星降る真夏の夜に、妖精の森で迷子になる。

連理の枝

　？

　レンリノエダ？


「連理の枝？」
　ヒヨリが呟く。
　拙いと思った瞬間、ヒヨリもジョバンニ=カスティーリャの腕の中に居た。
「君は知ってるんだね。やはり話が通じる方が付き合うのには良いかな」
　俺と共にヒヨリを抱き締める。

　ジョバンニ=カスティーリャに絡め取られる。
　嫌だ！
　何で？！
　驚いたライトが走って来て喰らい付こうとしたところ同じ様にジョバンニ=カスティーリャの腕の中に収まってしまった。

　ええ～？
　どうして？

　俺たち三人を雁字搦めにして男は楽しそうに笑う。
「何も一人に決める事はないよね？　今気付いたよ。私も存外真面目だな」
　その真面目貫き通せよ。
「離せ！」
　そんで何で動けない？！
　俺だけじゃなく、俺たち非力過ぎない？
　これが終わったら魔法だけじゃなく、体力増強も計らないと。
　ああそうだよ！　その為に絶対無事終わらせる！！　勝算ないけど！！！

「連理の枝なんてそんなもん何処にあるんだよ！」
　ライトが叫ぶ。
　そうだよ、大体。
「かぐや姫の宝だって、見たカンジないじゃん！」
　俺も負けじと叫ぶ。
　古代のお姫さまの着物にしか見えん。

「見た所ね。でも」
　ふふ、とジョバンニ=カスティーリャはまた笑う。
「蓬莱山の玉の枝なんて女性の簪に好さそうだ。龍の珠もそれが鱗なら。ほら、あの首飾り、貝のようにも見えるけど、鱗に見えない？　ああ、燕の子安貝というのもあったね。あの腕輪ーーバングルもそれっぽくないか？　他はどうだろう？　毛皮のようなものは纏ってないかな。ほら、足元の台座随分大きくないかい？　お釈迦様の石の鉢ってそんなに大きかったのかなぁ、ね？」
　言われてみればそんな気もするか、とか言ってる場合じゃない。かぐや姫の宝は何にもしてくれないんだろうか？
　ていうか、どうやって使うんだろう？　持ってるだけで良いもんかね？　何か儀式見たいのとか要るんだろうか？
「まあ、私の欲しいのはかぐや姫の宝ではないんだけれど」
　違うんかいって。ああ、そう言ってた。
　連理の枝か。
　連理の枝？
　連理の枝って何？
　何だっけ？
　なんか昔ヒヨリに聞いた気がする。

「公爵家の温室の中心に大きな木があるそうだね」
　え？
「あの木？」
　温室の魚たちはそれを軸にして泳ぐんだ。それが何だ。
「招待してもらいたかったんだが、公爵家にまでは中々食い込めなくて。早く招待してくれれば、こんな事にならなかったのに」
　くすり、と。
「あれはお婆ちゃんの造ったのだから」
「あげられない？　まだよく理解できてないみたいだね。そんな人間の造ったものなんて興味はないよ。あれは、別邸にある木から分けたと聞いたよ」
「別邸？」
「ああ、君たちが現れた、妖精の森の、君と彼が赤いリボンでぐるぐる巻きにされてた泉のある、さ」
　余計だ。

　ジョバンニ=カスティーリャは話し続ける。
「木蓮があるらしいね。
　二つの仲良く寄り添う木蓮の木だよ」