星降る真夏の夜に、妖精の森で迷子になる。

折原ミフク

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レッドヘリング

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 傷一つ負わない。
「やはり罠でしたか」
 片眉を吊り上げて。
 たった独りで立っている。
 太々しい、余裕綽々。
 味方はもう誰一人いない、罠に掛かって後などないのに、彼は一番落ち着いて見えた。
 一方、罠に嵌めた筈の俺たちは余裕などなく。
 彼が強い魔力の持ち主とはいえ、同じかそれ以上、最高峰に位置する魔法使いがこちらには勢揃いしているのにだ。
 なのに何だろう?
 この焦燥感は。

 誘き寄せ囲い込んでそこを捕らえる。
 簡単だ。
 計画では陽動作戦に引っ掛かったと見せて、こちらが誘い込むという手筈だった。それは当たってて間違ってはいないんだ。ただ誘い込まれていると向こうが気付いてなければ。

 手品で言うニシンの燻製。
 囮。
 囮に引っ掛かたと見せて、俺たちを引っ掛けてた。
 彼は、彼だけは彼自身の欲するものを見誤らなかった。
 ただそれだけの事なんだろう。


 異変に気付いたのは、ゾフィーだったかジュジュだったか。

「しまった」
 え?
「全て無効化されてる」

 俺たちと彼ーージョバンニ=カスティーリャとの間には、幾重にも人垣が出来ている。全て彼を捕える為だけに整えられた、この国でも最高峰の魔法の使い手たち。
 キールもいるし、ゾフィーもお爺ちゃん達もジュジュも居る。この国どころか、この世界でも有数だ。
 なのにこの焦燥感。何か間違っている。それはすぐ分かった。彼を捕えようとするのに屈服させようとするのに、一向に魔法が効かないのだ。王家に仕える魔法使いも、警察の手練れでさえ。皆青褪めて余裕を失くしていくのが分かった。その反面、彼は余裕で立っている。
 選りすぐりの使い手たちが攻撃を仕掛けるのだが、彼に届く事なく全て無効化されている。それと同時に彼の魔法だけ使える様になっていた。


 そして彼は不敵に笑った。
「そろそろ分かってもらっても良いでしょう?
 そうでないとこちらの話が進められないので」 
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