ってるよね。小麦粉自体も凄く美味しいし。昔からなのかな。こういうのって僕たちのも世界からもたらされるイメージがあるんだけど」
 ヒヨリが言う。
「?」
「ここって近代のヨーロッパのイメージじゃない? でも味の細やかさとかさ複雑さが現代日本なんだよね」
「昔からこんな感じだと思うが」
 律儀に答えるリロイに、
「魔法陣とかさ、呪文渡した人間って分かってるの?」
 確かそんな事言ってた。
「偉い人?」
 何か分かってて手を出し辛いって言ってなかったっけ?
「偉いと言えば偉い……」
 グエンもうんざりした様な顔をしてる。
「それは追々にしませんか? 折角の食事が消化不良を起こしそうです」

 毒は入ってないのに、毒を含んだみたい。

 朝食は俺たちに気不味い余韻を残して終えた。
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