星降る真夏の夜に、妖精の森で迷子になる。

折原ミフク

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地にありては

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「木蓮あったっけ?」
 とぼけてみたが俺はしっかり思い出していた。
 俺たちが転移した公爵家の別邸。妖精の森に隣接するかの屋敷の庭には白木蓮、烏木蓮。
 元居た俺たちの家にもそれはあった。ヒヨリの家には白木蓮。俺の家には烏木蓮。それはそれぞれの家の玄関先に寄り添う様にはあったけど、こちらの様にはくっ付いてはいなかった。
 翻ってこちらの二つの木蓮は向こうのものより大きくそしてくっ付いて居た。
 幹も枝も葉も多分根も絡まり合って大きくあって、俺たちは花が咲くのが楽しみだった。こちらは向こうより寒いので開花も遅いかも知れない。でもヒヨリが、
『陽当たりが良さそうだから案外早く咲くかも』
 というのに対し、ライトが、
『じゃあ、ヒヨリの誕生日頃に咲くかなぁ』
 と返してた。以前ならそれは俺が言う台詞だ。今ライトにそれを取られても悔しくはない。幼馴染みにそういう人ができて良かったって素直に思える。それは俺にもそう言う人ができたからだけど。

 思考は俺の首にかかる圧で遮られた。
「余裕だね」
 ジョバンニ=カスティーリャが苦々しげに耳元で囁く。
「思い出したかい?」
「連理の枝が、木蓮とは限んないだろ。ってか、いくら転生者でも詳し過ぎない?」
「この事ばっかり考えてたからね」
「大体、向こうの話がこっちに当てはまるのか?」
 言ってて虚しくなった。だって。
「かぐや姫の宝があるのに?」
 ええ、そうですね。すいません。

「連理の枝にはね、番の鳥が泊まって囀り合うんだ」

『木蓮の花って鳥に似てるから、鳥が泊まってるって言われたりするんだよ』
 ヒヨリが言ってた。

「その顔は知ってるかな、木蓮の花は鳥に例えられる。比翼の鳥というのもある」
「だからって、あそこの木蓮が連理の枝とは」
「限んない? でもあの木には言い伝えがある。あの木の下で愛を誓い合うと永遠に幸せになれるって。知らなかった? 今はもう妖精の森の悪い話にそんなロマンチックな話は隠れてしまってるけどね。
 だから前の公爵夫人もーー行方不明になってしまったそうだね、可哀想にーーあの木から株を分けたのさ」
 その時何処からか呻き声が聞こえた。お爺ちゃんかリロイだろう。皆、床に突っ伏して起き上がれなくなってる。
 もう一体どうすれば?!

「さてさて、それでだ」
 うふふ、とまた狂人の笑い。
「私、転移も出来るんだけど」
「その前にフツーに移動すれば良いじゃないか。王城に侵入するより簡単だろ?」
「それがそうでもなくてね。王家の、最終的には公爵家のなんだが、許可がないとあそこは入れないんだ。入ろうとしても強力な結界が張られていて無理だった。まあ、こっちの宝も興味あるし、彼にももう一度会っておきたかったし」
 彼とは多分ゾフィーの事。こちらの世界では女なのにね。ジョバンニ=カスティーリャ中では男なんだろう。
「それこそフツーに会いに行けよ」
「んー、それ言われるとね。でも時間が長くなってしまった。彼が居なくなってから随分色々あってね。なんかこっちの方が私には簡単でね。しっくり来るんだ」
 前世から約束してた恋人に去られたのは同情するけれどもさ。
 何もここまで。
 と思ってしまう俺はやっぱり恵まれているんだろう。
 
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