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雨、そして虹。*
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*最後に残酷表現があります。お気をつけ下さい。
~・~・~・~
「出来レースというか、予定調和というか」
ジュジュの言いたい事は分かる。向こうが悪いとはいえ圧倒的にこっちに分があるので弱いものイジメしてる気分になる。
俺たちの索敵は用心の様なものだった。
とはいえ、油断は禁物。
リストに漏れがあるかも知れない。
一つ始まると、二つ三つ次々と爆発は起こった。爆発音は大きいのに騒ぎには全くならず、それはそれで不気味だ。
警察やら政府、お偉いさんたちが心配していたのは、爆発に伴う類焼だ。ただこれも、キールやヒヨリの様な、水属性の人たちが気を凝らして食い止めていた。風属性の人も炎が広がらないよう、風の流れを調節する。
しかし。
「拙いかも」
キールが忌々しげに呟く。心なしか青褪めている。もともと元気溌剌なカンジではなく、美し過ぎるせいか儚げなのだが。この頃とみに憂いを深くしてる気がする。プライベートでも何か心配事あるのかも知れないと思って訊きたいのだが、こんな状況なのでなかなか時間を割けない。
大丈夫。
ドームに目をやると皆んな居る。
ライトもヒヨリもキールも、リロイもちゃんと居る。グエンやお爺ちゃんはここには居ないが別の所に居る。場所は分かっている。だから大丈夫。
自分に言い聞かせても不安が拭えない。
何かに気付かなくちゃいけない気がするのにその正体が分からない。
街の人々はほぼ安全な所に居る。というかこちらが警戒してたせいで人のいる所にはダイナマイトは仕掛けられておらず、最初に爆発のあった河の側の廃倉庫のようなところばかりにあるのだが、火を食い止めるのにも限界がある。
ダイナマイトを全部お買い上げになっただけのことはあって、次々と爆発は起こり、その爆発も遠くから順々というわけではなく、遠くで起こったと思ったらすぐ近くで爆発する。実際にはそんな近くではないのだけど、揺さぶられるカンジがして不安を煽られる。
そして再びの、しかし。
「天もこちらの味方ですね」
青い空はいつの間にか厚い雲に覆われポツリポツリと水滴を落とし始めた。
雨は次第に勢いを増し、煙も火も溶かしていく。ここまで届き始めていたきな臭い臭いも澄んだ雨の匂いに変わっていく。
ずぶ濡れになる前に俺もライトも中に入るが、意識を外にを向けたままだ。
騒動は無かったとはいえ、騒めきはあったようで。雨のおかげでそれは収まって行った。雨で静かになった為に今までザワザワしてたんだなと分かったのだが。
その時。
「あ……」
嫌な波動が来た。
「リョウ、どうしたの?」
ヒヨリが訊く。リロイも眉を顰めてこちらを見てる。本当に心配性で、眉顰めるのが多い男だ。
後で聞いた。それは最後の爆発で。その爆発で変なものが来た。
爆発が雨で燻って中に籠るような感じで、力が押さえつけられて発散されずにモヤモヤしたのもあるが、それとは別に。
今まで感じた事のない様な気持ち悪い感覚だ。
魔法を使うという事はこういう事か。
良い面ばかりではない。
ジュジュが答えをくれた。
「誰か死んだな」
彼女は何でこんな時にこんなに平然としていられるのだろう?
俺は意識しては転移魔法は使えないので、ジュジュに引き摺られるようにして、リロイ、キールとそこに移った。重いので全員ではなかった。無神経な彼女でも人選はした。ライトとヒヨリは置いてった。ライトもこれには文句は言わなかった。
完璧なんて存在しない。
何か零れ落ちてしまうものはあるのだ。
俺たちがそれを瓦礫の中に見つけた時、雨は止んでいた。
雨の降った後の青い空に大きく美しい虹がかかる。
「大昔にはね、虹は不吉な怪現象だと言われてた事もあるんだよ」
後で悲しげにヒヨリが言った。
今日の虹は確かに縁起が良いものではないように思えた。
彼女が寝転がっている。
息がないのは一目瞭然だった。
半身が黒焦げだ。ドレスもその身も。
ついこの間まで貴族としてこの国の社交界を友人たちと優雅に泳いでいたリズベスト伯爵夫人の、成れの果てがそこにあった。
~・~・~・~
「出来レースというか、予定調和というか」
ジュジュの言いたい事は分かる。向こうが悪いとはいえ圧倒的にこっちに分があるので弱いものイジメしてる気分になる。
俺たちの索敵は用心の様なものだった。
とはいえ、油断は禁物。
リストに漏れがあるかも知れない。
一つ始まると、二つ三つ次々と爆発は起こった。爆発音は大きいのに騒ぎには全くならず、それはそれで不気味だ。
警察やら政府、お偉いさんたちが心配していたのは、爆発に伴う類焼だ。ただこれも、キールやヒヨリの様な、水属性の人たちが気を凝らして食い止めていた。風属性の人も炎が広がらないよう、風の流れを調節する。
しかし。
「拙いかも」
キールが忌々しげに呟く。心なしか青褪めている。もともと元気溌剌なカンジではなく、美し過ぎるせいか儚げなのだが。この頃とみに憂いを深くしてる気がする。プライベートでも何か心配事あるのかも知れないと思って訊きたいのだが、こんな状況なのでなかなか時間を割けない。
大丈夫。
ドームに目をやると皆んな居る。
ライトもヒヨリもキールも、リロイもちゃんと居る。グエンやお爺ちゃんはここには居ないが別の所に居る。場所は分かっている。だから大丈夫。
自分に言い聞かせても不安が拭えない。
何かに気付かなくちゃいけない気がするのにその正体が分からない。
街の人々はほぼ安全な所に居る。というかこちらが警戒してたせいで人のいる所にはダイナマイトは仕掛けられておらず、最初に爆発のあった河の側の廃倉庫のようなところばかりにあるのだが、火を食い止めるのにも限界がある。
ダイナマイトを全部お買い上げになっただけのことはあって、次々と爆発は起こり、その爆発も遠くから順々というわけではなく、遠くで起こったと思ったらすぐ近くで爆発する。実際にはそんな近くではないのだけど、揺さぶられるカンジがして不安を煽られる。
そして再びの、しかし。
「天もこちらの味方ですね」
青い空はいつの間にか厚い雲に覆われポツリポツリと水滴を落とし始めた。
雨は次第に勢いを増し、煙も火も溶かしていく。ここまで届き始めていたきな臭い臭いも澄んだ雨の匂いに変わっていく。
ずぶ濡れになる前に俺もライトも中に入るが、意識を外にを向けたままだ。
騒動は無かったとはいえ、騒めきはあったようで。雨のおかげでそれは収まって行った。雨で静かになった為に今までザワザワしてたんだなと分かったのだが。
その時。
「あ……」
嫌な波動が来た。
「リョウ、どうしたの?」
ヒヨリが訊く。リロイも眉を顰めてこちらを見てる。本当に心配性で、眉顰めるのが多い男だ。
後で聞いた。それは最後の爆発で。その爆発で変なものが来た。
爆発が雨で燻って中に籠るような感じで、力が押さえつけられて発散されずにモヤモヤしたのもあるが、それとは別に。
今まで感じた事のない様な気持ち悪い感覚だ。
魔法を使うという事はこういう事か。
良い面ばかりではない。
ジュジュが答えをくれた。
「誰か死んだな」
彼女は何でこんな時にこんなに平然としていられるのだろう?
俺は意識しては転移魔法は使えないので、ジュジュに引き摺られるようにして、リロイ、キールとそこに移った。重いので全員ではなかった。無神経な彼女でも人選はした。ライトとヒヨリは置いてった。ライトもこれには文句は言わなかった。
完璧なんて存在しない。
何か零れ落ちてしまうものはあるのだ。
俺たちがそれを瓦礫の中に見つけた時、雨は止んでいた。
雨の降った後の青い空に大きく美しい虹がかかる。
「大昔にはね、虹は不吉な怪現象だと言われてた事もあるんだよ」
後で悲しげにヒヨリが言った。
今日の虹は確かに縁起が良いものではないように思えた。
彼女が寝転がっている。
息がないのは一目瞭然だった。
半身が黒焦げだ。ドレスもその身も。
ついこの間まで貴族としてこの国の社交界を友人たちと優雅に泳いでいたリズベスト伯爵夫人の、成れの果てがそこにあった。
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